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ドジっ子な悪役令嬢は、今日も色々と空回り中。  作者: 心音瑠璃
第2章 切なる願いを魔法に秘め
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17.決意、そして禁書探し

「君達の言う悪魔討伐というのは、本当は“悪魔祓い”と言われている。

 ……その前に、“悪魔憑き”と“悪魔”の関係を話しておこう」



 その後紡がれて行った言葉は、私達には衝撃的だった。




 長い話なので簡単に纏めると、“悪魔憑き”は人間である。

 ただ、普通の人間とは少し違う。 それは何故か。

 答えは、母親のお腹の中から悪魔が取り憑くことで、“黒髪”になるから。



 その順序としては、こういうことになる。



 悪魔は人間が住む世界を滅ぼし、自分達の支配下に置くために人間に取り憑く。

 そのために悪魔達は、取り憑く人間の“魂の器”を探し、より憎悪を膨らませることのできる魂を見極め、母親のお腹にいる赤子を狙って取り憑く。

 そして、取り憑かれた人間は名前通り、“悪魔憑き”となり、“黒髪”の赤ん坊として生まれる。

 こうして、“悪魔憑き”と呼ばれる黒髪の人々が出てくる、というわけだ。



「なんて酷いこと……」

 私はアルと繋いでいる手に自然と力が入る。

 私が呟けば、「いや、それよりもっと酷いことがあるんだ」とエドガー王子は続ける。



「その人間が成長して行く中で、“魂の器”が足りないと分かると、新しい器を探しに行こうとする。

 ……そのために取り憑いた悪魔は何をするか。

 その人間を、呪い殺すのさ」

「……! なんてこと……」




 ただ取り憑くだけでなく、使えなくなったらあっさり殺すというのか。 自分達の私利私欲のためだけに。



「そ、そんなことって……」

 ミリアさんが絶句してそう言うと、ローレンスはそっとミリアさんの肩に手を添えて、「事実なんだ」と首を振った。



 私は拳を握って「そんなのおかしいわよ」と呟いた。





「じゃあ悪魔憑きと呼ばれた黒髪の彼らに、選ぶ手段はないと言うの?

 ……許せないわ、そんなの」

 私の体の中で熱いものがぐるぐると込み上げてくる。

 それが魔法だと気が付いて慌てて引っ込めようとすると、その前にアルがふっと繋いでいた手からそっと水の魔力を、いつかの時のように流し込んでくれた。



「……有難う」

 私はそっとお礼を言えば、アルは気遣わしげに私を見やる。

 エドガー王子はそんな私を見てから、「そのために、“悪魔祓い”があるんだ」と言った。




「彼らを救う方法は、残念ながらその一つしかない。

 その“悪魔祓い”に必要なのは、君達の魔力だ」

 そう私とミリアさん、それからアルを見てエドガー王子は静かに言ってのける。



「……まずは浄化の魔法。 これは悪魔という穢れから解放するために必要不可欠な魔法だ」

 ミリアさんは事前に説明されていたのか、特に驚いた様子もなく静かに頷く。

 そして今度は、エドガー王子は私とアルを見ていう。



「クラリス姫は、火の魔法を司る者として悪魔を退治することができる。

 ……これは、私にもまだよく分かっていないことなんだ。 ただ、こう記載はされていた。

 “強く願えば願うほど、魔力が高ければ高いほど、能力は高い”と」

「悪魔を、退治する魔法……エドガー王子が私を呼んだのは、魔力の能力値が火の国の者の中で高いと、そうお考えだということですか?」



 私がそう聞けば、エドガー王子は頷く。



「正確には、火の国の者の中でも高い、だけじゃ君はないんだ。 ……そう思う理由は、君の過去にある。

 私が忘却させた、君自身もそれを望んだ過去の中に」

 その言葉に何故か、今度はアルの手に力がこもったのが分かった。 そしてその顔を見れば、顔色が悪い。

(……アル……)




「まだ定かではないけど、十中八九、君には特別な“力”があると私は思う。

 そのことについては……君の国の“禁書”にその答えが、書かれているはずなんだ」

「! 私の国の、禁書……?」

 私はゴクリと唾を飲む。

(私の国の禁書の存在なんて、聞いたことがないわ)



「そう。 ……まあ、この禁書のことは、是が非でも元国王様、それから現国王様である君の兄のニコラス・ランドル王が君には見せないように隠しているんだろう」

「お父様とお兄様が……?」

 要するに、お父様とお兄様は、私の計り知れない魔力に気が付いているということ。




「二人を説得するのには、相当容易なことではないと思う。

 ……君の魔力を忘れさせるように私に直接頼んで来たのも、あの二人だからね。

 決めるのは、君自身だ。 火を司る者なら、ある程度力があれば、悪魔祓いは可能だというし。

 ……ただ、僕は、」

 エドガー王子は一度そう切ってから、私の方に身を乗り出すように膝に肘をついて言った。



「君には、本来の悪魔祓い……“悪魔を封じること”こととは違う、別の結末を導くことができると、密かに思っている」

「! ……私が、別の結末を導く……?」

 私は目を見開くと、エドガー王子はふっと笑って言った。

「……これはただの私の憶測だから、受け流してくれていい。

 ただ、そんな予感がする。 ね、アルベルト?」

 アルはそんなエドガー王子を見ると、私に不意に後ろから抱きつきながら不躾にもエドガー王子を睨む。



「……クラリスに、余計な圧力はかけないでくれないか」

「ちょっとアル、私は大丈夫よ」

 少し恥ずかしくなった私は、アルの腕を退けようとすると、エドガー王子はクスクスと笑い出す。



「ふふふ、アルベルトは相変わらずだね。

 それに、君の悪魔祓い上での役目である、“火を司る者を守る盾”になるのは、もう根っから、とも言えるね」

「アルが、私を守る盾……?」

 私は驚いてアルの腕を解きかけていた手を止め、アルの顔を凝視する。

 驚く私に、アルは「そうだよ」と笑って言う。



「シュワードの血を引き、水の力を司る者は、火の国の者を手助けできる。

 そう僕の城の禁書にも書かれていた」

「! アルはもう、禁書を見つけているのね」

「うん。

 まあ僕の場合は、小さい頃から王子教育の一環として、禁書も全て頭に叩き込んでるよ。

 これでも第一王子だから」



 何とでもない風にそう言って笑うアルは、本当に頼もしくて、次期王に相応しい人だなと改めて思った私は、アルに「頼りにしているわ」と言って微笑んでから、エドガー王子に向き直る。




 私は息を吐くと、エドガー王子の目を見て言った。

「……私の国の禁書を、探し出せば良いのですよね?」

「うん。 そうすれば、君の能力も分かるはずだ」

 エドガー王子がしっかりと頷いたのを見て、私は真っ直ぐと目を見て言う。




「私、悪魔祓いやります。

 アルがいてくれるなら、どんな悪魔でも祓ってみせます。

 ……この力が何なのかも、過去のこともちゃんと受け止めたい。

 だから私は、必ず禁書を見つけ出して、悪魔祓いの力になります」

「クラリス……」

 アルの瞳が心配そうに揺れる。

 私はアルの方を向くと、「大丈夫よ」と笑顔で言う。



「アルが盾なら、私は剣になる。

 ……アルという盾に頼らずに、剣になって一差しで悪魔を退治してやるわ」

 そう笑って言うと、アルは私を抱き締める。




「えっ、え!?」

 驚いている私に、アルは小刻みに肩を震わせながら「少し、このままでいて」とだけ言う。



 私がどうしよう、と目を彷徨わせると、エドガー王子もローレンスも、シリルも、何故か何も言わず、心なしか暗い顔をしていた。

 ミリアさんも何も言わずに、口を閉じている。




(……私の過去のことを考えてるのかな)




 皆を、こんな顔にさせてしまっている私の過去。

 一体、何があったというのか。

 うっすらと思い出しただけでは分からない事実が、まだまだ隠されていると言うことか。




 私はアルの紺色の髪をそっと撫でながら、絶対に禁書を見つけ出そうと、そう心に決めたのだった。





 ☆






 その日から、ランドル国について書かれている“禁書探し”は始まった。




 閲覧禁止の国中の図書館、城の中の本棚全てを歩いて探し回ったが、2週間が経った今でも手掛かりすら見つからない。




「……どうしよう。 ミリアさんはとっくに、見つけているというのに……」

ここまで来ると、焦りが前に出る。

「……姫様、やはりここは、国王様にお話されてみてはいかがでしょうか。

 前国王様にお話する前に、お兄様であるニコラス様にお話された方がよろしいかと」

 一緒に探してくれているルナも、そう私に言った。




「……そうね、これではきりがないもの。

 それに、これだけ探してもないということは、お兄様達が管理しているのかもしれない。

 直接言いに行きましょう」

 そう言って図書館を出ようとした、その時。




「……何をしてるんだ、クラリス」

「! ……お兄様」




 ドアに(もた)れて此方を見ていたのは、ニコラスお兄様本人だった。




 怖い目で此方を見ているお兄様に、隣にいたルナは震え上がる。

 私は意を決してルナをそっと背に庇いながら、お兄様の前に立つ。

 そして息を吸うと、一言、なるべく毅然とした態度で、目を真っ直ぐと見て言った。







「お兄様に、お伺いしたいことがございます」




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