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ドジっ子な悪役令嬢は、今日も色々と空回り中。  作者: 心音瑠璃
第2章 切なる願いを魔法に秘め
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8.思い出せない過去

途中でアルベルト視点に変わります。

回想シーンが多いので、字数少なめです。

 その日の夜。



(……アル、まだ起きてるかしら)




 私は心を落ち着かせるように息を吸うと、ピアスに魔力を込める。



『……アル、アル』




 何度か呼んでみたけど、私のピアスの方に魔力の変化はない。

(……もう、寝てしまったのかしら)



 謝ろうとしていた私はがっかりとする。

(まさか、あれが“嫉妬”から来た行動だとは、気が付かなかったわ……)

 ルナに相談すると、真っ先に“それは完全に嫉妬ですよ!”と言われ、すぐに謝るようアドバイスしてくれた。



 ピアスのことはルナには伝えてないけど、早めに謝ったほうがいいと言われたから、ピアスを使おうと思ってやってみたけど、アルの返事はない。

(……ただ、寝てるだけならいいのだけれど)

 ……まさか、私を嫌って出ないとか……!!



(そ、そんなことないわよね!

 ……今日は、付けたまま寝ましょう)

 もしかしたら、アルが声をかけてきてくれるかも、そう思って付けて寝ることにしたのだった。








 ☆








 ……熱い……







 そう思って目を開けると、私の周りには炎が上がっている。






(……嘘! 周りが、燃えてる……!)





 これは、前と、同じ夢……魔力が暴走した時と、同じ……






(……っアル!!)






 幼いアルが、倒れている。







 私は手を伸ばす。








「アル……アル、アルーーーーー!!!」








 私の中で、何かが弾ける。






 それはまるで、燃えた火を増長させるような勢いを持って、私の視界を包み込んだ……

―――









「っ……!!!」




 ハッと目を覚ます。

 全身は汗だらけで、息が乱れる。

 早くなった鼓動を落ち着けるように、深呼吸をしながら心臓を抑える。





(……これは、ただの夢じゃないわ)

 こんなに頻繁に、しかもリアルな夢……これは間違いなく、私に起きた“過去”。

(どうして何も、覚えていないの……?)

 思い出そうとしても、思い出せない。



 私の記憶は、8歳以降からしか記憶がない。

 それは、物心がついていないせいだと私は思っていた。

 ……だけど、他の周りの人にはちゃんと、8歳より前の記憶がある。 物心のせいなんかでは決してない。



(……じゃあ、どうして……?)





 私はハッとある仮定を思いつく。





(もしかして、私の記憶が消えている理由って……!)






 でも、そうだとしたら、一体何のために……。






 窓の外を見れば、まだ外は薄暗かった。




(……アル、私は一体何者なの……?)





 私はポツリと、いない彼に向かってそう呟いたのだった。







 ☆






(アルベルト視点)



『アル、アル……』


 ピアスから、クラリスの声が聞こえる。


 返事をしようと思ったけど、明日直接謝った方が良い、そう思った僕は、敢えて寝たふりをすることにした。

(……直接会って話さないと、失言してクラリスに幻滅されるかもしれない……)

 僕はそう思って、ピアスを取って近くの台に置くと、眠りについたのだった。







 その日の明け方頃。





 クラリスの魔力の気配がして反射的に目がさめる。





「!? クラリス……?」

 部屋を見回しても、クラリスの姿はない。

(いや、それはそうだ……)

 好きすぎてついに幻まで追おうとしているのか、と自嘲気味に笑いながらふと台の上を見れば、ピアスが光っている。




(……クラリスの、魔力反応!?)





 僕は慌ててピアスをつける。





 すると、『アルーーーー!!!』と叫ぶクラリスの声がする。

 ハッとして、慌てて何があったか問いかけようとしたけど、こんな時間に返答するなんて風紀上問題ありだと迷っているうちに、また魔力反応が起きる。





『……アル、私は一体何者なの……?』

「……っ」

 その呟きに、僕はハッと息を飲む。

(……クラリスは、記憶を思い出しかけてるんだ……)




 それで、アルと叫んだのがどうしてか、すぐに分かってしまった。

 ……それは、僕も一緒にいたあの時と、同じ反応だったから。





(……クラリスは、覚えていないんだ。

 ……いや、思い出せないんだ。 あの時のことを……)




 ……あの時は、必死だった。

 クラリスが、辛い思いをしないように、そう考えてみんなで試行錯誤した結果が、今、クラリスにとって大きな問題になって直面している……。


 



(……ただ僕は、クラリスには幸せでいて欲しいんだ。

 あんな記憶も、あんなことも、二度と起こさないようにするために……)





 ……僕が取るべき行動は、一体何なのか。






 その答えは未だに、僕は見つけられずにいた。

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