表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メモリーズ・ルナ 〜Fragment of memory〜  作者: ミゼン
第1章「バード村編」
12/24

第12話「平穏な日常風景に歓喜の祝福を」

こうして、私達はリーズちゃんを

救う事に成功した。私達が最奥地から出ると、

戦闘の後で荒れ果てた洞窟の中に、

逃げ遅れたゴブリン兵が捕まっていた。

Aランク団員の4人のパーティが

私達に気づくと、その中の一人の剣を

腰にかけた、パーティのリーダーらしき

男性が近づいてきた。男性は

ハイルさんと先生達に向け話す。


「とりあえず、ゴブリン兵共は

全て拘束して、本部の方にも通信を

入れておきました」

「あぁ、どうもありがとうございます。

これでもう周りの村がゴブリン軍に

襲われる心配も無い訳ですな」

「ええ、もう大丈夫ですよ」


と、二人とも笑顔で話す。バード村や

他の村は、このゴブリン軍によく襲撃を受け、

金品や宝、そしてリーズちゃんのように

人間でさえも奪われていたのだ。


「それにしても……ゴブリンとは言えども

カース国の軍のアジトに乗り込むなんて、

大分無茶な事をしましたね」

「将来を担う我々の生徒の命が

かかってましたからね。たとえ無茶でも

教師の身分としては助ける義務が

ありましたから、当然のことですよ」

「あぁ、教師の方でしたか」

「えぇ。

今は校長を務めておりますがね。

……まぁ、でもルナさんやユース君、

それとメグさんが居てくれたから

こそリーズちゃんを救出できた

といってもいいです。それも今回

活躍したのは我々ではなく

彼女達ですからね」


「あぁ、そうなんですか?」


と言うと、ハイルさん達や

リーダーらしき男性だけでなく、

パーティ全員も視線を此方に当てる。


「……えっ?えぇっと……

別にそんな事ないですよ……?」

「いや、ハイルさん達が

居てくれたからこそ何とか……」

「そうそう、先生の方々が殿に

なってくれたお陰です!」


急に視線を浴びさせられた

私達三人は内心少し照れつつ、謙遜した。

すると、リーズちゃんが興奮した様子で

主にパーティの人達に話し始めた。

「ルナお姉ちゃん、

すっごくかっこよかったんだよ!

一度負けそうになったんだけど、

ヒロインみたいに一気に復活して

アデルポスをやっつけちゃったんだもん!」

「えっ?一人で、か??」

「うん!」

その瞬間、パーティの人達が少し騒ついた。

「えっ……と。ルナさん、だっけ。

本当にあのアデルポスを一人で倒したのか?」

「……えっ、えぇ、

倒した訳じゃない、ですけど……」

正確には倒してはいないが……

それでもパーティの人達の騒めきは

収まらなかった。

「信じられないな……

奴はカース国の軍の幹部の手下、

一般的なAランク団員でも一対一じゃ

勝てる相手じゃ無いはずなんだが……」

「ルナお姉ちゃん、

実はすっごく強いんだよ!

ジュエリーゴーレムも一撃で

倒したって言ってたし!」

「一撃……ん?

ジュエリーゴーレムを一撃で!?」

「うん、確かそう言ってたと思う」

男性は先程より驚いた表情となり、

さらにパーティの人達の騒めきが膨大する。

そして完全にパーティの人達の視線は

此方に向けられていた。かなり強い視線を

刺すように向けられ、私は一瞬たじろぐ。

「ルナさん……君は一体何者なんだ?」

「えっ……いや、その……」

私と男性の距離は目と鼻の先にまで

接近し、私は困惑しながら背後にたじろいだ。

「あの、ルナは実は……

記憶がないらしいんですよ」

この状況を見たユースが助け舟を出してくれた。

「えっ、そうなのか?」

「ええ。山の中で何も記憶がないまま

目が覚めたらしくって……だよね、ルナ」

「う、うん……」

「……理解が追い付かない、が……

ハイルさん、とりあえずバード村まで

行きますか?我々は討伐クエストの用事が

ありますので、あまり長居はできませんが……」

「そうですね、

とりあえず戻りましょうか」

ハイルさんがそう言うと、

私達はこの制圧された洞窟から

出ようと歩き始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


洞窟の近くに、ルスーや他の巨大な鳥、

さらにパーティの人達の移動用の鳥が

止めてあった。外はまだ明るく、

ユース曰くまだ昼八つ頃だという。

私達三人はルスー、ハイルさん達と

パーティの人達は他の巨大な鳥に乗って

バード村に戻った。


バード村に戻り、飼育場に着地し

私達はルスーから降りる。

そこには沢山の人集りがあり、

私達に気づくと、一目散にあの二人が

駆け寄ってきた。リーズちゃんを

救出に向かう前に、一緒に行かせて欲しいと

懇願したあの二人の少女が。


「「リーズちゃん!!」」

「あっ!メヤちゃん、

フムちゃん……むぎゅっ!?」


リーズちゃんが呼びかけに応えようと

した瞬間、一気に二人がリーズちゃんに

思いっきり抱きつき、その勢いで

三人がドサっと地面に倒れた。


「むぐぐっ……!?」


「リーズちゃんっ……ううっ、

よかった……よかったよぉぉ……!」


「本当に心配してたんだからぁ……!

ちょっとだけ、もう会えないかと

思ったよっ……!!ううっ、

本当によかった……!」


号泣しながら、リーズちゃんに抱きつく、

メヤちゃんとフムちゃん。ぎゅうっと

リーズちゃんを二人で抱きしめながら

涙を流していて、抱きしめられている

リーズちゃんは息苦しそうだった。


「むぐぐっ……ぷはっ、ちょっと、

ぎゅうぎゅうすぎて息できないよっ!」


ぎゅうぎゅう詰めにされたリーズちゃんが

二人の身体の間から顔を出す。

それを見ていた私とユースは

少し苦笑を浮かべていた。


すると、人集りの中から数十人の子供達が

此方に向かってきた。ハイルさんと先生が

「あっ、君達!」とその子供達に呼びかける。

どうやらリーズちゃんの通う学校の生徒達の

ようだ。年齢層も割と違ったりしている。

「リーズ!お前よく無事で

帰って来れたな……!」

「リーズちゃん……!よかった……!」

生徒達から様々な声が飛び交う。

「あっ、みんな!」

リーズちゃんが生徒達に気づき、

呼びかけを返した。


「あっ、ユースさん、ルナさん、

校長先生、先生、それとあと……」

「団員の皆さん、かな……?」

「「リーズちゃんを助けてくれて

本当にありがとうございます!」」

そう言うとメヤちゃんとフムちゃんが

お辞儀をする。するとハイルさんが、

「いえいえ、生徒を救うのは

教師の役目ですから」

と言った。


こうして無事にバード村に戻ってきた

私達は、事のあり行きをハイルさんが皆に

話した。もうゴブリン軍の脅威はない事に

村の人達は喜んだ。

最初にゴブリン軍の襲撃にあった時に

ゴブリンの手に捕まっていた女性も

この場に来ていたようで、その事を聞いて

一番彼女が喜んでいた。


……すると。

杖をついた一人の老人が、

人だかりの中から出て来た。

「ほっほっほ……いやぁ、一時はどうなる

ことかと思ったのじゃが、リーズちゃんが

無事に帰って来れて一安心じゃ……!」

「あっ、村長!」

生徒の一人が老人に向け言う。

どうやらこの老人は村長のようだ。

見た目からは八十歳を超えているか

超えていないか位のところだった。

「村長!あんまり無理をなされると

持病が悪化しますよ?」

「この位大した事ないわい、それに

儂達の村で育った、これからのリスラル大陸の

将来を作るリーズちゃんが無事に

助けられたと聞いて動かない村長が

どこにいるというんじゃ!」

心配をした女性の先生が村長に

心配の声をかけるが、村長は

逆に自分は大丈夫だ、と叱った。

「……コホン。まぁ、リーズちゃんも無事に

救出され、更にはゴブリン軍……いや、魔物軍の

指導者の一人のアデルポスを撃退!これは

儂達のバード村だけではなく他の村にとっても

喜ばしい知らせじゃ、戦勝記念日じゃ!」

「戦勝記念日、って……」

大袈裟な表現に、他の皆は苦笑をしていた。

「今日は皆で祝おう!宴じゃ!」

村長がそう機嫌良く言うと、ワアッと

一気に人集りが盛り上がった。

生徒達を中心に「やった、宴だ!」など

喜びの声が聞こえていた。


バード村は歓喜の祝福に包まれていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ