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メモリーズ・ルナ 〜Fragment of memory〜  作者: ミゼン
第1章「バード村編」
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第8話「突入」

村から東南に飛び始めてから、十数分程。

私達は森の木々が囲んでいる、

少し開けた草原に着陸した。


「この近くにアジトがあります。

出来るだけ近くのゴブリンやモンスターに

気づかれない様に移動しましょう」


私達は巨大な鳥から降り、ハイルさん達に先導されながら森の木々の中を歩き始める。風が木々の葉と葉を擦らせ、ざわざわと音を立てている。周囲を見回すが、兎や小鳥などの動物は一切居ない。この区域はモンスターが出没しやすい事を知っているかのような感じだった。


「……!」


しばらく足音を立てない様に移動していると、また開けた所が見え始める。そこには、洞窟の入り口の様なものがあった。その洞窟の入り口の前には、槍を持ったゴブリンが二体、門番の様に立ちはだかっていた。どうやらここがゴブリン達のアジトのようだ。私達は近くの木々の後ろに隠れる。


「やはり、カース国の軍の一つ……

警備は怠っていないようですね」


「私に任せてください、校長先生」


ハイルさんが門番をまじまじと見ていると、

一人の若い女性の先生が魔杖を手に取る。

魔杖の宝玉は白色に輝いていた。


「……皆さん、眼を瞑っていてください……

『グリント』!」


言われるままに眼を瞑ると、詠唱文も何も唱えずに門番に聞こえるような声で魔法を唱えた。

すると、ピカッと閃光が周囲に走る。眼を瞑っていても光が眼の中に入ってこようとしてくるのを感じた私は腕で眼を隠した。門番のゴブリンは、悲鳴のような独特な鳴き声を上げていた。


「……!」


光が収まり、腕を下げ洞窟の方を見ると門番は

あまりの眩しさに眼を抑え地面で蹲っていた。


「今のうちです!」

「よし、突入しましょうか!」


「「はい!」」「……!は、はいっ!」


ユースとメグさんや他の先生達に遅れながらも、私は返事を返した。蹲るゴブリンを先生が魔法で縛り上げ、洞窟の中に入る。そこには様々な分かれ道がある……という訳でも無く、ただただ一本の通路があるだけだった。私達はその道を進む。一本道の壁に、白色に光輝く魔晶石が入った瓶が一定間隔で吊られていた。


私はその間に、先程から疑問に

思っていたことをユースに聞いてみた。


「……魔法って、詠唱文を

唱えなくても発動できるの?」

「うん。ただ、効果や威力は

2割から3割程落ちるけどね」


そうなんだ、と私は返事を返す。そうこうしていると、洞窟の中の開けた場所に出ようとしていた。


「……!!」


そこでは、ゴブリン兵が大量に

色んな所で彷徨いていた。


私達は思わず一本の通路の出口の

近くにあった大きな岩に身を隠す。


「どうしましょう、これ……」

「どうするって……

こんなにゴブリン兵が多いのに……」


二人の男女の先生が小声で話し合っている。開けた

場所に居る大量のゴブリン兵は独特な声で喋ったり、

見回りをしていたりしている。

数えれるだけでも百体程は確認できる。

それに対しこちらはたったの6人。

見えない場所にもゴブリン兵が居るとしたら、

数百体の単位で居るかもしれない……


『うぅ……ユースお兄ちゃん、ルナお姉ちゃ……』


「……!!」


突然、脳裏にリーズちゃんが助けを求める声が蘇る。


……そうだ。

私達はリーズちゃんを救う為にここに来ているんだ。


今この時一分一秒も、

リーズちゃんは苦しんでるかもしれない。


「……突入、しましょう」


「「……!」」


「今この時も、リーズちゃんは……だから、

少しでも早くリーズちゃんを助けないと……」


「……そうね、ルナちゃん」

「……そうだね、ルナ……」

「ルナさんの言う通りです、例え相手がカース国の軍の一つだとしても……

生徒であるリーズちゃんを見捨てる訳にはいきません!そうですよね?」

「ええ、もちろん!」

「当たり前じゃないですか!」


私は決意していた。リーズちゃんを必ず救うと。

それは、私以外のみんなも同じだった。

私、ユース、メグさん、ハイルさん、二人の先生。

6人の決意は今、「リーズちゃんを救う」

という物で固まっていた。


「……じゃ、行きましょうか……ハイル校長」


「ええ……

よしっ……突撃!」


ハイルさんの掛け声に合わせ、私達はゴブリン兵達の元へ突撃した。突然の侵入者にゴブリン兵は驚き、武器を構えるのに手間取っている。

その手間取っている隙を、メグさんが突いた。

「『レストリクシオン』!」

リーズちゃんがその魔法を使ったのと同じように、地面からゴブリンの等身大ほどの植物が何十本と生え、ゴブリン兵達を拘束し一時的に身動きを封じる。

「……!」

しかし、視認出来ていなかった場所からもゴブリン兵が現れ始める。剣や棍棒を構え、

こちらを睨んでいる。

「仕方ないですね……強行突破しましょう!

私が殿となりますので、貴方達は先へ!」

「……!で、でも」

「ハイル校長!俺も殿になります!」

「私も殿に!」

メグさんはハイルさんの「殿」という発言に少し困惑した反応の色を見せるが、それを遮り二人の男女の先生もハイルさんと同調するかのように殿になる意思を示す。

「……分かりました。ありがとうございます、校長先生。それと貴方方も……」

「いえいえ、とんでもないです!」

「私達はリーズちゃんを

助ける為に来ているんですから!」


「それじゃ、行きましょうか」

「……!……いや、ちょっと待ってください」

「……?どうかしたんですか?」

右腕に付けている腕輪を私は一瞬見る。

そして私は「あの魔法」を使った。


「……『エルピシャス・クレアール』!」


私の目の前に二つの魔法陣が現れる。二つの魔法陣から神々しい光が発され、その光の間の中心に光が集まっていく。あの時と同じように五感を操り、神々しい光を放つ剣を創り出す。先程までは気づいていなかったが、見えない魔力が私を包んでいるような感覚が自身の身体に感じていた。普通の時と何か違う、魔力の強さが上がっているような感覚。私は剣の柄を右手で掴んだ。


「……ごめんなさい、もう大丈夫です」

「いえ……それにしても、ルナさんは

不思議な力をお持ちで……」

「……不思議な力?」

「あっ……まぁ、この話はリーズちゃんを

助けて全てが片付いてからにしましょう」

「……ええ、分かりました」


「不思議な力」について少し気になったが、今はリーズちゃんを助ける事が最優先だ。私達はいつの間にか拘束が解かれたゴブリン兵達の目の前に、武器を構え直した。

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