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ドジっ子な悪役令嬢は、今日も色々と空回り中。  作者: 心音瑠璃
第2章 切なる願いを魔法に秘め
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番外編SS-その頃、彼等は②

仮面舞踏会の日をミリアの誕生日として、生誕祭として書きました。

ローレンスとミリアの恋模様を見届けて頂けたら、と思います。

「はい、ミリア。 疲れたでしょう?」

 顔を上げれば、ローレンス様は微笑みを浮かべて、私にジュースの入ったグラスを渡してくれた。



「あ、有難うございます。 お恥ずかしながら、少し、疲れてしまいました……」

 仮面舞踏会には、沢山の家柄の方々がやってくる。

 生徒だけでなく、ちょっとした夜会のようなものになるため、来賓の方々も多い。

 去年は、挨拶もそこまで多くはなかったのだけど、今年は別。



(……私は光栄なことに、ローレンス様と婚約者という関係になったから……)



 ちらりとローレンス様を見上げれば、会場のテラスから見える星空を背景に、ローレンス様の金色の髪がサラサラとたなびく。



  (……本当に、まだ夢のようだわ)




 こんな素敵な方の、お側に居られるなんて……。



(……それなのに私ったら、少し挨拶しただけで疲れてしまうなんて……)

 私は会場の壇上で沢山の方々に笑顔で挨拶をするクラリス様を見て、ため息をつく。



「? どうしたの、ミリア嬢」

 そのため息を聞いて、ローレンス様が首を傾げながら私に聞いてきた。

「あっ……ごめんなさい。 その……私、まだ挨拶に慣れていなくて、どうしたらクラリス様のようになれるかなって……」




 その言葉に、ローレンスは私の視線の先にいたクラリス様を見て苦笑する。



「あれでも大分、疲れた顔をしているよ。 傍目では分からないかもしれないけれど。

 ……まあ、俺達は幼い頃から嫌という程大人に囲まれて過ごしてるからね。 慣れもあるんだろうけど、そんな慣れは本来不必要だから、ミリアは自然体で良いんだよ。 十分、良い子だし」

「っ……」




 “自然体でいい”。




 その言葉に、私は嬉しくなる。

 私は私らしくいて良いんだよ、そういう風に私には聞こえた。





「……有難うございます、ローレンス様」

「? ……ふふ、何か吹っ切れたようで何より」

 ローレンス様はそう言って笑った後、私を見つめて言う。

 その顔が真剣なことに、私は心臓が高鳴る。




「ミリア、誕生日おめでとう」

「えっ……!? ど、どうしてそれを……」




 そう、今日は仮面舞踏会の日でもあるけれど、私の誕生日なのだ。

 皆忙しそうで、言うこともないと思っていたのだけど、まさかローレンス様に祝って頂けるとは思ってもいなかった。

 私の言葉に、ローレンス様は軽く口を尖らせて言う。



「どうして何も言ってくれないんだ。 俺は君の婚約者だっていうのに。

 ……まあ随分と前から知っていたんだけどね。 君の口から誕生日とか、そういう言葉も出ないだろうから、前もって調べさせてもらったんだ」

「えっ……」



 私はその言葉に驚いていると、ローレンス様は「まあ、そういうところも含めて、君が好きなんだけど」とさらっと言って笑った。



「!?」

 その言葉に顔が赤くなるのは不可抗力だと思う。



 ローレンス様はふふっと笑うと、私に向かって「はい、これ」と小さな箱を開けながら渡した。

 それを見て、私は「あ!」と思わず大きな声を出してしまう。

 そして、震える声で、まさか、と呟いた。



「……婚約、指輪……?」

「そう。 ……あの時バタバタとして渡せなかったから、これを機に渡そう!と思って」

「い、良いんですか!?」



 私は食い気味にそうローレンス様に身を乗り出せば、ローレンス様は「そ、そんなに嬉しいの?」と驚いたような顔をする。



「はい! それはもう……! 世界一の幸せ者です!

 ローレンス様の、婚約者の証ですよ!? 嬉しいです!!」

「……ふふっ、そんなに喜んでくれてたら、迷った甲斐があったよ。 どうしようか、どのタイミングで渡そうか、ずっと悩んでいたからね」

「!」




 私は驚いてローレンス様を見上げれば、「あ、こんなこと言ったら君にカッコ悪いって思われるかな」なんておどけたように言うものだから、私は首を横に振る。



「そんなわけありません。 ……嬉しいです。 私のために、こんな素敵なものを、下さるなんて……」




 私は指輪を自分ではめようと手に取ると、ローレンス様は慌てて「俺が付けるよ」と言うと、私から指輪を取る。

 その言葉にドキドキとしながらも、指を差し出すと、その手を取ってローレンス様はそっと、薬指にはめてくれた。



「……わぁ……」

 キラキラと、輝く宝石。

 私はうっとりとしながら見つめていると、不意にローレンス様が私の耳に顔を近づけた。




「えっ……!?っ」

 突然耳を触られ、くすぐったくて目を瞑ると、ローレンス様は「あ、ごめん」と何かを耳につけた後、パッと退いた。



「……ピアス?」

 私は耳についている物を触ると、そうローレンス様に聞いた。

 ローレンス様は笑って頷くと、「これは、クラリスとアルからの贈り物だよ」と言った。




「まあ! お二人からの!? ……嬉しいです!」

 ピアスをよく見ようと外そうとしたら、ローレンス様は慌ててそれを制する。

「ちょっと待って、少し試してから外して」

「? 試す?」



 私が首を傾げれば、ローレンス様が自分の耳元に触れる。 ……よく見れば、その耳には、翡翠色の石のついたピアスが付けられていて。

 ……ひょっとして、私と同じ瞳の色!? と思ったのも束の間、不意にカチッと時計の針のような音がしたと思ったら、耳に声が流れてきた。




『聞こえる? ミリア』

「ひゃっ!? ……ろ、ローレンス様!?」

『ふふっ、その反応は、聞こえているみたいだね』



 驚いてローレンス様を見れば、満足そうに頷くローレンス様の姿がある。




「……こ、これは一体……」

「通信用のピアスなんだって。 クラリスもアルも、これを使って話したりしているらしい。

 ……凄いよね、これ。 俺も欲しかったから、貰った時凄く嬉しかった。 ……しかもこれ」

 そう切ったローレンス様は、再度ピアスに触れると言った。



『俺とミリア、二人専用なんだって』

「〜〜〜!? ろ、ローレンス様、耳がくすぐったいです……」

 私は恥ずかしくなってそう言えば、「ふふ、わざとだもん」と言うローレンス様。

 悪戯っ子のように言うローレンス様に、私は可愛い、と感じつつその破壊力も凄くて、何も言えなくなってしまう。



「じゃあ今度は、ミリアがやってみて」

 自分の魔法をピアスに流すようにイメージしてやってごらん、そう言われて、私は言われた通りやってみることにする。



(……で、でも、何を言えばいいのかな……)




 何か話さなければ通じないわけで。

 私は少し考えた後、ピアスに軽く触れて魔力を流し込むイメージをすると、言葉を心の中で呟く。




『大好きなローレンス様と一緒に居られるだけでなく、素敵な贈り物まで下さって、今日は、今までで一番幸せな誕生日です。 有難うございます、ローレンス様』

「……っ、ふふ、ミリアは本当、俺を嬉しくさせるようなことばかり言うよね。 敵わないな」

「!? ご、ごめんなさい、私……何か悪いこと言ってしまいましたか?」




 私がそう聞けば、困ったように笑うローレンス様。

「……そうだね、ミリアはある意味悪い子かもしれないね」

「え、えぇ! ご、ごめんなさい、あの、私……っ!?」



 私の言葉は、ローレンス様の唇に遮られる。

 ……ローレンス様が、私にキスをしてきたから。




「!? え、え?」

 一瞬のことで、私は驚いて目を白黒させていると、ローレンス様はははっと笑った。




「ごめん、混乱させたね。 ……悪い子っていうのは、本当に悪いっていう意味ではなくて、ただ俺を喜ばせることを無自覚で言うミリアが可愛い、っていう意味だから、まああまり考えなくていいよ」

「!!」



 再度私は恥ずかしさのあまり言葉を失って、口をパクパクさせていると、ローレンス様は笑って言った。




「改めて、誕生日おめでとう、ミリア。

 ……君に出会えて、本当に良かった」




 生まれてきてくれて有難う、そう言ってローレンス様はわたしに顔を近づけると、今度は長く、唇を重ねたのだった―――















その日は、素敵な、夢のような一日だった。



誕生日を、大好きなローレンス様と過ごし、素敵な贈り物までくれたクラリス様とアルベルト様には感謝しかない。




……後日送られてきたクラリス様からのお手紙には、「ローレンスと末長くお幸せに」と書かれていて、思わず赤面してしまったけれど。




右手の薬指で光る婚約指輪を見ながら、今日もローレンス様とピアスを介してする他愛もない会話、だけど、当たり前でないこの日常が、どんなにかけがえのないものなのか。





私は17歳の誕生日を迎えて、改めて、世界で一番の幸せ者だと、心の底からそう思ったのだった。









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