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133.揺るぎない勝利

あけましておめでとうございます。今年も転生竜人をよろしくお願いします。作者は既に二日酔いで死にかけています。


※本編73話(82部分)から96話(105部分)までの本文を大幅に改稿致しました事を報告します。


今後のストーリーにおいて致命的な矛盾が発生した為、一部キャラクターの登場が早まったり内容が変化している部分がありますが全体的な話の流れについては変化しておりません。既に読了済みの方は改めて読まなくとも話が分からなくなる可能性はありませんのでご安心ください。

 二部屋目にカチコミを掛けたと思ったら、ボス部屋だった件について。


 加えてちょっとした問答の後、敵が不意打ちを仕掛けてきたので思わず首を斬ってしまったし。魔力量的に魔人種だろうが、身体強化すらもしていないお粗末さ加減だったので、突っ込んでくるのに合わせて剣を添えるだけで死んでくれた。


 まあ、敵対者で尚且つ問答無用で殺しに来たのだから容赦する気は無かったが。


「ああ……可哀そうなミストガ……」


 先日の襲撃首謀者であろう青い髪の女は男の亡骸を見てそう言うと、私に視線を移して憎々し気に睨みつけた。どうやらお気に入りの配下だったらしいが、あんな化け物を操る女の子飼いにしては些か能力不足に思える。


 それに、こうして間近で相対してみれば、女の方も大した事が無いのが分かってしまった。


 多めに見積もって精々がメイビスの半分以下。彼女は転移の瞬間を狙われたと言っていたし、そうでなければ不意打ちであろうと傷を付ける事すら叶わなかっただろう。


 まあ、


「あなた……許さない、絶対に許さないわ!!」


「許さないのは私の方なんだが、取り敢えず――――」


「『――――死ねと、そう言って彼女は女へと剣を振り下ろした』」


 ボスの方も取り敢えず死ねと、そう言って私は女へと剣を振り下ろした。


 ……おや?


 確実に命中するだろう軌道で振り下ろした筈の剣先は地面を叩き、女は既に私の目の前から遠く離れた場所に回避している。どうやら行動を読まれたらしい、相手には何かしらの予測か予知の能力があるのだろうか。


 目測の魔力量で大したことが無いと侮っていたが、成程こういう特殊な能力持ち相手は油断してはいけないな。


「驚いた? 驚いたでしょう? あなたの行動思考は全て私に筒抜け」


「……ねむたくなるな」


「『ならばと、今度は土の魔法による不意打ちを仕掛ける』」


 そういう事ならばと、今度は土の魔法による不意打ちを仕掛ける。


 彼女の足元から土の杭がせり上がり、貫かんと迫った直後には既にその場に姿はない。今度は横へ回避したようで、反撃の為に術式の詠唱を試みていた。


「古き王、万象を凍てつかせる王よ、氷の相、有たるは停滞の力、信なる者の身を介しその力の一端をこの手に。 《氷波濤撃(フロスト・ウェーブ)》」


 詠唱を終えると同時に、彼女の前方から氷河の大波が私へと襲い来る。


 部屋中へ充満した冷気により視界は曇り、打ち付けられた氷の波濤は当然のように足元をすべからく凍結させていた。中級魔法と言えどこれをまともに喰らっては足を封じられて、中々に厄介なことになっていただろう。


「アハハ!! 忌まわしい子供、骨の芯まで凍った、凍っ…………はぁ?!」


 だが、服は元より、肌や髪の毛にまで霜が降りた私が平然と立っているのを見て、女は浮かべていた笑みを驚愕へと変えた。


「そんな……嘘、そんなの聞いたことない!! 反則よ!」


 白竜人の耐性が優秀なのかそれとも固有のものなのかは不明であるが、私は氷属性の攻撃の一切を無効化出来る。それを反則と言われても、なんと返したらいいやら。


「こ……のッ、雌餓鬼がぁ!!」


 私の態度が気に食わなかったのか、怒声を上げて発狂した女は続けざまに風の魔法を放つ。


「あんたの肉を微塵切りにして、"魔王様"の糧としてやる!」


 詠唱無しで撃って来たのを見るに、恐らく彼女の適性属性は風なのだろう。


 程々に威力の高そうな雰囲気を感じるし、同程度の魔法で相殺しなければ私にも傷がついた筈だ。それよりも、私的には彼女の放った言葉の方が気掛かりである。なんだ魔王様って、私のおじいちゃんってもう死んでたよね?


「だからなんで…………無傷で立ってるのよぉ!? 」


「分かる」


 それはそれとして、風の魔法は熱を加えると軌道を変える事から、この場合火属性魔法が防御するのに適切な魔法と言えた……。が、今回は夜の眷属たちとの約束(ルール)を守る為に、敢えて属性を加えていない魔力そのもので相殺を図ってみた。


 なんとなく壁のような形を想像しながら魔力を放った所、結果は重畳。


 無色透明の魔力の膜とも言うべきものが私の前方に展開され、風の魔法を散らして見せたのだ。これも無属性魔法に分類してもいいだろうし、《魔力障壁》とでも名付けておこう。


「そろそろ気は済んだか?」


「あ、え……」


 あのよく分からない予知能力のようなものが何なのかも予想が付いた。


 もう少し手の内を見せて貰ってからでも良かったけど、旅程に更なるアドリブが必要になってくるのでそろそろ終わらせなければいけない。まあ……ちょっとした実験も出来たし、中々に有意義な時間だったとは思う。


「《憤怒之業(ラース)》」


 心の内に眠る憤怒に意識を向けると、権能との強い繋がりが確かに感じられる。生卵の入ったシャボン玉を持ち上げるように、繊細に慎重にその沸き上がる力を制御し、凪いだ心を作り出す。


「雰囲気が……変わった?」


 そう言って警戒するように一歩後退る女を見据え、脱力した腕と半身になった体を前倒しにするように一歩踏み出した。


「《砕月(さいげつ)》」


「な……がッ!?」


 目まぐるしい景色の変化と共に、鈍色の軌跡を残して剣の背が女の肩を砕く。全てがコマ送りのように見える世界の中、乱れた髪の隙間から驚愕に見開かれる瞳が私を見ていた。困惑と動揺、そして痛み、全てが襲い来たその表情は泣きそうにも見える。


「どうした、今度は"心を読まない"のか?」


「なんでそれをっ…………こ、の、雌畜生がぁあッ!! 一体何をしたぁああ!?」


 そして、よろめく彼女にそう尋ねれば、凄まじい形相での絶叫が返って来た。


 "思考を読むスキル"を妨害された事に怒っているのか、それとも痛みで錯乱しているのかは分からない。ただ、私にしてみればどちらでもいいし、《憤怒之業》でその手の干渉を防げることが分かっただけで十分だ。


「あなた、もう……絶対に許さない!! その四肢を捥いで魔物の餌にして、生きたまま永遠に地獄の痛みを味わわせてやるッッ!!」


 しかし、肩を砕かれたというのに、彼女はお構いなしに両手を振り上げて襲い掛かってくる。それに若干恐怖を感じつつも、素人紛いの掴みかかりを避けて地面へと組み伏せた。


「ぎぃいっ!! 放せぇ!! 殺す、殺してやるッ!!」


「それはこっちの台詞なんだけどなあ」


 無防備なメイビスを狙った卑劣さや、得体の知れない魔物の変異種に襲わせた事などなど……。私が殺す事を躊躇しない理由は幾らでも挙げられるし、そもそも敵対者を生かしておくつもりは毛頭ない。


「私の仲間に手を出した時点で決まっていた事だ、死ね」


「ごばっ……」


 その言葉と共に鉄の剣先を喉へと突き刺し、一気に引き裂く。


 女は吐血しながら何度か痙攣すると次第に抵抗する力が弱くなっていき、暫くするとぐったりと動かなくなった。だが、まだ生きているようで、下手な笛のような、浅く短い呼吸音が空気を震わせている。


「……ふ、うふ……ふぶふ……ぐ」


 そして、何故か不気味にも笑い声を上げ、勝ち誇った表情で私を見ていた。


「あだじ、の……か、ぢよ」


「なにを――――」


 はじめは言っている意味が分からなかったが、彼女の胸元に集う魔力の渦に気付いた瞬間に背筋が総毛立つ。破壊的な熱を帯びたそれ――――魔石へと圧縮された火の魔力――――が今にも爆発せんと胎動を始めていたのだ。


 それ即ち悪役のお約束、死ぬ間際の自爆。


 まさか実際にやる奴がいると思わなかったというのは言い訳だろう。だが、夜の神の領域で火の魔法はご法度であり、もし仮にここで爆発などを起こされたら地上にまで爆炎が噴いて森に引火しかねない。


 そんな焦りを無視して、魔種であった彼女は肉体の崩壊を起こすと共に想像を絶する熱量を放出し、私の眼前で灼熱の閃光が迸る。


「――――やば」


 そんな呟きを掻き消すように耳鳴りにも似た音が空間を震わせ、とうとう魔石が砕けて圧力に反発するようにエネルギーが暴発。瞬間的に肌を焼く熱に晒され、私はほぼ条件反射の如く氷の魔法を放った――――






 ――――いや、最早それは放ったなんて言う次元では無い。


「えっ、なにこれぇ……」


 自分でも信じられない光景に思わずそんな言葉が漏れた。


 先程まで魔力の中心部から渦巻いていた熱は制止したように温度を下げ、大気を燃やして生まれた炎は白銀の結晶の中へ閉じ込められていたのだ。有り体に言うと、魔石から噴出した熱量は全て凍りつき、私の周囲のありとあらゆるものが氷へと閉ざされている。


 あの瞬間にここまで威力を高める術式を組んだ覚えはない。それどころか『せめて自分の体を焼かれないように』と、ほぼ仮組みに近いレベルでの魔法行使だった筈だ。


 なのに……何故こんな結果になる?


 私は熱量を失わせてその上から氷を生成することは出来るが、爆炎すらも凍らせるような力は無かった。というか、氷がどれだけ強固なものであっても属性の相克関係上それは不可能だろう。


「ううむ……一体なにが……」


「おい、貴様」


「ん……?」


 そんな自分で引き起こした事象の意味不明さに首を傾げて呻っていると、不意に背後から声を掛けられた。


 音域の違う二つの音を混ぜたような声音に振り返れば、自分の存在をおくびも隠そうとしない尊大な態度の異形が檻の中で佇んでいる。そいつは肌も髪も境界線が分からない程に黒く、私の夜目が利かなければまともに姿を捉える事も出来なかっただろう。


「そう、貴様だ。ちょいと近う寄れ、ほれ、こっちこっち」


「……」


 下半身は何やら魔導具のようなものに半ば取り込まれ、上半身が私に向かって手招きしている。……けども、どう見たって明らかに封印されたヤベー奴じゃん、言葉が通じるのが余計に怪しさを倍増させて仕方が無いし。


「……じゃあこれで、失礼しましたー」


「おっ、おおおおおおーいっ!! 待て待て待て待て!! 出て行くな出て行くなっ!! 我は貴様に話があるのだ!!」


「……人違いじゃないですかね?」


「そんな訳あるかっ!! ここにいるのは我と貴様のみぞ!? どこに間違える要素があるというのだおい!!」


 黒い悪魔めいた存在はやけにテンションの高い……と言うよりも焦った様子で私を引き留めるが、次から次へと怪しい奴らに構っていたらいつまで経ってもウェスタリカへ着かない。ここはもう縁がなかったという事で、退散させて貰えないだろうか。


 お腹空いたし、早く戻ってご飯にしたいんだけどなあ……。

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