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ドジっ子な悪役令嬢は、今日も色々と空回り中。  作者: 心音瑠璃
第2章 切なる願いを魔法に秘め
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14.仮面舞踏会編 -すれ違いの行方-

 アルに連れて来られたのは保健室。



 私はベッドに降ろされ、横たえられたと思ったら、アルが凄い剣幕で怒り出した。

「〜〜〜何を考えてるんだ! お酒を飲むなんて! しかも一気飲みしただろう!? 何故確認しなかった!!」

「か、確認しなかったのは悪かったと思うけれど、わざとじゃないんだからそこまで怒鳴る必要ないじゃない!」

「クラリスはとにかくお酒が弱いんだから飲む前にジュースであることを確認してから飲みなさいと、前国王様から言われているだろう!?」



 ……何で私、保健室でアルと二人きりで怒られているんだろう。

 お酒? そんなの、どうでもいいわ。

「……アルが悪いわ」

「は?」

 相当怒っているのか、アルの口調が荒い。

「っ、アルが悪いのよ!」

「ちょ、クラリス……っ!?」




 私はアルをベッドに引っ張り込んで、私がアルに覆いかぶさるような体制になると、アルは驚いて目を丸くした。

「く、クラリス、落ち着い」

「落ち着いてなんかいられないわよ!

 ……何で、ここまで運んでくれたの?

 何ですぐ、私を褒めたりするの? 嫌いなら早くフればいいじゃない……!」

 私の言葉に、アルの眉間に皺が寄る。



「……嫌い? フる? 誰が、誰を?」

「はい? だから、アルが私を……!?」



 今度は視界が反転する。

 ……要するに、押し倒されているのは私で。

「……君には、僕がどれだけ好きなのか、全然伝わってないんだね」

「っ、だ、だって、アルはずっと、私のことを避けてたじゃない……!」

 私の口から言葉が止まらない。

 涙で視界がぼやけながら、必死に訴える。



「ピアスにいくら話しかけても返事は来ないし、学校で話しかけても余所余所しい。

 顔を合わせる回数も減るばかり……こんなの、嫌われてるとしか思えないじゃない!!」

 私は「アルのバカーーー!!」と大声で叫びながらぽかぽかとアルの胸を叩く。



 アルは暫くされるがままだったけど、やがてパシッと私の片手を握って「ごめん」と一言、小さく謝った。



「……それについては酔いが覚めた後に、理由もちゃんと含めて謝るから。 ……だけど、僕はクラリスのことを嫌いになんてならない。

 好き……いや、大好き、愛してる」

「!? 〜〜〜そ、そんなの証拠がないわよ!!」

 私は信じられなくて、ぼろぼろとまた泣き出す。

 アルは「えー……」と困ったような顔をした後、あぁ、と私の片手をアルの左胸に押し付けた。

 突然のことに驚いていると、アルが顔を少し赤くしながら、「ほら、聞こえるでしょ?」と言う。



「……アルの心臓、凄く速いわ」

「ちょ、直接言われると照れるんだけど……うん、そうだよ。 僕は、クラリスといるときはいつもこんな感じなんだよ」

「私、限定……?」

「ふふ、当たり前でしょ。

 何年……いや、十何年追いかけて来たんだよ? こうならない方がおかしいでしょ」

 十何年……アルは、そんなに私のことを思ってくれていたって事……?



「……っふふ、何それ。 おかしい」

 私はクスクスと笑うと、アルは「あーだめだ」と呟いて、私の目を手で抑えた。

「えっ、あ、アル? 何急に」

「もう寝て、今すぐ。 ……これ以上は持ちそうにない」

 アルの言葉に、私は首を傾げる。

「持ちそうにないってどういうこと?」

 アルは息を飲んだ、と思ったら、「こういうこと」と私の耳元で囁いて、唇を掠め取った。




「!?!?」

「……クラリスが可愛すぎてしんどい。

 いや、妖艶にしか見えない……特に、今は」

 私の目を抑えている手の隙間から覗く、アルの真っ赤な顔。

 私もクラクラッとお酒なのかアルなのか分からない酔いが、頭を巡る。

「……あ、アル、とりあえず、寝るわ……」

 私は微睡みの中でそう呟くと、アルは「うん、そうして」と言った。





 意識が朦朧とする中でアルの顔が私に近づいてきて、頰に柔らかい感触が伝わったところで、私の意識は途絶えた。








 ☆








「……?」




 右手が温かい。

 私はゆっくりと瞼を開くと……




「!?!?」

 アルの寝顔が、私の目の前にあった。

「あ、ああああアル!? 起きて起きて!!」

 こんなところ……アルと、一緒のベッドで寝ているところなんて誰かに見られたら、お父様に怒られ……




「姫様ぁぁ〜大丈夫です、か……」

「アルベルトさ……」

 私がゆっくりとその声の主を振り返れば、よく知っている二人の姿が廊下に立っていた。

 私はサァッと血の気が引きながら、「……こ、これには、事情が」と言いかけたところで、クレイグがズカズカと歩み寄って来て、隣で眠っているアルの頭を……殴った。




「い"!?!?」

 アルは頭を抑えながらバッと飛び起きる。

 何をするんだ、と言いかけて、私が隣にいるのを見てみるみるうちに顔が赤くなる。

「く、くくくクラリス!? ごめん!!!」

 土下座する勢いでアルが私に向かって謝る。

「え、ええ!? いや私は、大丈夫だけれど……頭、痛くない?」

「うん! 平気平気!! お陰で目が覚めた!!」

 私はうん、一先ず元気そうだ、と納得してから、ルナの方を見る。




「く、クククラリス様、何も、何もされてはおりませんか……!?」

「は!? さ、ささされてるとかなんとか、何を言ってるのかしら!?」

 私は顔を赤くしながら、アルを見、掛け布団を掴んで顔まで引き上げた。

「……アルベルト様」



 クレイグの低い声に、アルは「い、いいいや、僕はそんなことはしていない!!」と全力で否定している。

(……アル、私が手を離さなかったから、隣で寝てしまったんだわ)

 と未だにこっそりと繋がれている手を見ながら、私はふふっと笑う。

 私は掛け布団から顔を出すと、ルナとクレイグを見て言った。




「ごめんなさい、心配をかけて。

 大丈夫よ、アルは“紳士”だから。 ね、アル?」

「!? ……そ、そうだよ。 僕は、クラリスが大事だから、まだそんなことはしない!」

(まだって……そこは言わなくても良いのでは……)

 私はアルの慌てたような様子に、少し笑いながらルナとクレイグに向かって言う。



「ね? 私達は大丈夫だから、ルナとクレイグは戻って。 私はもう少し、アルとお話がしたいわ」




 時計を見れば、まだ寝てから1時間くらいしか経っていなかった。

 今日の夜会が終わるまでまだもう少し時間がある。




 ルナは困ったようにクレイグと顔を見合わせてから「分かりました」と言いつつ、アルにじとっと視線を向ける。

 視線を向けられたアルは、うっと少し言葉を詰まらせながらも、「二人で話がしたい」と言うと、二人はアルの方に疑いの眼差しを向けながらも会場に戻って行った。




 また二人きりになると、私からアルに抱き着く。

「え、ちょ、クラリス!? まだ酔ってるの!?」

「……ふふ、そういうことにしておいて」

 私はアルの背中に手を回しながら、口を開く。



「私ね、寂しかったの。 アルが、話しかけてきてくれる回数も、こうして近くにいる回数も減って。

 それでね、私がアルに逆エスコートを頼む前に、3人の会話を聞いてしまったの」

「会話……あぁ! あれか。 クラリスには秘密にしたいって言ってたあのことか。

 ……まさかそれで、僕が“嫌い”になったと勘違いしたの?」

「……うん」

 私は頷くと、アルはふっと笑って私の背中に腕を回して、ポンポンと背中を優しく叩く。




「違うよ。 僕は、クラリスに“魔法のこと”を話そうか迷ってたんだ。

 悪魔討伐について、少し進展があって。

 それと同時に、クラリスも記憶を思い出したいって、エドガー王子に会いに行ったでしょう? だから、クラリスが知りたがってる魔法のことを、僕は話そうか迷ってて、それを3人で話してたんだ」

「! あれは、私の魔法のことだったのね……。

 じゃあ最近私を避けるような態度も、魔法を隠すためだったの?」




 私のふと湧いた疑問に、うっとアルが言葉を詰まらせる。

(え、違うの?)

 私はアルの顔を覗き込めば、途端に顔を赤くさせて困ったような表情をするアル。

 口をパクパクとさせた後、はぁっと溜め息をついて、私から視線を逸らしながら言う。





「……舞踏会が始まる前に、クラリスが言ったことと、同じことを悩んでたんだ」

「始まる前……?」

 私、何を言ったんだっけ……?

 思い出せないでいると、アルは「あぁ、もう!」と少しヤケになったように言う。



「クラリスのことが好きすぎて、距離感が保てなくなるのが怖かったんだ!!」

「……!? え!?」

 私も、一気に顔に熱が集中する。

 そんな私の顔を、アルは何か吹っ切れたのか、そっと頰に指を這わせながら言葉を紡ぐ。




「あんなに可愛かったのに、どんどん大人っぽくなるし、今日なんて僕の瞳の色のドレスを着ていて、息が止まるかと思うくらい驚いて。

 そんは君を見ていると、僕の我慢は効かなくなる一方だし……今だって、凄い心の中で葛藤してる。

 抱きしめたい、キスしたい、ずっと触れていたい……ね、気持ち悪いでしょ?」

「……っ」

 アルの瞳が、艶めいて、アクアブルーの瞳が揺れる。

 私もアルのその頰に触れながら、瞳を見つめて言う。





「……私ね、アルの瞳を見て、このドレスを作ってもらったのだけれど、どんなドレスや宝石よりも、アルの瞳が一番、綺麗だって考えていたの。 ふふ、おかしいでしょう?

 アルは格好良くて、素敵で、私は隣にいるだけで幸せだとずっと思っていた。

 でもね、最近はね、アルがいなくて寂しかったの。

 こうして、触れていたかった。

 抱きしめて欲しくて、キスして欲しくて……ふふっ、私の方が気持ち悪いと思……んっ」

 私の言葉は、最後まで言えなかった。





 アルの唇が、それを許さなかったから。





 しっかりと重なった唇の熱は、とても熱くて。





「ア、ル……っ」





 息が苦しくなってくるけれど、アルはやめない。




 キスしている合間に、アルは小さな声で呟いた。





「寂しい思いをさせてごめんね」と。






 私はその言葉にまだ一筋、涙を零したのだった。




仮面舞踏会編はこれで終了です!

駆け足気味でごめんなさい><

悪魔討伐にこれからどんどん踏み込んでいくことになるので、こことここで話が繋がってるのか!という感じで楽しんで頂けたら嬉しいです^^

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