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9.今、自分にできることを

 あれから早二週間が経ち、アルの学園退学宣告、それから悪魔との戦いまで二週間に迫った。




 アルの記憶は未だに戻る様子はないけど、私はもうそんなことより、少しでも彼と一緒にいたい、とそう思うようになった。




(……だってこれが、貴方と過ごす最後の時間になるかもしれないんだもの)







 そう思いながら、日々を、幸せを噛みしめるように過ごし、私は今日も、手作りのお菓子を持って彼に会いに行く。





 ☆






「うん、今日も凄く美味しいよ、クラリス」

「……それ失敗作なのだけれど……絶対不味いでしょう?」

「ううん、クラリスが作ったものはどんなものでも美味しいよ」

「っ……!」




 何てこと言うのこの人は……!




 記憶をなくしても、相変わらず私をベタ甘に甘やかす彼を見て、私は嬉しさの反面盛大にため息を吐く。



(アルといると、本当に感覚が狂うわ……)




 私は白い目で、今日持ってきたゼリー……今アルが持っている、ゼリーに到底見えない失敗作を見て、ううっと唸る。



「……もっと美味しいもの作るわね」

「? だから、これでも十分美味しいって。

 愛が伝わってくる」



 ふわっと笑ってそんなことを言うものだから、今度は恥ずかしさのあまり顔が赤くなるのが分かって見られないようそらすと、アルは「ふふ、可愛い」なんて言いながら、私の頰をツンツンとつつく。




「ちょ、ちょっと! 距離が近いってば!」

「? 今更だよ、そんなの。 僕達は婚約者だし、それに……」



 ふっと影がさす。

 そして耳元で囁かれた。




「いつもキスしてるでしょう?」

「な、ななな何てこと言う……んっ!?」



 抗議の言葉は、アルの唇によって遮られる。



(……〜〜〜そして長いのよ!!)




 最近では、居たたまれなくなって常に部屋には、クレイグがいなくなってしまうようになった。

 そのため、アルはやりたい放題と言わんばかりに、スキンシップをしてくる。

 ……まるで、記憶がない時と同じような感覚に、嬉しいような悲しいような気持ちにはなるけれど。




 一頻りキスして、満足そうに私を抱き寄せて嬉しそうにしているアルを見れば、私もそんな考えはどうでも良いや、という気持ちになってしまう。



(……アルが近くにいると、ダメ人間になりそう)




 なんて、最近では思うほどだ。

 ……でもそれくらい、前と変わらず今も幸せだとそう感じる。




「……ねぇ、クラリス」

「? 何?」

「後2週間後くらいしたら、戦争が始まるって本当?」

「! 知っているの?」




 私が驚いてそう聞けば、「そりゃあ、僕も一応王家の一員だからね」とアルは頷く。



「……僕にも魔法が戻れば、一緒に戦えるのに……ねぇ、クラリスも一緒に戦わなければならないの?」

「っ、そ、それは……」



 その言葉に、私はたじろいでしまう。

 それを肯定と捉えたアルは、「やっぱり」と呟いた。




「……クラリス。 無茶だけはしないでね。

 絶対に、命を落としたりなんかしないで。

 危ないこともしないで」

「! ……えぇ、そのつもりよ」



 私がそう言えば、アルは「約束だからね」と念押しをするように言い、私は首を縦に振ると、アルはギュッと私の背中に腕を回した。




 私もアルの背中に腕を回しながら、心の中で訴える。





(……ごめんなさい、アル。 その約束は多分、守れそうにないわ。

 ……ごめんなさい、ごめんなさい……)




 私は何度も心の中で謝りながら、アルの温もりを忘れないよう、より一層強く、アルを抱き締めたのだった。








 ☆






 

 そんな私とアルをよそに、戦争のための準備は着実に進められていた。




 私の国からは大量の兵器、水の国からは兵器と食糧、時の国では作戦会議と対悪魔対策の歴史調査、とそれぞれが分担作業をしていた。



 それだけでなく、ランドル学園の中でも、戦争や悪魔といった単語が頻繁に飛び交い、皆が緊張状態にあった。


 生徒も勿論、魔法使いは全て戦争に駆り出されることになっているため、学園内の授業で行う魔法向上は、より一層厳しいものとなっていた。




 そんな非日常の姿を見て、私はいつも胸が締め付けられる。

 常に一緒にいるルナも、ミリアさんも、リアムも皆、同じように胸が痛いといつも言っている。



(……こんなの、間違っているわ)




 そんなことを言ったところでしょうがないことは分かっている。

 バアルが復活してしまった今、私達は戦ってどうにかするしかない。



 ……だけど、それでは犠牲者が出てしまうことはたしか。




 黒魔法の威力は、どれだけ強いかは、私達が悪魔祓いの時に身をもって体感している。

 ……それに、バアルだけでなく、他の悪魔も加わってくるとしたら、国総動員で戦っても一溜まりもないもの。




(……そのために、私とエドガー王子で探しているの)





 まだその方法は見つかっていない。



 ……だけど、焦りは禁物。 絶対にあると信じて、エドガー王子からの連絡を待つ。





 皆が、犠牲にならずに済む方法を。




 平和に解決が出来て、悪魔を倒せる方法を。






(……こんなことや、1000年前に起きたような甚大な被害を、二度と出さないために)






 ……私は、自分に与えられたこの宿命を背負って、アルのために、皆のために尽くすと決めた。





(……必ず、その方法を見つけ出してみせる)







 そう心に決めて、表向きは戦争のための準備を、裏では秘密裏に自分の魔力を高めつつ、ありとあらゆる情報を探して、日々を過ごすのだった。





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