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ドジっ子な悪役令嬢は、今日も色々と空回り中。  作者: 心音瑠璃
第2章 切なる願いを魔法に秘め
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12.仮面舞踏会編 -準備-

仮面舞踏会編、始まります!

 仮面舞踏会前夜。



「姫様! ドレスとてもお似合いです〜!!」

 私はアクアブルーのドレスを試着して、にっこりと笑った。

「有難う、ルナ」



 このドレスは、明日の仮面舞踏会で着るもの。

 ……明日のために、初めて自分からオーダーメイドで作って貰ったドレス。

 ……アルと、同じ瞳の色。




「これなら、アルベルト様もメロメロですね!!」

「……ふふ、そうだといいわ」

 私は、アルベルト様、という単語に反応して、少し返事が遅れてしまう。

「姫様?」

 ルナがそれに気付いたのか怪訝な顔をする。

 私は慌ててもう一着の方のドレスをルナに差し出した。



「私のことはもういいから、ルナもこれを着てみて! 私のドレスと出来るだけ似させて作ったものなのよ!」

「えぇ!? このドレス、私のだったのですか!?

 恐れ多いです! 無理です!!」

 ルナは全力で首を振る。 私は、それを見て俯きながら、悲しみをこめて言う。

「……でも着てくれないと、私……」

「ひ、ひひひ姫様のお望みならば、全力で着させて頂きます!!」

「ふふっ、有難う」

 こうでもしないと、ルナは着てくれないものね。



 私はルナ用のも作ってもらったオーダーメイドのピンクのドレスを、ルナに渡すと、ルナはそれを大切そうに抱えて、他のメイドに着せてもらいに私の部屋を出た。



 私は一人きりになると、ふーっと長く溜め息を吐いて、姿見に映った自分を見つめる。




(……アルの、瞳の色……)




 散りばめられた宝石も、アルの瞳と同じ色。

 ……だけど、アルの瞳の方がずっと綺麗だと思ってしまう。




(……アルは、この宝石よりずっと綺麗で、何にも変えられない、とても大切な存在……)






 アルは前に、“この国よりクラリスの方が大事”と言ってくれた。

 私は大袈裟だと思ったけれど、今ならその気持ちが痛いくらい分かる。

(……私は、アルに甘えてたんだわ……)



 今頃気がついたって、もう遅いのにね……。





「……姫様?」



 ハッとして後ろを振り返れば、淡いピンク色のドレスに身を包んだ、ルナの姿。

 私はそれまで悲しかったのが嘘のように、嬉しくてルナに駆け寄る。




「ルナ! とっても可愛いわ!! 似合ってる!! クレイグも目がハートになるわ!!」

「ひ、ひひひ姫様! そんなに褒められたら、恥ずかしくて死にそうです……」

 ルナは真っ赤になりながら、「こんなに素敵なドレスは初めてです」と呟いた。



 そして、私を見て笑顔で言う。

「有難うございます、姫様」

「〜〜〜っ、あぁぁ可愛いわぁ!!

 クレイグに写真を撮って見せてあげたい!」

「しゃ、しゃしん??」

 ルナの疑問が耳に入らないほど、私はルナが可愛くて、思わず抱きつく。

「ひ、姫様!?」



 私は、ふふっと笑いながら、ルナの頭を優しく撫でる。

「……幸せになってね、ルナ」

「え……? 姫様?」

 私は驚いているルナから体を離してにっこりと笑うと、「髪型も変えてみましょう!」とドレスに似合う髪型について、夜遅くなるまで語り合ったのだった。









 ☆








「もうすぐ着くわね」

「はい! 姫様がセッティングした会場も、とても楽しみです!」

「ふふ、頑張ったから楽しんでくれたら嬉しいわ」

 私とルナはドレスに着替えて馬車の中で穏やかに語っていた。



 私の胸中では、アルのことで頭がいっぱいなのだけれど。

(結局、今日まで会話すらしなかったわ)



 逆エスコートを頼んだあの日から、私は忙しくてアルと話せない日々が続いた。

 姿を見かけたことはあったけれど、何を話しかければ良いか分からなかったし、朝とお昼休みと放課後は全て仮面舞踏会のセッティングに時間を割いた。

 時間があると、すぐにアルのことばかり考えてしまうから、わざと、忙しさで考えないようにするために、セッティングのリーダーになったりもした。




 そして結局、今日は学校で、アルが「着き次第、ピアスで連絡するよ」と声をかけてくるまで、全く話さない日々が続いたというわけで。



(……話さなければ、アルのことを考えなくて済むと思ったのに……)

 話さない方が、余計にアルのことを考えてるなぁ、なんて私は自嘲気味に心の中で笑った。




(……もう、今更なのよ)





 アルに嫌われてしまった。





 それが、事実で。





(……“恋の魔法にかけられて”のクラリスのバッドエンドが、今日になるだけの話よ)






 所詮私も悪役令嬢の“クラリス・ランドル”なのだと、心の中で笑いながら、心を落ち着かせるためにそっと目を閉じたのだった。






 ☆






 永遠に、この日が来なければ良いのに。




 そう思っていた自分が馬鹿みたいに思えてくる。




 広々とした会場に飾り付けられた装飾。




 テーブルの上に置かれた様々な料理。




(私が考えてセッティングしたものなのに、一番この日が来なければ、なんて思っているのは自分のことながら笑えるわね)






 そんな皮肉ばかり考え出されて溜め息をつきながら、最終確認を行う。





 リーダーとして、この舞踏会のセッティングにミスがあってはいけない。




 隈なく見回して、大丈夫、と頷いた時、耳につけていたピアスが冷たくなる。

(……あら、もう来たんだわ)






 まだ仮面舞踏会の会場まで1時間はあるというのに。





『クラリス、聞こえる?』

 アルの声に、一瞬言葉が詰まる。

(久しぶりに、耳元で聞いた気がする……)




『? クラリス?』

『っ、あ、ごめんなさい。 私も、丁度セッティングの最終確認が終わったから、今からそちらに向かうわ。

 ルナが先に王家専用のお部屋で待機してると思うから』

 私がそう言って会場の扉を開けて出ようとして……立ち止まる。





『え……?』

 私の視線の先にいた人物を見て、私は驚いてしまう。

 その人も何故か、驚いていた。












「……アル?」




 そこには、私が会いたくて堪らなかった人物の姿があったのだった。




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