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メモリーズ・ルナ 〜Fragment of memory〜  作者: ミゼン
第1章「バード村編」
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第7話「救出へ」

「……ん……っ?」


目を覚ますと、私は先程まで私達が戦っていた場所の少し近く設置してあったベンチに寝かされていた。周囲には人集りが集まり、「あっ、目が覚めたぞ!」など、騒ついていた。側にはユースが立っていた。

「よかった……ルナ……!回復魔法をかけても暫く

起きなかったからどうなるかと思ったよ……!」

安堵の溜息を、ユースはついていた。私は朦朧とした意識の中、先程起こった事を思い出す。


「……っ、私……っ!

リーズちゃんは!?」

「……人質にされたまま、連れてかれた……」

「!!……そんな……っ」


リーズちゃんが人質にされてしまい、

そのまま連れ去られてしまった事実を

改めて知り、私は絶望感に襲われる。


「……くそっ、あのゴブリンの

存在に気づいていれば……!!」

「……ユース……っ」


本気で悔しがり、近くの木に拳をぶつけるユース。

私も、この事実を受け入れきれなかった。


……私だって、もう少し周囲を警戒していたら、

こんな事にはなってなかったはずなのに……


……すると、人集りの中から魔杖を持った

メグさんと先程助けた女性が現れた。


「はあっ、はぁ……ユース、ルナちゃん!!

リーズが攫われたって本当!?」

「……母さん……ごめん、

まさかこんな事になるなんて……」

「……ごめんなさい、メグさん……」

「あっ……いや、責めてる訳じゃないわよ……

……それより今から私、リーズの事助けてくる!」

「ちょ、ちょっと待って母さん!」


余りにも焦りながら来たのか、

顔が汗だくだったメグさん。隣の女性も同様だった。


「何!?もしかしたらリーズ、

死んじゃうかもしれないわよ!?」

「そうじゃなくて、相手が誰だか分かってる!?

カース国のゴブリン軍の一つだよ!?しかも

アジトに乗り込まなくちゃいけないんだよ!?

一人で行こうとするなんて無茶だよ!!」


一人でリーズちゃんを助けに行こうとする

メグさんを制止するユース。リーズちゃんを

助けに行きたいという思いは、メグさんにとっては

誰よりも大きいだろう。


しかし私も、リーズちゃんを助けに行きたい

気持ちが小さいわけではなかった。寧ろ逆だった。


「……一人じゃ無理だろうけど……皆でなら、

リーズちゃんを助けに行けるんじゃない……?」


「……!ルナ……!で、でも……

僕とルナ、母さん……

3人じゃアジトに乗り込むには……」


「……そっか……うぅ……

じゃあどうすれば……っ」


ゴブリンと言えども、カース国の軍の一つ……

そのアジトに3人だけで乗り込むなんて、

とてもじゃないけど、無茶だった……

私は一体どうすればいいのか悩んでいた。


……すると。


人混みの中から一人の初老の男性と、

二人の男女が現れた。


「……私……いや、『私達』が

助太刀致しましょう」

「えっ……?……あっ!!先生!!」

「?……先生?」

「あっ、失礼いたしました、お嬢さん。私、この村の学校で数年前までユース君の先生を務めておりましたハイルと申します。

今は校長を務めておりますがね……」

と、ハイルと名乗った元ユースの先生は

私達に向けお辞儀をした。

すごく礼儀良く、紳士的だった。

「リーズちゃんはとても成績優秀な子で、

学校の中でも人気だったのですが、まさかこんな事になるとは……我々が、リーズちゃんを救う為助太刀致します」

「あっ、ありがとうございます、先生!」

誰よりも早くに、メグさんがお礼の言葉を

ハイルさんに言った。

ユースと私も続いて同じような言葉を言う。

「では、早速リーズちゃんを救いに……

って、君たちは……?」

「……?」

ハイルさんが私達を先導して、

巨大な鳥の飼育場へ向かおうとすると、

二人の少女が魔杖を持って立っていた。


「私達、リーズちゃんの友達なんです……!」

「私達も……リーズちゃんを、

どうか助けに行きたいです!」


二人はどうやらリーズちゃんの友達で

同級生のようだ。

涙目でギュッと魔杖を持って、こちらを見ている。


「……じゃあ……一緒に」

「いいえ、ダメです」

「「……えっ?」」


私が二人を連れて行こうと声掛けすると、

その途中で先にハイルさんによって二人を静止した。


「……貴女達は、まだきちんと学業を果たせていません。リーズちゃんを助けに行く、という事はカース国の軍隊の一つのアジトに攻め込む事になるのです。これは場合によっては命を落とすかもしれないのです。ましてやそんな戦場のようなところに、貴女達生徒を連れて行く訳にはいきません」


「……でっ、でも……!」


「大丈夫ですよ。必ず

リーズちゃんは私達が救いますから」


ハイルさんは二人を安心させるかのようにニコっと笑顔で笑ってみせた。


「……はい……分かりました……」

「……ユースさん!……あと、隣にいる……」

「ルナ、だよ。……昨日、

名付けてもらったばっかりだけど」

「あっ、ルナさん、ユースさん!

どうか、リーズちゃんを助けて下さい!」

「勿論だよ。絶対リーズは

助けるから。ね、ルナ」

「うん、勿論」

私とユースは二人を安心させる為に笑顔を見せた。


「……それでは、改めてリーズちゃんを救出しに行きましょうか。アジトの位置は大体把握してありますのでご安心を」


そう言うと、私達は改めて飼育場へ向かった。


………


飼育場に着き、巨大な鳥が小さな小屋から2匹出される。その中の一羽はアフェクト家の愛鳥「ルスー」だ。私とユース、メグさんがルスーに乗り、先生達がもう片方の鳥に乗る。


「えーっと、この地図で合ってますよね?」

「ええ、合ってますよ」

「じゃあ、あのアジトはここから東南に……よし。

皆さん、私が先導しますのでついてきて下さい」


二人が話していると、

ハイルさんが乗った鳥が飛び立ち、

ルスーや他の鳥も飛び立った。


「リーズ……絶対、助けるからな……」

「……!」

ユースが魔杖を握りしめ呟くように言った。


(リーズちゃん……どうか、生きていて……

今から助けに行くから……)


私もリーズちゃんの事を思いながら

密かに心の中で祈った。

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