第11話「対峙・後編」
前回のあらすじ
最奥地に突入したルナちゃん達。
予想通りリーズちゃんが鳥籠の中に
捕まっていたが、なんかアデルポス
とかいう謎の魔族が現れる。
ルナちゃんはその魔族と戦ったら
なんやかんやで窮地に陥るけど
なんやかんやでルナちゃん覚醒した。
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「ルナっ……!」「ルナちゃん……!」
「ルナさん……!よかった……」
ユースとメグさんの二人と、
ハイルさん達三人が安心した声を出す。
私は皆に少し視線を向け、
少しだけ笑顔を見せた。
「……っ、
調子に乗るなっ!」
するとアデルポスがこちらに突っ込み、
剣を構え、縦に振り下ろす。その攻撃を
剣で受け流し、その後一旦
背後に下がり、体制を整える。
魔力が身体の内から溢れ出し、
身体が先程よりかは身軽になった
感じがしていた。このまま
やられっぱなしではいられない。
「はあっ!」
私は剣を構え、アデルポスに突っ込み
剣を斜め横から振り下ろす。
しかし、その攻撃はアデルポスの
かなりの速度を持って受け止められて
しまう。やはり、まだ彼の速度に
付いていけていなかった。
私は後ろに下がり、アデルポスも
背後に下がった。
(速いなぁ……どうしよう……)
そんなことを思っていると、
アデルポスが羽を動かし空中へと一気に飛んだ。
「チッ……一体どういう事だ……
まさかこのような力を持っていたとは……!
……仕方がない、この狭い空間で
『あれ』を使うのはあまり気が進まないが……」
アデルポスの苛立った表情の中に焦りという
感情が見え始めていた。すると、剣を
真上に指すように振り上げる。
私は彼の焦りや苛立ちから見て、そろそろ
やばいのが飛んで来そうな嫌な予感がした。
「……闇よ。暗黒の魔力よ。
集え、我が元へ。そして、汝を
撃ち滅ぼす弾幕へと化せ……
『オスクリダー・バーレッジ』!」
アデルポスの後方周囲に、5,6個程の魔法陣が現れる。
魔力が一気に溜まっていくのを見た私は息を呑み
剣を構える。その瞬間、魔法陣から一気に魔力が
弾状に、大量に放出された。
その弾幕は私目掛けて飛んでくる。
(っ、やばい……っ!)
あまりの数の弾の数に私は一瞬身をたじろぐ。
私は剣を構え直し、またあの魔法を使う。
「エルピスの光の糸よ、一繋の光へと収束し、
敵を撃ち滅す希望の光の束となれ!
『エルピシャス・アクティナ』!!」
私の目の前に光の魔方陣が現れる。
光の糸が一繋の光へと収束していき、
剣先をアデルポスの放った弾幕に向ける。
そして、その方向へ一気に光の束が放出される。
放出された光の束は飛んでくる弾幕と激突した。
大量に飛び続けてきている弾幕と
光の束は互角で、どちらの勢いも
落ちる気配はなかった。魔法陣が
描かれている剣先を弾幕に向け続け、
私は魔力を消費し続けている。
「チッ……!もういい、
これで終わりにしてやる……!!
『ダーク・アクティナ』!!」
弾幕が降り注ぐ中、更に剣先に魔法陣が
描かれ、その方向へ一気に闇の束が
放出されてしまう。
闇の束は弾幕を後押しするかのように
光の束に激突し、光の束は勢いを崩しかける。
「っ……!!」
このままだと光の束が消滅し、
勢いを付けた弾幕と闇の束が
私に降り注いでくる。剣先が震え、
光の束がじわじわと押されている。
(……っ、私は……っ!!)
私は諦めなかった。
リーズちゃんを助ける、その一心で
ここまで来たのに、こんな所で
終わるわけにはいかない。
剣の柄を強く握りしめる。
「リーズちゃんを助ける」という決意。
「決意」は力と化し、それは
私達に視認できる物と化す。
「はあぁぁっ!!」
例え力尽きようとも、
リーズちゃんを助けたかった私の決意。
そして。
私自身の中に溢れ出す、
ある限りの魔力を放出させ始めた。
その魔力は光の束と化し、
勢いを一気に取り戻す。
「っ!?」
光の束の勢いが取り戻された事に
アデルポスは驚き身をたじろぐ。
「っ、くっ……!」
魔力のある限り、魔力を放出し続ける。
少しずつ押し返しているものの、
そろそろ限界が来始めているのを感じる。
しかし、それでも。
私の決意は揺らぐ事はない。
「っ……いっけぇぇっ……!!」
そして、私はあるだけの魔力を
一気に放出させる。徐々に押し返し
できている光の束は勢いを更に増し、
更に弾幕の勢いが最初の方より
少し落ちて来ている事もあり、
そのチャンスを逃さなかった私は
一気に闇の束と弾幕を押し返した。
「っ、何故だ……っ!!
っ、うわあああああっ!!!」
闇の束と弾幕は勢いを崩し、
光の束がアデルポスに直撃し、
墜落して地面に落下する。
多少威力は弱まってしまったが、
それでも生身が受けて無傷で
いられる訳もないだろう。
……
「っ、はあっ、はあっ……っ」
息切れを起こし、魔力を殆ど放出しきった
私の身体は限界に近く、私は後ろに倒れる。
魔力で創られた剣は消滅した。
「っ!ルナっっ!!」
ゴブリンと対峙していたユースが
こちらを見て向かってくる。ゴブリンは
メグさんによって植物で拘束され
身動きを取れなくさせていた。
「ルナっ、大丈夫!?」
「……うぅっ……うん、なんとか……」
私は慌ててこちらに向かって来たユースに
力ない笑顔を見せる。魔力と体力を
消費し過ぎて、少し意識が朦朧とする。
「っ……ぐっ、おのれぇ……!!」
すると、先程墜落したアデルポスが
弱々しく立ち上がり、こちらを睨んできた。
顔を血の色が伝い、身体はボロボロに
なっていた。しかしそれは殆ど
こちらも同じだった。
すると、入り口から飛び入るように
一体のゴブリンが入ってきた。
ゴブリンは慌てふためき、
アデルポスの元へ向かい何かを報告する。
「っ……!?何だと……!?
新たな侵入者が数名現れ、更に
ゴブリン軍はほぼ壊滅状態だと……!?」
かなり焦りの表情となったアデルポス。
私とユースはそれを聞きハイルさん達の方へ
視線を向ける。三人はこちらの視線に気づき、
笑顔で返してくれた。
「っ……仕方ない……
まだ生き残っているゴブリン軍は
出来るだけ即刻脱出しろ!
我々も鏡から脱出する!」
そうゴブリンに告げると、
ゴブリンは違う出口から
飛び出すように出ていった。
リーダー格のゴブリンは
アデルポスの命令を聞き、
植物による束縛を破壊する。
そして、メグさんから逃げるかの
ように離れ、アデルポスの元に行き、
ボロボロとなった彼を一回り、
二回り大きいゴブリンが
背負うかのように背中で持った。
その時、チャリンと何かを落とす。
「よし、脱出するぞ」
そう言うとゴブリンは一気に
最奥地の奥の方へと突き進んだ。
奥の方には、巨大な鏡が
置かれていた。鏡の縁には
薄く、しかし光晶石よりかは
輝いていない光を放つ魔晶石と、
金糸雀色に輝く光晶石が
埋め込まれていた。
「あっ、待てっ!」
脱出しようとしていたアデルポス達を
制止しようとユースとメグさんとハイルさん達
が動こうとするが、もう既に遅かった。
巨大な鏡は表面が何故か
波立っていて、アデルポス達がその
鏡に触れると手が鏡を貫通し、
そのまま鏡の中へと入って行ってしまった。
そしてその瞬間、光晶石の輝きが消え、
どういう原理か鏡は
一瞬にして消滅してしまった。
……
その後、ユースに治療魔法をかけてもらい、
大分動きやすくなった私。
先程アデルポスが言っていた「新たな侵入者」は、
どうやらバード村の近くを通り、
リーズちゃんが連れ去られたった数人で
カーズ国のアジトに乗り込んだと聞き
応援に向かった、Aランク団員の
パーティだったという。
脱出に失敗したゴブリン兵達を
その人達が捕らえ、
その間に先程アデルポスが落とした、
リーズちゃんが捕らえられている
牢獄の鍵を拾い、鍵を開けた。
そして、リーズちゃんを縛っていた
縄を解き口枷を外す。
「ううっ……怖かったよ……
ユースお兄ちゃん……!!」
やっと解放され、喋れるようになった
リーズちゃん。涙が溢れ出し、そのまま
ユースに抱きつく。
「……ごめんな、こんなに
怖い思いさせてしまって……」
ユースはリーズちゃんを抱きしめ、
少し安堵の表情を浮かべ、思わず
涙をこぼしていた。
横にいたメグさんも安堵の表情で
安心感のあまりに涙を零していた。
「……よかった、本当に……」
「ええ、本当によかったですね……」
その光景を見ていた私とハイルさん達。
私達も安堵の表情を浮かべていた。