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7.それぞれの“収穫”

「ところで、アル」



 アルがベッドから起き上がって身支度を整えている間、私はアルの部屋の応接室に移動して声をかけた。



「んー?」

 とアルは、寝室から返事をしたのを聞いて、私は意を決して問いかけた。




「答えられなかったら答えなくて良いのだけれど……さっき、魘されていたでしょう?

 あれは、何の夢だったの?」

「……」




 アルは、口を開かなかった。

 ……やっぱり、変なことを聞いたかな、なんて思って、質問を止めようとしたその時、アルは着替えを終えてこちらに顔を出すと「……笑わない?」とまるで子犬のように小さくそう聞いてきた。




(……っ、可愛い!)

 なんて馬鹿な考えをしてしまった自分を律して、「勿論、笑わないわ」と微笑みながら頷くと、アルは私の隣に座って、紅茶を見つめながら実は、と口を開いた。




「……怖い夢を見たんだ。

 ……はは、自分でもこの歳で馬鹿みたいだと思うんだけどね」

「……それは、どんな夢だったの? ……あっ、言いたくなかったら言わなくてもいいのだけど……」



 私の言葉に、アルは「そんなに興味があるんだね」と驚いたように私を見るから、私は慌てて付け加える。




「さ、さっきとても魘されていたから、その……もし話してくれたら、その夢を根本的に解決できるかなって思っただけなの。

 ……あ、力になれるかどうかは分からないけれど、でもそんなアルを苦しめるような夢、私がやっつけてやりたくて!」

 ……って何言ってるんだろう私……!



 変なことを口走った自覚があって、私はうっと言葉を詰まらせながらアルを恐る恐る見れば、アルはクスクスと笑いだした。




「ふふ、クラリスって本当面白いというか、凄いというか。 勇ましいね」

「なっ……!? 勇ましいって、それ女性に使う言葉ではないわよね!?」

 全く、と怒ろうとして、アルは「いや、気を悪くさせたならごめん」と謝ると、再度下を向きながら言った。




「……僕はクラリスになら、何でも話して頼りたくなるから、不思議だね。

 まるで、僕の天使みたいだ」

「っ!? な、ななな何を言っているの!?」



 驚いて、その言葉に思わず赤面する私に、アルは「はは」と笑いながら、「いや、本当なんだよ」と言葉を続けた。




「……さっきの夢でね、魘されてたっていうのは事実のだよ。 クラリスが目の前にいてくれたから、夢から覚めればとても穏やかな気持ちになれたんだけれど。

 ……その前は、何故か金縛りにあったように動かなくて、声も出せなくて。 その僕の目の前に、まるで悪魔のような、血走ったような目が見えたんだ。

 ……何処かで、見たことのある“悪魔”だと感じた」

「……!」



 なんて、実際に見たこともないしいるかも分からないのにね、なんて肩を竦めるアルとは対照的に、私はアルの口から出てきた言葉について、考え込んだ。


 “何処かで見たことのある悪魔”。

 それは、十中八九、私が関わっていることで無くなっている、アルの記憶の中で見た同じ悪魔だとしたら、一人しかいない。



「……有り得るかもしれない」

「……クラリス?」




 私の呟きは、アルに聞こえたのか。

 思案していた私の顔を覗き込むように見るアルに、私は視線を向けると、アルの手を握った。




「有難う! アル!! もしかしたら、貴方を救えるかもしれないわ!」

「! ほ、本当?」

「えぇ!」




 私は大きく頷くと、立ち上がって手早く帰る支度をする。

「ごめんなさい、すぐに行きたい場所があるから、今日はお暇するわね。

 明日、またいつもの時間に会いましょう」

「う、うん…、って、え!?」




 アルは私を見て口をポカンと開ける。

 それは、私がアルのバルコニーに続くドアを開けて、その手すりの上に座ったから。



「あ、危ないよ!?」

「ふふ、大丈夫よ。 魔法を使って帰るから。

 ……今日は、急用が出来たからここから帰らせてもらうわ。

 ごめんね、驚かせてしまって。

 ……リアム! 今から彼の方の元に連れて行って!」



 その言葉に、ビュッと風が吹き荒れ、リアムが飛んでくる。 箒に跨ったリアムは、「全く、人使いが荒いお姫様だよね」と言いながら私の手を軽く引っ張ると、自分の箒の後ろのスペースに乗せてくれた。




 驚いて私とリアムを交互に見るアル。

 そして何故か、リアムは私の手を握ったまま離さないことに私は驚いていると、リアムは「じゃあね、アルベルト様」とひらひらと反対の手を振って、みるみるうちに空へグングンと上がって行ったのだった。






 ☆





「? 今日は箒なのね?」

 私がそう問えば、リアムは「こっちの方が本来速いからね」と言った。



「ただ、乗れる人数が二人に限られるから、大勢の時は風に乗る手段しかないんだけど」

 と、リアムは声を上げながらいう。

 私はその言葉に感嘆する。



「風の魔法って、本当に凄いわよね」

「移動手段的には、場所が分かってるところであれば断然、瞬間移動魔法の方が良いと思うけどね。

 シリル様の魔法はその点、便利だと思うよ」


 なんて笑いながら言うリアムに、「でも空中散歩も楽しいわ」なんて話していたら、あっという間にディズリー国に着いた。





 王家の紋章を門番に見せて門をくぐってから、「ショートカットしよう」とリアムが軽く風の魔法でふわりと体を浮き上がらせてふわふわと低空飛行で飛んでいれば、丁度よく見知った顔の人が歩いてきた。


「おーい、シリル様〜」

 とリアムはその名を呼んでから、ストンッとその人物の目の前に降り立った。




「うわっ……本当、空から登場は慣れませんね。 毎度のことながら驚かされます」

「そんなに珍しいですか? 僕は瞬間移動魔法で急に現れた方がびっくりしますけど」

「私からしたらどっちもびっくりするわよ」


 なんて三人で軽口を叩いていると、向こうからローレンスとミリアさんが現れた。



「あら、デート中だったかしら?」

 お邪魔してごめんなさいね、そう私が言えば、二人は慌てたように首を振って顔を赤くしながら言った。



「違うよ! 俺達は調べ物をしていたんだ! 悪魔と戦うためのね!」

「そ、そうです」


 ローレンスの言葉にミリアさんは頷くと、「で、面白いことがわかったんだよね」とローレンスが言い、二人は顔を見合わせて微笑み合った。

 仲睦まじい二人に微笑ましくなりながらも、私は二人の言葉を聞いて口を開く。




「……何か収穫があったのね。 私も丁度、アルから手掛かりが見つかったところなの。

 アルを襲った“犯人”のね」

「! 本当か!? それなら今すぐ、エドガー兄さんの所に行こう!」



 シリルは「はいはい」と言いながら、城の中に入っていく。

 私達はその背中に続いてぞろぞろと、エドガー様の元に向かうべく、城の中の魔法実験室に向かうのだった。








 ☆








「今日はお部屋にいらっしゃったんですね」

 私がそう言えば、「あぁ、私も調べ物をしていたからね」と頷いて、本の山を指差す。



「……凄い本の数……これ全て、読まれたのですか?」

「まあ、大半はね。 私は元々、本を読むのが好きだし、多分普通の人よりは読むスピードも速いと思うよ。

 だから、苦ではないかな」

 その言葉に、私とミリアさんは驚いてしまう。



 ただ、リアムは「分かります」と頷き、ローレンスとシリルは苦笑いをしていた。



「エドガー兄さんは本当に読むスピードも数も、凄まじいからね」

 ローレンスの言葉に続いて、私もリアムに向けて口を開く。

「リアムは森に住んでいる間、確か本を読んだりして過ごしていた、って言ってたものね」

 それにリアムが頷いたのを見て、エドガー王子の目が輝く。



「それは話が合いそうだ。 今度本についてゆっくり語り合いたいね」

「そ、それは光栄です」



 エドガー王子に押されるようにリアムが頷くと、「はいはい、本の話はそこまでにして」とローレンスが軽く手を叩き、いつものように壁を押して応接室に入っていく。



 私達も部屋に入りながらめいめいに座ると、エドガー王子は「さて」と話を切り出した。



「皆それぞれ、収穫があったのかな?」

「はい、まず私からお話ししてもよろしいですか?」

「どうぞ」





 エドガー王子に許可を得てから、まずは私から話し始めたのだった。



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