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メモリーズ・ルナ 〜Fragment of memory〜  作者: ミゼン
第1章「バード村編」
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第10話「対峙・前編」

私達は炎の壁で守られた一本道を走り抜け、階段を登り最奥地まで辿り着く。ゴブリン兵達が後ろから追ってきてるが、ハイルさん達が殿としてゴブリン兵達に応戦してくれていた。私とユース、メグさんは最奥地の少し大きな扉の前に立っている。門番は居ない。


「よし……行こう」

「……うん」


ユースがそう言うと先駆け扉を

開けようと扉の廻し手を掴む。

ギギギ……と軋んだ音が鳴り、扉が開く。


「……!」


扉の先には、少し大きな空洞があった。

その中に、先程逃げ込んでいたゴブリンと、村で一度戦ったリーダー格のゴブリンと、鳥籠のような牢が置かれてあった。こちら側に気づくと、ゴブリンは武器を構えこちらを睨んできた。……しかし、私達はゴブリンよりも牢の方に視線を向けていた。


「むぐっ、むぐぐっ……!!」


鳥籠の中から、身体を縛られ口枷をつけられたリーズちゃんが起き上がれずうつ伏せの状態で上半身を上げ、こちらを見ていた。


「リーズちゃん!!」「「リーズっ!!」」


私達は思わず彼女の名前を叫ぶ。なんとか無事でよかった、と安心したと同時に助けなきゃ、という気持ちも奥深くから湧き上がってくる。


「よかった、無事で……!」

「リーズ、今助けるからな!」


ユースがそう言うとリーズちゃんが閉じ込められている鳥籠まで向かおうとする。私達もそれに続こうとした。その時だった。


『……お前らか。我々による

略奪活動を阻止された原因は』


「……!?」


突然、何処かから私達では無い声が聞こえる。

思わず周囲を見回す。すると、バサッバサッと

羽を動かしている音が聞こえた。

私達はその音の居場所に視線を向ける。


「なっ、お前は……!」

「よくここまで来れたものだな。

この娘1人の為だけに」


そこには、悪魔のような羽の生えた人間の姿をした、

モンスターが今まさに地面に降りようとしている姿があった。


「……誰?」

「『ディモス・アデルポス』

……カース国の幹部の手下の一人だよ」


「そうだ、いかにも私がアデルポスだ。

略奪活動を阻止された挙句、アジトまで

たった数名で突撃してくるとはな。

苛立ちが止まらん……おい、そこの

隊長のゴブリン。奴等を斬り殺せ」


そう腕を組みリーダー格のゴブリンに命令する。

ゴブリンは叫び声のような、独特な鳴き声を上げ、

村で戦った時のように、筋肉が増強される。

ゴブリンは人間ほどの大きさの

剣の柄を握り締め、こちらに向かってきた。


「……っ!」


そして、剣を振り上げ、一目散に

私目掛けて剣を振り下ろしてきた。

私はその攻撃を避け、一旦後ろに避ける。


……が、身体の大きさに比例しない程の

素早さで一瞬にして間合いを

詰められてしまった。その時だった。


「『ダーク・スパイラ』!」


入口の方から、闇の球が飛んできた。

球はゴブリンに向かい、そのまま激突……

したかのように見えたが、ゴブリンは

自分自身の素早さを生かし、剣で

闇の球を弾き飛ばした。

私は入口の方を見る。そこには、

ハイルさんを含めた先生が3人、

そこに立っていた。ハイルさん以外の

他の先生は入口前付近に迫る大量の

ゴブリン兵と応戦していた。


「ハイルさん!」

「私達はゴブリン兵達をなんとかします!

その間に早くリーズちゃんを!」


そう言うと応戦している他の二人の先生の

中に入り、ゴブリン兵を止め始める。


「チッ……目障りな奴が」

アデルポスは苛立って舌打ちをしている。


「ルナっ!僕と母さんでこいつを何とかするから、

君はアデルポスの方をお願い!」

「うん、分かった!」


そう言われた私はゴブリンから離れ、

アデルポスの目の前に現れる。

姿は一見普通の人間そっくりなのだが、

背中から生えている悪魔の羽が

人間ではないという事を明らかに

示しているのがよく分かった。


「むぐぐっ……!!」


横の鳥籠のような牢の中で、うつ伏せの状態で上半身を起こし私に助けを求めるような目でこちらを見ていた。もちろん、当たり前だ。助ける為にここにきているんだから。


「問おう。何故この娘一人だけの為

だけに命を賭けてでもここに来たのかを」


「……そんなの、決まってるでしょ。

友達だし、ユースの妹だから」


「自分の命を犠牲にしてでも

助けたかったのか?」


「……当たり前でしょ」


上から目線で腕を組み問うアデルポスに

私は吐き捨てるかのように答えを言い返す。


「……分からんな」

アデルポスはそう吐き返すように言うと、

牢の後ろに置かれている机の上に

置かれてある、小さな闇の水晶が

埋め込まれた剣に手を伸ばし、手に取る。

アデルポスは地面を足で蹴り、

その勢いで羽をバサッバサッと動かしながら

空中で飛ぶ。私は剣の柄を握り直す。


「闇よ、暗黒の魔力よ。

今我の元へ収束し、

汝を滅する闇の束と化せ。


『ダーク・アクティナ』」


アデルポスの目の前に闇の魔方陣が

現れる。魔方陣に闇の魔力が集まっていく。


私も対抗して「あの魔法」を使う。

「『エルピシャス・アクティナ』!」


私の目の前に光の魔方陣が現れ、

光の糸が一繋の光へと収束していく。


「「はあっ!」」


持っている武器を両者共に向け合い、

放たれた光線はぶつかり合う。

両方互角のようで、その光線は

爆発を起こし、消滅した。


「……ほう。やはり

只者ではなかったか」


そうアデルポスが呟くと、剣の柄を

握り直す。私も連動して柄を握り締める。


「……っ!」


……が、その瞬間にいきなりアデルポスが

剣を構え私めがけて急降下してきた。

私は剣で受け身の体制をとり、降下しながら

アデルポスの剣が振り下ろされ自身に

直撃するのを防ぎ、受け止める。


剣と剣が擦れ合い、ギリギリと

軋むような音がなる。しかしあの時

ゴブリンに吹き飛ばされるかのような

力はなく、数秒後私とアデルポスは

後ろに下がり、離れる。


しかしアデルポスは体勢を整え、

私に突っ込んできた。剣を

突き刺すかのように私に向けて

攻撃してくる。流石にこれは

防ぎきれないと先に判断し、

その攻撃を間一髪で避けた。


「これで終わりか?」

「っ……!」


アデルポスの、身の軽さや

スピードに翻弄される私。

避けた瞬間、アデルポスは

地面を蹴り一気に

間合いを詰められる。


「『ダーク・ソク』」


剣を私に向け、その剣の先に

魔法陣が描かれる。私は剣で

攻撃を受け流そうと反射的に

動いていた。が、しかし。

アデルポスはその魔法陣を私に

押しつけるかのように、

剣を突く。その突く瞬間に、

一気に魔法陣に魔力が溜まり、

突いた瞬間にその魔力が

解放されてしまう。


「っ!?」


その瞬間、私の身体に一方向から

衝撃が走り、吹き飛ばされる。

衝撃自体に痛みは無かったが、

私自身は地面に吹き飛ばされ、

何回かバウンドした後に壁に

直撃した。土煙が舞い、

壁が少し崩れる。その瞬間に

剣も落としてしまう。


「っ、うぐっ……!!」


当たり所が悪く、あの時、ゴブリンに

吹き飛ばされた時のような激痛が

私の身体に走る。


「ルナっ!!……っ!?」


ユースが叫ぶが、ゴブリンと対峙していた

彼はその瞬間、ゴブリンに攻撃されそうに

なるが、何とか回避していた。


「侵入者など、よく現れる。

しかし大抵は我々の大量の

ゴブリン軍に恐れて逃げ帰るか

数の暴力で押しつぶされるかだった」

「ぅぐっっ……っ、うぐっ……」


アデルポスは先程とはかけ離れた

遅さでゆっくりとこちらに歩いて来る。


「……最奥地までわざわざ

来る人間は初めてだ。敵ながら

称賛を贈ろう。だがこれで終わりだ。

安心しろ、貴様を葬った後に仲間も

全員同じ場所に送ってやる」


そう言うと、激痛で動けなくなった

私に剣先を向ける。他の戦っている

ユースやメグさん、ハイルさん達が

私の状況に気づき、私の名前を叫ぶ。


……


……自分自身の意識が。


……だんだん遠のいていく。


……


あぁ……


……もうダメかもしれない。



……




「むぐっつ……!むぐうぅっっっつっ!!!!」



鳥籠の中にいる、一人の少女の声が

私の耳に入る。その声は紛れも無い、

リーズちゃんの声だった。


その瞬間、リーズちゃんとの

記憶が私の脳内を巡った。



………



……そうだ。


こんなところで

諦めちゃいけない。


リーズちゃんを救う、って

最初から決めているんだから。


「……!!」


私の意識が、完全に覚醒した。

私は剣の柄を取り、握り締める。


身体の中から湧き出て、

身体全体を纏う魔力。


……そして。


……一つの「詠唱文」が、

脳内に蘇ってきた。


「……エルピスの力よ、その希望の力を

我が元へ、我が身体へと与え、汝を打ち倒す

希望の光となれ!


『エルピシャス・アネベイノ』!!」


私は剣を振りかざす。

その瞬間、私の真下に光り輝く魔法陣が

描かれ、一気に魔力が溜まる。


「……っ!?」


それを見たアデルポスは驚き、

先に私を始末して事なきを得ようと

剣を突き刺そうとしたが。

その瞬間、光の柱が一気に私を包む。

一気に身体の痛みは消え、力が、

魔力が、身体のうちから

一気に溢れ出してきた。

身体も軽くなった気がする。


「……リーズちゃんは、

絶対に返してもらうから」

「っ……!」


私は立ち上がり、少し背後に下がった

アデルポスに吐き捨てるように言った。

後編へ続きます

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