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転生竜人の少女は、安寧の夢を見る  作者: 椎名甘楚
二章.第一王女護衛依頼
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51.お人好し

――――アミさん、あなたには呪いが掛けられている




 アキトの言葉にイミアは少し眉を顰めるが、黙って話の続きを待つのみ。


 乾いた音を立てて燃える簡易竃の音だけがパオの中で空気を震わせ、一瞬の静寂が訪れる。


「僕のスキル《能力看破》には相手の能力と、そして状態異常を見る力があるんだ」


「状態異常……?」


 首を傾げるイミアを見て、アキトはしまった、という風に目を丸くする。


「あっ、えっと状態異常って言うのはその、風邪だったり毒とか麻痺とか、そういうのを言うんだけど……」


「それによると、私は呪いの状態異常だと?」


「まあ、そうなります……はい」


 だが、益々おかしいと言った風にイミアは頭を悩ます。呪いという概念自体は知っている、対象に対して何かしらの良くない影響を及ぼすものだと。


 一番有名なのは、邪竜ファヴニールが自身の持つ財宝に掛けた呪いだ。


 もし仮にファヴニール以外がその財宝を持ち出せば、その人物は呪いに苛まれどんどんと不幸の連鎖に陥り、最終的には死んでしまうという。呪いと言うのはそれほどまでに恐ろしく、掛かった本人は最もそれを体感する。


 しかし、イミアは自分が呪いに掛かっているという自覚すらない。

 自身に掛けられた呪いが一体何なのかも、見当がつかないのだ。


「……残念だけど、僕にはその呪いが何なのかまでは分からない」


 そんなイミアの疑問を察したアキトが目を伏せてそう言う。


 「ここまで言っておいて無責任な」とも思いはしたが、ここで彼にそれを言っても意味が無い事くらいは分かっていた。 


「ですが、何故今になってそれを私に言おうと思ったんですか?」


「それは……」


 イミアとアキトは一度渡りで顔を合わせているどころか、六か月近い日数を共に過ごしたのだ。呪いと言うのがこの一年の間に発症したものでなければ、去年にでも伝える機会は幾らでもあった筈。


「……言うか迷ってたのもあるし、どうにもならないのも分かってたから」


===========================


 イ縺0ッ110蜒・010111縺ェ?讌エ莉?0101

 種族:ケ繧ソ繝シ01?繝槭

Lv. :j1蠕0励

 STR:鴨縺ィ01繝

 DEF: 10励0Ξ1繝

 AGI: 險01€縺1・

 MAG:縲御ス墓

 状態異常:呪い


 称号:縲後$縺」

 

==========================


 アキトの目に映ったその文字列は、5年前に見たものとは最早比較にならないものだった。


 まるで8bitゲームのバグのような表記は、その世代でもないアキトであっても軽く恐怖を覚える。

 

 いままで沢山の人間のステータスを見て来たが、こんな文字化けをした人間は彼女以外に居なかっただろう。


「でも、どうしても聞きたかったんだ。君が、僕の命の恩人だから」


「私が――――」


 そう言ったアキトを見て、イミアは一瞬記憶を探るように顔を顰めたが、直後――――



「……ああっ!! あなた、まさかあの時のっ……!?」



 五年前とさして変わらないその顔立ちに心当たりを見つけ、叫んだ。

 他者との関わり以前に、ルフレ以外の人間に殆ど興味が無かったイミアは今の今まで忘れていた。


 むしろ、アキトの方こそ六か月も共に過ごしたと言うのに今更という気持ちだろう。それを察してイミアの顔がみるみる内に羞恥で真っ赤に染まる。

 

「す、すみません……まさかあの時の男の子がこんな所にいるとは思いもせず……全く気付きませんでした」


「いや、全然いいんだけどね。僕だってちゃんと言えばよかったのに言わなかったし」


「ですが、命の恩人と言うのは少し大袈裟かと……」


「そんなことないよ! あの時君が助けてくれなかったら、僕は確実に死んでた」


 アキトの必死さにイミアはキョトンとし、


「ふっ……あは、あははははっ!」


 それから思い切り笑った。


 初めて聞いたイミアの笑い声と、その表情に今度はアキトが目を丸くする。


 今の発言のどこが彼女の琴線に触れたのかは分からないが、少なくとも悪いようには捉えられていないようで胸を撫で下ろす。


「す、すいません。まるであの方のような事を言うので、どうにも可笑しくって」


「あの方……?」


「ええ、私の恩人で、主となられる御方です。今は理由があって一緒に居られませんが……」


 本当は今すぐにでもルフレの居場所をつきとめて、会いに行きたい。

 けれど、もう少し力が付けばその時は――――きっと、ずっと一緒に居られるだろう。

 

「じゃあ、その人の為にも僕は君に教えなきゃいけない情報がもう一つあるね」


 アキトは優し気な表情を浮かべてイミアを見つめると、懐から一枚の紙を取り出した。


「これは西端の大国ギュリウスにある魔術師ギルドの紹介状」


「魔術師ギルドですか……?」


「そう、そこは賢者リフカ縁の国で、魔法の始まりの地って言われてる。そこでなら、アミさんに掛けられた呪いについて分かる筈だよ」


「おお……」


 呪いの事だけでなくその解決法になりそうな情報も一緒に持って来たアキトに、イミアは感謝というか、もはや感嘆の声すら上げていた。


 この一年、きっとあちこちを駆けずり回って調べたに違いない。

 一度魔物から助けて貰っただけの相手に此処までするとは、なんというお人好しだろうか。

 

 そう言う部分も含めて、アキトはルフレによく似ている。

 性格は全然違うが、感性や考え方などは本当にそっくりだと。


「では、これはありがたく受け取っておきます」


「うん。呪いも今すぐ何かあるって訳でも無いみたいだし、時間が出来たら行ってみてね」


 呪いと言えど千差万別、死に直結するどころか、現状体調に異変をきたしてもいないので急ぐことは無いだろう。


 イミアも取り敢えずはこの渡りを終え、フラスカで観光を終えたらギュリウスに旅立てばいいだろうと、そう考えることにした。


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