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ドジっ子な悪役令嬢は、今日も色々と空回り中。  作者: 心音瑠璃
第1章 恋の魔法にかけられて
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5.ヒロインと対面

 ミリアさんが来てから1週間が経っていた。

 そこで初めて、ゲーム上ではヒロインであるミリアさんと、一対一で対面することになる。

 ……そもそも、まだ話もしたことがない。 ……同じクラスにいるのに。

 まあそのわけは、例の“噂”……アルの婚約者である私を差し置いて、ミリアさんが親しげに歩いてる、というあらぬ噂が流れていることもあって、迂闊に近付けないだけなのだけれど。





 長い廊下を、少し重い足取りで歩いていると、すぐに目的の人物に遭遇することになった。

 ミリアさんの隣には、ローレンス。 その少し後ろにはアルベルト。

 ……確かに、これは目立ってもしょうがない。





 どう声をかけようか思案していると、アルベルトがいち早く、私の名を呼んでこちらに駆け寄ってきた。


「クラリス!」

「まあ、アルベルト様。 ……駄目よ、廊下を走っては」

「ごめん、つい。 ……何か、アルベルト様って呼ばれるの久しぶりな気がする。 少し寂しいな」

「っ、な、何を言ってるの。 学園内ではあまり、愛称で呼ばない約束をしたでしょう」

「そういえばそうだったね」



 そう言って、まるで子犬のような表情をする婚約者に、私は少し苦笑しながら微笑む。

 すると、後ろで咳払いが聞こえた。



「ちょっとお二人さん。 俺達置いてけぼりなんだけど」

「ごめんなさい、ローレンス」



 謝る私に反して、ローレンスを睨むアル。

 何故事あるごとにアルはローレンスを睨むのか、首を傾げていると、ローレンスの隣にいたミリアさんの翠色の瞳と目が合って、ふわっと困ったように微笑まれた。




(っ、凄い可愛い……)





 さすが、乙女ゲームのヒロイン。 笑顔の可愛さが半端ない。 容姿も可愛いし、言うことはない。

 そんな彼女を見て、私は少しフリーズしてしまったけど、慌ててまだローレンスを睨んでいるアルの袖を軽く引っ張る。





「アルベルト様、ミリアさんが困っていらっしゃるわ。 ローレンス様のことを睨むのは後でにしましょう」

「え、クラリスまでアルの味方……それもそうか」



 と何故か納得したように頷くローレンス。

 ……よく分からないのでこの二人は放置しておくとして。

 私はアルの横を通り過ぎると、ミリアさんに歩み寄って正面に立って言った。




「ミリアさん、初めまして。 同じクラスなのに、話しかけることができずに、名乗るのが遅くなってごめんなさいね。

 改めて、私はクラリス・ランドル。 一応ランドルとはつくけど、堅苦しいのは好きではないから、仲良くしてくれると嬉しいわ。 宜しくね」



 そう言って微笑んで淑女の礼を取りながら、ハッとする。



(つい、悪意を感じない……というより良い子そうだったから言ってしまったけど、なるべくヒロインと関わらないように、ってルナから言われていたのに、自分から仲良く〜なんて言っちゃったわ……!)



 内心焦りながらも、悟られないように淑女の仮面をつけながら、にこりと微笑む私に、ミリアさんは慌てて淑女の礼をとると、前に自己紹介をした時と同じく、鈴の鳴るような声を少し震わせながら言った。




「ミリア・オルセンと申します。 アルベルト様と同じ、シュワード王国から参りました。 お、王家でいらっしゃるクラリス様に失礼のないよう努めます。 こちらこそ、宜しくお願い致します……!」

 そう言って、淑女の礼より深々と頭を下げる彼女に、私は逆に驚いてしまう。




 そして確信する。 あぁ、この子はただの良い子なんだと。



「ミリアさん、お顔をお上げになって。 私は一応、この国の王女ではあるけれど、堅苦しいのは嫌いだからそんなに恐縮なさらないで。 それより、仲良くしてくれる方が、断然嬉しいわ」

(あれ、これって悪役令嬢になってない……?)

 ……まあ、いいか。




 何故か3人は顔を見合わせると、ミリアさんは驚いたような表情に、アルとローレンスは肩を震わせて笑っている。




「ちょっと、何か私おかしなことを言ったかしら?」

 アルは私の少し怒った口調に気付いて、慌てて弁解する。

「そうじゃなくて、やっぱりクラリスらしいなって。 ……ほら、僕の言った通りでしょう? ミリア嬢」

「そ、そうですね、アルベルト様」

「……ちょっとアル、何を吹き込んだのよ」




 聞き捨てならないアルの言葉に頷いたミリアさんを見て、納得がいかなかった私は、思わず愛称で呼んで、少し頰を膨らませて怒ってみせた。

 そんな私を見て、「内緒」とイタズラのように私に微笑んで、私に聞こえるくらい小さな声で「可愛い」と言った。





(!?)





 そんなことを言われるとは思っていなかったのと、何とも言えない甘い表情をするアルに対して、顔が赤くなるのは不可抗力。

  ……だってアルはイケメンだから。 しょうがない、わよね……?

 私は赤くなる顔を抑えるように頭を少し振ると、ミリアさんに向かって微笑む。




「ま、まあそれはいいとして。 大事な用を忘れていたわ。 ミリア様、放課後ってお時間がおありかしら? 少し噴水広場ででも、お話が出来ればと思って」

「私に用事ですか!? わ、私は全然大丈夫です!! 噴水広場ですね! 伺います!」

「有難う。 それでは、又後で。

 ……アルベルト様、後で何をミリア様に言ったのか、教えて頂きますわね」






 そう言って、何でミリア嬢に用事?という顔をしているアルに、これ以上聞かれないよう、そう締めくくって、私は後ろの方で控えていたルナを伴ってその場を後にした。

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