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ドジっ子な悪役令嬢は、今日も色々と空回り中。  作者: 心音瑠璃
第2章 切なる願いを魔法に秘め
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19.夢の中の過去は

*少しだけシリアスめです。

「……ラリス様、クラリス様!」

「ん……?」




 目を開けると、視界に飛び込んできたのはミリアさんの顔で。



 私はハッと一気に目が冴えると、辺りを見回した。



 牢屋か何かに入れられていると思ったら、何故か普通の部屋の室内にいた。

 そして、最近寒くなってきたこともあってか、部屋の中では暖炉がパチパチと燃えていた。

(……え、これ、リアム君がやったの……?)




 違和感があるといえば、魔力封じがされているのか魔法が使えないことと、足枷と手錠が重いことくらいで。




「……驚いたわ、もう少し酷い環境にいるのかと」

「えぇ、私もびっくりしました。

 まさか、クラリス様まで連れて来られるなんて……」

 見たところ、ミリアさんに怪我や魔法らしきものはかかっていないようで、ホッとしていると、カツンカツンと足音がした。




 ハッとしてその足音の方を見れば、連れて来られた時と同じように薄く不気味に笑う、リアム君の姿で。

 私はミリアさんを背に庇うと、リアム君はははっと笑った。



「うん、クラリスは流石、僕が見込んだだけの姫様だね。 立派だよ」

「貴方に褒められたって、嬉しくなんかないわ。 それより、ちゃんと無事にあの子達を帰してくれたんでしょうね?」

「あの子たち? ……あぁ、君の侍女のこと?

 勿論、約束は約束だからね。 ちゃんと城に転移魔法で送ってあげたよ。 感謝して欲しいくらいだ」

 そう言ってのけるリアム君に、私は驚いて目を見開く。




「貴方、転移魔法も使えるの……?」

「んー、半分正解で、半分不正解かな。

 僕が契約しているのは、“黒魔法”だからね」

「契約……? それに、黒魔法って……っ、まさか! 貴方、自ら悪魔と契約しているっていうの!?」

 私の叫びにミリアさんも驚いて目を見開く。

 そんな私達を見てリアム君は「ふふっ、ご名答」と拍手をする。





「そうだよ。 僕は自ら体の中にいた悪魔と契約した。

 ……全ては、復讐のため」

「復、讐……?」

 私の呟きに、「忘れたとは言わせないよ」と言うと、パチンッと指を鳴らす。





 すると、私達の体が浮かび上がる。

 悲鳴をあげるミリアさんに寄り添うようにすると、リアム君は「安心しなよ。 過去に遡ってるだけだから」と言った。




「!? 過去!? 時の魔法も使えるの!?」

「……はぁ、だから何度も言わせないでくれる?

 黒魔法だから、何でも使えるの」





 そう呆れたように言うリアム君の視線を辿れば、確かに、時がグルグルと遡っている感覚。

 ……だけど、様子がおかしい。

(……ローレンスとは違って、白黒だわ)

 ローレンスの時の魔法では映る世界は過去そのもの。 ただ、リアム君が今遡っている“過去”の世界は、全てモノクロで。





 私は黙って見つめていると、あるところで時が止まって、ゆっくりと動き出した。






 その光景を見て、私はあっと声を上げる。





「……これは、魔の森……?」







 魔の森。

 それは、普段立ち入り禁止となっている、ランドル王国とディズリー王国の間にある深い森のこと。

 一回立ち入ると、二度と出て来られなくなる、とそう教えられた。





「……僕達は、“悪魔憑き”と呼ばれ、黒髪は忌み嫌われた。 幼い僕は、その意味が分からず、ただ、母親に手を引かれて逃げるように連れて行かれた場所。

 それが、“魔の森”だった」

「! ……貴方は、魔の森に住んでいるの?」

「そうだよ。 それが唯一の、“悪魔憑き”の人々の住処だったから」

 唯一……悪魔憑きと呼ばれた彼等は、生まれてきた黒髪を嘆きながら、魔の森に住んでいたということか。




「そうして僕と母親がたどり着いた魔の森で、多くの悪魔憑きと出会った。

 楽しかったんだ。 森の中はまるで、天国のようだった」

 リアム君は森を上から見上げ、楽しそうに笑う。 ところが、そこからすっと笑みを消した。


 

「……でも、8年前のある日。

 僕の母親も周りの悪魔憑きも皆、病に倒れた。

 流行りの伝染病だったらしい。

 街では薬が飛び交っていたというのに、お金が無くて黒髪だった僕等は、為す術もなく、皆苦しみながら死んでいった」

「そんな……」



 黒髪故に、薬を買うことも買うお金もなかったなんて……。



「……憎かった。 王族や、王都の住人達が。

 迫害してきた奴らが、のさぼって生きるこの世界に、吐き気を覚えた。

 ……それだけじゃないさ。 クラリス、君も僕の生活を全て、破壊した」

「え……っ!?」





 白黒の世界が、切り替わる。





 すると、そこに現れたのは幼い私とアルで。






「っ、こ、これは……」






 手が震えだす。





 ……そう、これは、私が間違いなく、夢で見ていた“過去”の記憶で。





 私は幼いアルと私を凝視する。






 そのうちに頭がガンガンとしてきて、あの時の光景と声が、同時に蘇ってきた。








 ☆








 私が8歳、アルが9歳の時のこと。



 アルと私は、いつものようにランドル国内で遊んでいた。




「アル〜!! 見てみて! このお花、とっても綺麗よ!!」

「ふふ、本当だ。 貸して、付けてあげる」

 アルは私が持っていたお花を一輪取ると、私の耳にかけた。

 そして、「ふふ、可愛い。 似合ってるよ、クラリス」と大好きな笑顔を浮かべて言ってくれるアル。



「有難う! アル!」

 私がそう言えば、アルは「じゃあ僕も、綺麗なお花を探してみるね」とどんどんお花畑の奥を歩いていく。

 そんなアルに負けじと、私もお花を探すのに夢中になっていると、ふとアルの姿が見えないこと気がつく。




「……アル?」




 私は不安になってアルを探していると、視線の先に、アルが横たわっている。





「! アル!!」




 駆け寄ろうとすれば、アルの周りにフードを目深に被っている大人の男の人達がいることに気がつく。

 幼いながらもそれが人攫いだ、と気付く。

 どうしよう、と一瞬ためらいながらも、駆け寄ろうとすれば、アルが「来ちゃダメ!!」と私に気が付いて制す。





 すると、そのアルの首を男の人が叩いて、アルはぐったりと首を下げた。








「っ、アル!! ……よくも!! アルに、ひどいことを!!」

 それを見た私は怒りと同時に、何かが体の中を駆け巡る感覚を覚える。








 それが魔法だと気が付いたと同時に、私の体の芯から放たれた火が、まるで火柱のように、私の周りを囲って、やがて私の姿が周りから見えないほどに、私の体を覆い尽くした。

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