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転生竜人の少女は、安寧の夢を見る  作者: 椎名甘楚
二章.第一王女護衛依頼
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38.アザリア・ヴィ・フランベルク

『賢者アーロン』の名前を『賢者リフカ』へと変更しました

 俺が案内されたのは城内のごく一部だった。


 来賓用の待合室や大広間、巨大な庭園など部外者でも見る事の出来る部分だけ。

 護衛に余計な知識はいらないとばかりに、宮仕えの貴族達の居住スペースなどはスルーされた。


 しかし、それだけでも相当な量の部屋を見て周らされたが。


『これでもまだ城の半分も案内しておりませんよ』


 と言われ、ちょっとこの時代の王族の事舐めてたと思ったよね。

 

 あとは、謁見の間。


 どうせ追々入る事になるからと連れられた。

 他の部屋と見比べても、ここはしっかりと金を掛けているようだ。

 

 玉座から部屋の壁に至るまでの何もかもが煌めいており、一体幾ら金を掛けたらこれだけの調度品を揃えられるのかと言う位にはすさまじい部屋だった。


 残念ながら王様はいなかったけど。

 どうやら平時は普通に別の部屋で仕事をしているらしい。

 まあ、当たり前と言えば当たり前だ。

 四六時中玉座の間で踏ん反り返られていては国が傾いてしまうからな。 


 『第一王女の護衛をする以上会う機会もあるだろう』と、バーソロミューは言っていたが、遠目に見るだけで話す機会は無いだろう。


 そして、第一王女の私室を残して最後に案内されたのが図書館。

 ここは凄まじかった、色んな意味で。

 まず蔵書の数が半端ない、この世界に来てここまでの量の本は見たことが無い。

 そして本の種類だ、パッと見ただけでもかなり古い歴史書から最新の魔導書までなんでもある。


 古代語――――魔人の国と大陸西の一部で使われるサン語というもの――――等、別言語の文献もある辺り過去に相当な蒐集家がいたらしい。


 因みに古代語と言うのは文字通り古代種が使っていた言語だ。

 俺の祖先も恐らく使っていたと思われる。

 

 文字配列や文法は現在人類圏の共通語になっている物と似ているので、書く事は難しいが多少読む事は出来たり。辞書もあるので翻訳しながらならちゃんと読めるだろう。


 分かりやすい例えをするなら、日本人から見た中国語みたいな感じだ。

 あれも書けと言われたら難しいけど、何となく意味を理解する事は出来る。


 それと、ここで俺は意外な見つけものをした。

 

『賢者リフカ 真正元素魔導書・上』


 そう、賢者リフカの魔導書だ。

 書いた年代的に言えば俺の持っている物より、此方の方が新しい。

 他にも無いかと探したが、結局これの上巻しか見当たらなかった。


 因みに図書館の利用は城内へ入る許可を得た者なら自由だ。

 護衛と言う職務上好きにやって来られるかは謎だが。

 とにかくここへはもう一度来たいな、特に魔法についてはもっと知りたい。



 そしてとうとう、第一王女殿下との初対面の時が迫っていた。


 城の中庭を通って階段を上り、長い長い廊下を歩くと、一際目立つ豪奢な扉が目に飛び込んでくる。


 恐らく、この一帯は王族の私室があるのだろう。

 その一番奥、廊下の突き当りにある扉の前でバーソロミューは止まった。

 重厚な扉へノックをした後一拍置いて、


「アザリア様、新しい護衛の者を連れてまいりました」


 そう言い、扉を開いた。

 豪華絢爛、そう言い表す以外にない部屋が露わになる。

 

 贅の限りを尽くしたようなそれに思わず眩暈がするが、そんな部屋の中、ドレッサーの前に立つ少女の姿を見た俺は、思わず息を呑んだ。

 

 真紅、燃えるように真っ赤な髪は緩くウェーブし、頭の高い位置からツインテールにされている。そして、そんな髪色と同じ紅い――――俺よりも深いワインレッドの瞳、気の強そうな目元と、筋の通った鼻梁、生意気そうながら可憐で花の蕾のような唇。


 まさしく、超が付くほどの美少女だった。

 白い肌や華奢な手足も相まって、まるでお伽噺に出てくるようなお姫様。

 ああいや……目の前にいるのも本物のお姫様だわ。

 

「バーソロミュー、部屋に入るときはちゃんと私が返事をしてからにしてって、言ったわよね?」


「申し訳ありません、ですがお嬢様の返事が無いものですから」


 これまた気の強そうな、可愛らしい声だ。


「で? 新しい護衛はどこよ、見当たらないけど?」


「こちらにおります、冒険者殿でございます」


 キョロキョロ、とバーソロミューの周りの見回すアザリアは、そう言われてからようやく――――ようやく俺へ目を向けた。


「……子供じゃないの」


 平民が王族と会話するには許可がいる。

 それ故に黙っているが、アザリアの方が十二分に子供だ。


 どう見ても十二歳かそこら、実年齢で言えば俺は七歳も年上と言う事になる。

 

「ま、どっちでもいいけど」


 どっちでもいいんかい、なら態々言う必要あったか?


「あんた、名前は?」


「ルフレ・ウィステリアです」


「ウィステリア……? どっかで聞いた名前ね」


 そう言ってアザリアは首を傾げる。

 だが、直ぐに考えるのをやめると、俺の髪を一房掴み上げた。


「白い髪、老人みたい」


「失礼ながら、私はまだ十九歳です」


「……あんたの返事なんか聞いてないんだけど?」


 よし、俺の第一王女殿下への第一印象は『クソ生意気なガキ』に決定。

 不遜な態度に俺を睨む目付き、これは筋金入りだろう。

 やれやれ……この先が思いやられるな。


「バーソロミュー、もういいわ。出て行って頂戴」


「畏まりました」


 アザリアがそう言うと、バーソロミューは一礼をして部屋を出て行った。

 ちょっと今一人にされるのはアレなんだけど……。




 それからは、アザリアによる怒涛の質問攻めが行われた。


 『どこから来たの』『なんで髪が白いの?』『角が生えていると言う事は、人じゃないの?』『強い?』『文字は読める?』『その服は何?』『変な形の剣ね』『男? 女?』


 等々……。


 その一々で俺がアザリアの気に入らない返事をすると、脛を蹴られた。


 俺の身体は頑丈すぎるくらい頑丈なので、逆にあっちが痛がっていたが……それでも蹴ってくる辺りプライドが高いのだろう。


 生意気でプライドが高くて、好奇心旺盛。

 事前に癖が強いとは聞いていたしこれ位は許容範囲だろう。

 子供の戯れと考えれば、我慢できないことも無いし。


「ねえ、あんたはなんでそんな仮面をしてるの?」


「黙秘権を行使します」


「も、くひ……?」


 勿論この国に黙秘権なんてものは無い。

 法律自体は存在するが、抜け穴だらけの欠損品。

 

「いいから外しなさいよ!」


 なので、そんな事を言っても意味が無い事は分かり切っていた。

 仕方なく俺が仮面の縁へ指をかけるのを見て、明らかにワクワク顔のアザリア。

 しかし、


「……!」


 カコッ、という音がして仮面が外れ、俺の顔が露わになった途端に、その顔はポカンとしたものに変わる。


 暫くの間見つめ合った後、正気に戻ったアザリアは怒ったように頬を紅潮させ――――


「わ、私以外の前でその仮面を外すのは禁止よ!」


 と、高らかに宣言した。

 

 その後、部屋を出て行こうとした俺を引き留めたり。

 部屋の隅で腕を組んで壁にもたれる俺をチラチラと見たりと、挙動不審。

 

 アザリアが家庭教師と勉強している間、俺は基本的にすることは無い。

 だと言うのに部屋の中に置いておくのはよっぽど警戒心が強いのだろう。

 いや……それだったらむしろ、部屋の外にいた方がよくないか?

 俺だから廊下の足音に気付くが、普通は違う。

 

 結局その日は、夕食以外の時間はアザリアが眠るまで傍に居る羽目に。

 



 まあ、なんだかよく分からないが、取り敢えず俺の護衛生活一日目はこんな感じで始まった。 

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