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ドジっ子な悪役令嬢は、今日も色々と空回り中。  作者: 心音瑠璃
第2章 切なる願いを魔法に秘め
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4.続編の記憶と“会わせたい”人

 ふと目を開けると、前世の私の部屋の中にいた。



 だけど、そこに前世の私の姿はない。


 いつもと違うなぁ、と思いつつふとテーブルの上に視線を移すと、“聖ランドル王立学園”という文字が見える。



(……! これ、続編のゲームパッケージだわ!!)



 咄嗟にそう思った私は、ふわふわと漂いながら机の近くに移動する。


 物は触れるのかな、と恐る恐る触れてみれば、少し冷たい物の感触。


(! 触れた!!)


 驚きながらも、いつ夢が終わるか分からない、と私は逸る気持ちを抑えながら、パッケージの中身を開いた……。





 ☆






「ねぇ、ルナ! 思い出したの!! 前世のゲームの続編!!」

「えぇ!? 本当ですか!?」

 私は朝、開口一番にルナにそう言うと、ルナは身を乗り出してきた。

 そして、あ、おはようございます! とルナは朝の挨拶を忘れたことに気が付いて慌てて付け足してから、すぐに目をキラキラとさせる。



「それで!? どんなゲームなんですか!?」

 私は早く早くと急かすルナを落ち着かせつつ、前世のゲームの続編を語り出す。




 私が思い出した内容。(パッケージの中にあった説明書等を見た内容)

 まずは、攻略対象4人の上に追加キャラ2人を加えた、6人のルートがあること、そしてルートは1人2ルート(バッドエンドなし)の12ルートが存在すること。


「追加キャラであり攻略対象にリアム君が追加されていた。 ……それは分かったのだけど、もう一人はパッケージの表に書いてあった容姿だけしか見られなかったわ」

「えっ、どうしてですか?」

「……冊子を読み進めようとしたら、リアム君の紹介ページの途中で夢から覚めちゃったのよ」

「えぇ……」

 ルナの溜め息混じりの落胆に、私も溜め息をつきながら説明を進める。



 もう一人の追加キャラであり攻略対象は、銀髪銀眼の何処か儚い印象の人。

 会えばすぐ分かると思うほど、印象は強かった。 記憶上、まだ会ったことはないけれど、誰かに似ているような、そんな気もしなくもない。



「追加キャラも凄いですね!! 豪華というか、楽しみというか」

「……ルナ、貴女私の前世の世界に来たら、絶対に乙女ゲーマーになってるわよ」

 私の言葉に、「おとめげーまー?」と首を傾げるルナ。

 まあ、知らなくてもいいことよ、と私は笑うと、話を続ける。




「後ゲームの題名は、“聖ランドル王立学園-切なる願いに魔法を秘め-”……まあ要するに、魔法を使用することが今回のゲームの主、となるわけだけど……って、ルナ?」

 急に黙ったルナを見て私は首をかしげると、ルナは慌てて「はい、聞いてます!」と言う。

 そんなルナの言動に再度首を傾げながらも、とりあえず話を続ける。




「まあ、私にはあまり関係ない……と信じたいけど、私が想像するに、ミリアさんの魔法がキーとなることも間違い無いと思うの。

 ……それに私が巻き込まれるか、自ら魔法を使うかのどちらかね」

「……そうですか」

 珍しく、ルナの反応が薄い。

 何でだろう、と思ったけどルナが先に「他には?」と訪ねてきたので、私は首を振る。




「……クラリス様、やっぱりあまり前世の記憶って使えませんね」

「……ルナ、貴女は何でも直接言い過ぎよ」

 ルナの言葉に私は頭を抑える。 ルナは苦笑すると、「紅茶を入れてきますね」と席を立った。

 私はさっき、ルナが何を考えていたのかが気になったけど、あまり干渉的になるのもどうかと思って、聞かないでおくことにしたのだった。



「……」

 そんなルナは紅茶を入れながら、私を心配そうに見ていたことになんて、無論、気付くはずもなかった。





 ☆





「え!? リアムさんは男性なんですか!?」

「えぇ、そうみたい」

 私がそう言って頷くと、ミリアさんはにこにこしているリアム君を見、私を見て目を丸くする。



 その日学校に着くと、アルに言われた通り私はミリアさんとお話をしながら、リアム君は男の子だと言うことを伝えた。

(でないと、もしリアム君が男の子だとバレて、周りから私とリアム君がとても仲良く見えたとしたら、アルとの不仲説からのアルによる公開イチャイチャが始まってしまうかもしれないじゃない……!)



 それだけは全力阻止しなければ……!




「あの、聞いても良いですか?」

 私が意気込んでいる間にリアム君に向かって口を開いたのは、ミリアさんだった。

「? どうぞ」

 そのミリアさんの問いに、リアム君は首を傾げながらも先を促す。

「どうして、女の子の姿をしていらっしゃるのですか?」

「……」

 その言葉に、リアム君の表情が陰る。



「あ、えと、ごめんなさい! 大丈夫です、ただ気になっただけなので」

 焦りながら、ミリアさんは撤回しようとすると、リアム君は首を振った。

「いや、普通疑問に思いますよね。 僕だって気持ち悪いと思いますし。

 ……でもこうしてると、心が落ち着くんです。 他の自分になれるような気がして」

「え……?」

 言葉を発したのは私だった。



 ……だって、そう言ったリアム君の表情が、とても悲しげだったから。





「っ、あ、ごめんなさい。 そんなにしんみりとした話ではないんです。

 僕はただ、この姿の方が楽だなって感じることが多いだけなので」


 だから気にしないでください、と微笑むリアム君。

(……この子はこの子なりに、何か事情があって女装しているんだわ)

 私はそう感じて口を開く。




「困ったことがあったら言ってね。 私が直接、お父様に打診してみるわ。

 ……まあ、この学園は基本緩いからあまり不自由はないと思うけれど。

 貴方も顔が綺麗だし、皆からとても評判が良いし。 虐められたりすることもなさそうだし、あまり心配はいらないと思うけれど」

 それでも、彼は1歳下で不自由することも多いと思う。

 だから、何か助けてあげられることは助けてあげよう、とそう思った。





 私の言葉にリアム君は驚きながらも、ふっと微笑んで「有難うございます」とお礼を言った。





 その姿も綺麗だなと感じながら、私の脳裏にふとある光景が蘇ってくる。







 ……蹲っている、幼い男の子の姿……






(……? どうして急に……)





 首を傾げていると、「クラリス様?」とリアム君が首を傾げ、近くにいたミリアさんとルナが心配そうに私を見ていた。

 私は、慌てて首を振ると、「何でもないわ」と微笑む。

 そして、「そろそろ行きましょう」と声をかけ、歩き始めると、丁度正面からアルとローレンス、クレイグとシリルが歩いてきた。




 私は「ごきげんよう」と淑女の礼をとって歩こうとすると、アルが私の手を掴んだから足を止める。

「? ……ごめんなさい、ミリアさん方。

 先に教室に行ってて下さる?」

 私はアルが話したそうな目をしているから、先にミリアさんとリアム君に行くように促すと、二人は頷いて歩いて行く。

 私とルナはその姿を見送ってからアルに視線を戻す。




「? 何?」

「……リアムと一緒にいるんだね」

「? 当たり前でしょう。 あの子はまだ教室が何処にあるか分からないもの」

 アルの言動に私は首を傾げながらそう答えると、何故か周りから呆れたような溜め息が聞こえた。



「……何よ」

 ルナまで溜め息を吐いたから、私はジロッと見ると、「まあ、まだ目を瞑っておこう」とよく分からないアルの言葉に再度首を傾げる。

 そして、アルは「本題に入ろう」と少し息を吸って言った。




「今日、クラリスは時間ある?」

「え? えぇ、あるけれど……」

 私は突然のことに動揺しながらも頷くと、アルが少し目を瞑ってからゆっくりと目を開けて、真っ直ぐと私を見て言った。





「会わせたい人がいるんだ」





 私はアルがどうしてそんなに重々しい口調で言うのか分からず、戸惑いながらも黙って頷く。

 アルは少し表情を和らげた後、私の頭をポンッと撫でて、後ろにいたローレンスに目配せをして頷いた。

 何が何だかよく分かっていない私に、アルは「大丈夫、僕もいるから」と言いながら、私の唇に人差し指を立ててつけてきた。




「!」

 私は驚いて息を止めると、アルは私の目線に合うように屈んで小さく言った。

「……ただし、このことはここにいる者達以外には秘密だ。

 絶対、誰にも言ってはいけないよ。 ……いいね?」

 私は真剣なアルの表情に、ドキッとしながらもゆっくりと頷くと、アルは微笑んで見せて、「そろそろ時間だね」と言うと、今度はシリルに目配せする。




「……本当、私の魔法を乱用するのはやめてください」

 とシリルは呆れたように言いながら、パチンッと指を鳴らせば、私とルナの身体がふわっと浮く。

 驚いている私達に、アルは「放課後、魔法実験室で待ってる」と言ったのを最後に、私達は目的であった教室の近くの廊下に、ポンッと降り立つ。




 幸い廊下には誰もいなくてホッとする。

 ……この魔法は便利だけど、とても目立ってしょうがないから良かった。



「……アルが会わせたい人って、誰なんでしょう。 ねえ、ルナ?」

 私がルナにそう問いかければ、ルナは神妙な顔をして、ふーっと長く溜め息を吐いた。

「……粗方、想像は付いております。

 姫様が会ったことのない方。 ……そして、ほとんどの方がご存知ない方です」

 まあ、放課後になれば分かりますよ、とルナは言う。

(私が知らない? ほとんどの人も?

 ……どういうこと?)





 よく分からない上に、何でそんなに皆閉口するんだろうと思っていると、授業の開始の合図を示すチャイムが鳴ったので、私達はその話を中断せざる終えなかったのだった。


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