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メモリーズ・ルナ 〜Fragment of memory〜  作者: ミゼン
第1章「バード村編」
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第9話「鳥籠に囚われし少女」



時は遡り、数十分前。


「むぐっっ……!!」


洞窟の中に運び込まれ、最奥地らしき場所に運び込まれる私。身体を縛られ、口枷を付けられ、何も喋れない。周囲には人間の姿は無く、ゴブリン兵しか居ない。ここはカース国のゴブリン軍の一つのアジト、という事を私に知らしめさせられる。


……怖い。怖すぎて涙が出てきそうになる。


「むぐっ……っ!?」


突然、私は地面に放り出された。しかし、その地面は岩ではなく、金属のような物で出来ていた。私は慌てて縛られた身体を無理矢理動かし周囲を見ると、鉄格子が私を囲んでいた。ギギギ……と音がし、音の方向に目をやると、ガチャン、と鉄格子で出来た扉が既に閉められていた。この鳥籠らしき牢から、私は逃げられないようにさせられていた。




『……で、今回の戦利品はこの娘一人だけなのか?』


何処かから、ゴブリンが発している声ではない、別の種族の声が聞こえる。私は縛られた身体を動かし声がした方向に目を向ける。するとそこには、悪魔の羽が生えた男の魔族と、リーダー格のゴブリンが居た。ゴブリンの方は申し訳なさそうに何かを言いながら頭を下げている。


「……予想外?人類の魔導組織の奴らでも居たのか?

……そうか、なら仕方ない。今回は運が悪かったな」


気がつくと、私を閉じ込めている鳥籠の鉄格子の外から、ゴブリン兵が一体一体集まってきていた。私達じゃ理解できない言語でゴブリン兵が身体を縛られ口枷を付けられた私を見ながら会話している。まるで私が見世物にされているような感じだった。


「さて……あの娘をどうするかだな」


そう呟くように言うと、魔族の男は私を閉じ込めている鳥籠に近づいてくる。


「むぐっ……っ!!」

「……ふっ、惨めだな。身体を縛られ、

救いを求める声すらも出せないとはな」

「むぐっ、むぐぐっ……っ!!」


こんな状態にしたのはあんた達でしょ、と苛立ち

魔族の男を睨みながら心の中で突っ込む。


「なんだ、その目は……まぁいい。さて、これからお前は二つの運命のどちらかに選ばれる。お前自身に選択権は無い。が、運命の詳細ぐらい教えてやろう。まず一つ目、お前はここでなぶり殺しにされて死ぬ」

「むぐぐっ……むぐっ!?」

「二つ目、お前はカース軍の捕虜、もしくは奴隷となる。この二つだ。この二つの運命の中から「その運命になって欲しい」と、しばらくどちらかの運命に祈ることだな」


そう言うと魔族は私が閉じ込められている鳥籠から離れどこかに行ってしまった。二つの運命。両方ともどう考えても絶対になってほしくない運命だった。その上選択権などないと宣告されるなんて。しかし、今私はただ鳥籠に捕まっている立場、そう宣告されてしまうのも当然だろうという事に気がついてしまう。


(ううっ……っ、ひぐっ……)


あまりの恐怖に、眼から涙が溢れ出てきた。

周囲ではゴブリン兵達が笑い声を上げている。

私はこの場では完全に見世物だった。


(ううっ……怖い……助けて……!

ユースお兄ちゃん……ルナお姉ちゃん……!!)


この世の中で一番大好きなユースお兄ちゃん。昨日初めて出会ったばっかりだけど、もう仲良くなって私の中では、本当のお姉ちゃんのような存在になっているルナお姉ちゃん。


私は心の中で、二人に助けを求めた……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


………




……時間は少し巻き戻り、10分程前。


見世物にされた状態で何も出来ず、ただ縛られていた私。ゴブリン達に長めの棒で私は身体をつつかれていたが、ゴブリン兵はそのうち私に飽きて、

もう鉄格子の近くにゴブリンは二体ほどしかいない。


すると、魔族の男が私の鉄格子に戻ってきた。


「お前のこれからの運命が決まった。お前はここでは殺さない。これからお前は奴隷兵としてカース軍の本部に送られる事になった」


突然、魔族の男は私に宣告する。


「良かったな。ここでなぶり殺しにされずに済んで」

「っ、むぐっ……」


全然良くない。

ここでなぶり殺しにされるのも奴隷兵にされるのも。


「出発は明日の朝だ。出来ないと思うが、

それまでに自殺などするんじゃ……ん?何事だ?」


すると突然、ゴブリン兵が魔族の男の

元へ猛スピードで走ってきた。ゴブリンは

何か焦った様子で魔族の男に何かを報告している。


「……何、数名の人間が襲撃してきただと?」

「……!!」


それを聞いた瞬間、ユースお兄ちゃんと

ルナお姉ちゃんの姿が脳内に浮かび上がる。

助けに来てくれたんだ、と。


「たった数名だろ、さっさと追い返してこい」


そう魔族の男がいうと、ゴブリン兵は他の

ゴブリン兵に呼びかけながら何処かへ行った。



ーーーーーーーそして時は現在へと巻き戻る。



「はあっ、はあっ……キリがない……!!」


私を含む6人は、大量のゴブリン兵がいる場所を強行突破しようとしていたが、束になって襲いかかってくるゴブリン兵を前になかなか前へ進めずにいなかった。


「ルナさん、危ない!!」

「っ……!?」

そう背後からのゴブリンの攻撃を防いでいたハイルさんに言われた瞬間、高台から魔杖を持った数体のゴブリンが闇の弾を飛ばしてきた。私は咄嗟に剣で斬撃を飛ばし、私目掛けて飛んできた闇の弾を斬る。闇の弾はその瞬間爆発を起こし、消滅した。

「ありがとうございます……!」

「いえ、それよりこれじゃキリが無いですね……」

確かにハイルさんの言う通りだった。

このままだとキリが無い。

ユースとメグさんがが一部のゴブリンの

身動きを定期的に封じ込めているが、それでも

襲いかかってくる数は多かった。


「『レフトリクシオン』!」

ユースが例の魔法を使い

ゴブリン兵を植物で拘束する。


「せめて、リーズちゃんのいる

場所さえ分かれば……」

男性の方の先生が呟くように言う。

確かに、まだリーズちゃんの

いる場所を掴めていなかった。

恐らく最奥地の場所に居るのだろうが……

「……あれ?」

「……ん?ユース?」

「いや、あっちの方に不自然にゴブリンが……」

そう言うとユースは魔杖でその方向を指す。

指された方向に視線を向けると、何かを手に持ち、高い場所からこちらを見ているゴブリンが一体だけ不自然にいた。

「あれ、小型撮影機かな……?」

「こちらを撮影しているんですかね?

……いや、それよりゴブリン兵の拘束が」

「あっ、あれ!!」

ハイルさんの言葉を遮り、女性方の先生が

何かに気づいたような感じで言う。

「ん?どうかしたんですか?」

「あのゴブリンのいる場所の奥の方に、何か

大きな通路があるのが少しだけ見えました!

もしかしたらリーズちゃんがいるかもしれません!

ほら、下の方に階段だって」

「本当か!?」

「へっ!?

い、いやまだ確実にいるとは……」

男性の先生が女性の先生に迫るかのように言う。

女性は少し困惑していた。

「それでも、まだ可能性があるなら……!

皆さん、少し離れて下さい!」

男性の先生に言われるがままに、

私達は少しその場から離れる。

「炎よ、道を切り開き汝等の攻撃を防ぐ壁となれ!

『フロガ・モーセ』!!」

そう言うと男性の先生は魔杖を小型撮影機を

持ったゴブリンがいる場所に向ける。

すると、二つの魔法陣が現れ、そこから

火柱が魔杖を向けた方向に放出される。

ゴブリンがいる所まで火柱が到達すると、

その火柱は上下へと広がり、壁と化した。

小型撮影機を持ったゴブリンは驚き、奥の方に

逃げ込んで行った。私はそれを見て確信した。

「恐らくあの奥が最奥地で、

リーズちゃんがいるだろう」と。


「炎が消える前に、今のうちに行きましょう!」

「ええ!」


私達は、背後からのゴブリン兵の攻撃を防ぎつつ、

切り開かれた道を走り抜き始めた。


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