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ドジっ子な悪役令嬢は、今日も色々と空回り中。  作者: 心音瑠璃
第2章 切なる願いを魔法に秘め
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15.特別な日

 その日は、明け方頃目が覚めた。



 うっすらと目を開ければ、誰か女の人が立っている。



(……えっ、幽霊!?)



 私は危うく悲鳴をあげそうになったけど、女の人がとても美人で、何か辛そうな表情をしているのを見て、私は口を噤んだ。

 すると、その女の人は、必死に何かを伝えようと口を開いたり閉じたりしていて。



 だけど、私の耳には届いてこない。




 暗闇でも分かる、白色の髪。




 瞳の色は暗くてよく見えないけど、私に伝わらないことが分かると悲しそうに、私を見つめる。



 やがてその人は、ゆらゆらと揺れると……机の引き出しに吸い込まれるように消えた。




(……えっ!?)




 驚いた私は慌ててベッドから飛び起きると、机の引き出しを開ける。




 ……するとそこには、少しだけ淡い光を放つように輝く、白いダイヤのブレスレットが入っていた。




(何、これ……)





 身に覚えのないブレスレット。




 私はとりあえず、朝起きたらルナに聞いてみようと、そう決めたのだった。







 ☆









「クラリス様、おはようございます。

 今日は随分とお早いお目覚めですね」

 太陽の光が射し始めた頃、ルナが私の部屋に姿を現した。




「ルナ、おはよう。 突然なんだけれど、このブレスレット、何処かで見たことある?」

「ブレスレット? ……ん? 確か、それは、昔姫様が持ち帰ってきたものですよ。

 人から貰ったか、拾ってきたかは忘れましたが、嬉しそうに付けて持ってきたのは何となく覚えています」

「……そう」

 これも、無くした記憶なのかしら……?

(拾ってきた? 貰った? ……んー……さっきの女の人の持ち物なのかしら)





 考え込む私に、最近は慣れてきたルナが、私の髪の毛を整えながらそういえば、と口を開く。

「クラリス様、シリル様にお会いしたらお礼を言って頂けますか。

 シリル様、またかって、半ば怒りながらここまで保健室から移動魔法で送って下さったのですよ」

「……まあ、今度はシリルにまで迷惑をかけてしまったのね……」




 保健室でアルと仲直りした後の記憶がない。

 あの後私、また寝落ちしてしまったのね……。





「分かったわ。 シリルには私からお礼を言っておくわ。

 後、何かお礼の品もあるといいわね。 用意してくれる?」

「はい、畏まりました!」

 ルナは頷くと、近くにいた他のメイドに早速、お礼の品の手配を頼む。




「あ、後ですね。 アルベルト様から伝言を承りました。

『今日の放課後、魔法実験室に来て』だそうです」

 魔法実験室、と聞いて私はすぐにピンと来る。

(……私の魔法と、悪魔討伐のことについてお話するつもりなのね)




「分かったわ。 伝言有難う。

 ……あ、そういえば、昨日の仮面舞踏会は楽しめたかしら?」

 私はルナにそう尋ねると、ルナの肩がビクッと震えた、と思ったら急に慌てだした。

「! え、えぇ、凄く!! 楽しかったです!!」

「? ……ふふ、顔が赤いわよ?

 クレイグと何か進展があったのかしら?」





 私はルナの反応を見てそういえば、分かりやすく動揺するルナ。

 ふふ、と笑いながら私は「楽しめたようで何よりだわ」と言うと、ルナは朗らかに笑う。





「今年もとても楽しかった、と評判でしたよ。

 クラリス様が頑張った分、後片付けは自分たちも、と他の生徒の皆さんも手伝って下さるそうで、クラリス様の人気はグンとまたアップしました!」

「そ、そうなのね。 嬉しいけれど、なんだか恥ずかしいわ」



 私がそう言うと、ルナは「いえ、流石クラリス様です!」と褒めてくれる。

「ふふ、有難う、ルナ。

 貴女が楽しめたみたいで、忙しく動き回った甲斐があったわ。 今度、何があったか聞かせてね?」

「っ! そ、それは気が向いたら、で……」




 口ごもるルナを見て私はクスクスと笑うと、「さて、学校へ行きましょうか」と椅子から立ち上がるのだった。







 ☆






 馬車から降りると、トンッと誰かにぶつかる。

 そして、抱き締められてびっくりして思わず振り切ろうとすると、その声の主が焦ったように「僕だよ! 僕!!」と両手を上げて言った。




「……アルだったの。 驚いたわ。

 新手の痴漢かと思った」

「ち、痴漢!? 確かにいきなりは、びっくりしたよね、少し驚かせてみようと思っただけなんだけど……」

 アルはしょげた子犬のようにシュンッとする。

(……ふふ、いつものアルだ)




 昨日話したことで、アルがいつも通りに戻ってくれた。

 私は嬉しくて、アルの腕に自分の腕を絡める。




「!? く、くくクラリス!? ここ学校だよ!? いいの!?」

「ふふ、今日は特別よ。 甘えたい気分なの。

 ……ダメ?」

 私はアルを恐る恐る見上げると、アルはカァッと顔を真っ赤にして、口元を手で抑えたかと思えば、「ぜ、全然! 大丈夫! むしろ嬉しい!!」と全力で言った。




 私はクスクスと笑いながら、「行きましょう」と言うと、二人で歩き出す。

(……たまにはこういうのもありよね。

 周囲の目に囲まれるのはちょっと照れ臭いけれど、今はアルとこうしていたい方が気持ちが優っているの)

 私は歩きながらキュッと少しだけ力を入れると、そういえば、とまだ心なしか顔が赤いアルに声をかける。




「今日の放課後、私の魔法の話をしてくれるの?」

「うん。 彼の方が、クラリスにもやっぱり話した方がいいって念を押してくれたんだ。

 後今日は、ミリア嬢も呼んでるから、二人で来た方が気が楽になると思うよ」

「ミリアさん? ……そうか、あの子の魔法は浄化の力も備わってるから……」

 私が呟くと、アルは驚いた顔をする。




「あれ? よく知ってるね。 そう、ミリア嬢には治癒魔法と同時に浄化の魔法も使えるんだ。

 その浄化の魔法が、悪魔討伐に必要不可欠らしくて、エド……いや、彼の方から呼ぶよう頼まれたんだ。

 ……それにしても、ミリア嬢が浄化の魔法を使えるようになったのは、確か最近のはずだけど、クラリスよく知ってるね?」

「! え、えぇ、まぁ……」




 私がミリアさんの浄化の魔法のことを知ってるのは、前世の乙女ゲームの続編をプレイしたからです、なんて言えるわけがない。

 ……しかもその魔法のこと、今思い出したばかりだし。




(……そういえば続編では、ミリア・オルセン(ヒロイン)の浄化の魔法を使って、どのエンドも悪魔討伐をしていたわ……)

 一人で魔力討伐を行ってはいなかった筈だから、アルやローレンスも関わっていることは絶対なんだろう。

(でも、そこにクラリスがいなかったのは確かで……)

 まあ不人気の悪役令嬢をそんな大事な場面では、出すわけがない。

(でもどうしてこの世界では、火を司る私も悪魔討伐に参加することになっているのかしら……?)




 ゲーム上では、私ではないランドル家の者が、悪魔討伐に加担していた、ということかしら……。




「クラリス? どうしたの、ぼーっとして」

「あ……えっと、私の火の魔力に、悪魔討伐に何の効果があるのか、気になっただけなの」

 私の魔力はどちらかというと破壊系。

 アルもそうだけど、その魔法が悪魔討伐に役立つのか。

 ずっと、浄化の魔法の力の方が、悪魔討伐にはふさわしい気がする。

(だって、火って悪魔に対して使えるか分からないじゃない)



  そんな私の言葉に、アルは少し真剣な表情をしたかと思うと、今度は私の腕を解いて、指を絡ませて手を握る。

 突然のことに驚いてみれば、アルは前を向いたまま口を開く。




「確かに、自分の魔法がって思うかもしれないけど、クラリスが知りたいと思うのも、僕がどうしようか迷っているのも、全てそこに関わってきていることだから。

 ……しかもそれは、彼の方が国家秘密とされているより遥かに、知る者が少ないことなんだ。 古い歴史に、関わっているからね」

「古い、歴史……?」

 悪魔討伐と私の魔力に関して、そんなに長い歴史があるというのか。




 アルは「これ以上は、またゆっくり放課後話すよ」と言って、絡めていた指を離す。





 いつの間にか、私の教室の前まで来ていたらしい。

(アル、送ってくれたのね)

 私は自分の教室のプレートを見ると、「有難う」とアルにお礼を言うと、アルは微笑みながら「また後で」と言って自分の教室に向かって行った。






 その後ろ姿を見ていると、何やら後ろで何か文句を言っているルナとクレイグの声が聞こえた気がしたけど、私の耳には届かなかった。


 

夢繋がりが多くてすみません><

忘れた過去を思い出していくキーとなっていますので、少し混乱するかもしれませんが、話の中でまとめていきたいと思いますので、把握宜しくお願い致します〜><

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