番外編SS-甘い夏休みの始まり
クラリスとアルベルトの後日談です。
夏休み編として、課題編を書いてみました。
ただただイチャイチャさせたかった←
「何よ! アルに全然会えないじゃなーい!!」
ベッドに身を投げ出して、足をバタバタとさせる私に、「姫様、お父様に怒られますよ」と同じ歳であるはずのルナに、まるでお母様のように窘められる。
「だってだって! 夏休みなんて、パァッと、遊ぶものよ!? ……何故、私は、ずっと自室に籠って、課題と向け合わなければならないの!?」
「……姫様が去年、課題終わらせたのが最終日だからではないですか」
とルナに遠い目をされる。
「……そ、そう言う貴女は、どこまで進んだのよ?」
「とっくに終わりました」
「げっ……」
……さすが侍女。 恐るべし……。
「姫様のお世話をするためには課題なんて終わらせますよ、すぐ。
……それより姫様の課題の方が心配なので」
「うっ……」
私は「あーもうやだぁ」と大の字で寝転がる。
するとノックの音が聞こえる。
「来ましたね」
そのルナの言葉に、私は素早く察してベッドに慌てて隠れる。
(み、身の危険しか感じないわ……! それに、私が会いたかったのは、こんな理由じゃないのよぉぉ!!)
なんて悲鳴をあげそうになったのも束の間、ベリッといつものように掛け布団を剥がされ、恐る恐る視線を向けた先には……
「クラリス、随分と往生際が悪いね」
と言って、黒い笑みで微笑む、アルの姿だった……―――
☆
「スパルタッ、鬼っ! 何でこんな時間まで勉強しなきゃいけないのぉぉ!」
「何その言葉。 ……不本意だけどまぁいいや。
クラリスがいつまで経っても終わらないからでしょ」
至極真っ当な返事をされ、私はがっくりとうなだれる。
……はい、この状況は、四角い一つのテーブルに二人並んでお勉強をしている状態。
(せっかくの、久しぶりに再会した恋人との二人きりの時間が台無しよ……)
秀才である私の婚約者のアルベルト様は、とっくに課題を終わらせ、私の宿題の手助けをするよう呼ばれた。
……ちなみに、それは毎年のこと。 (我ながら情けないとは思っているのよ、でもやる気が起きないのだからしょうがないわよね)
そして、アルは毎年のように頬杖をつきながら私の宿題を眺めている。
……しかし今年は、特に顕著に態度に示しているのが、宿題を眺めるふりをして私を眺めること。
……私が気が付かないとでも思っているのか。
やりにくくてしょうがない。 (顕著、と書いたのでお分かりだろうが、これも毎年のことである)
そうこうしている内に、彼此3時間は経っていた。
いつも日課のおやつの時間も今日はお預けを食らった私は、アルに八つ当たりを始めた。
「第一、何でここまで缶詰めにされなければならないの!?」
「さっきも言ったけど、クラリスが、課題を終わらせないからでしょう」
「あーもう! ちなみにそれルナにもそれらしきことを言われたわ!」
(というかあの二人は、一体どこへ行ったの!?)
ルナとクレイグの姿が見えないことに、私は頬を膨らませて怒る。
……ようするに、絶対二人でデートしていると。
「……せめて、甘いものがほしいわ……私のメロンゼリー……」
なんて、今日食べる予定だった、わざわざ遠方から取り寄せてもらったメロンを使い、メロンピューレにして作ってもらったゼリーに想いを馳せていると、今まで黙っていたアルが口を開いた。
「……はぁ、クラリス、そんなことばかりしてると……
お仕置きするよ?」
ハッとしてアルを見ると、にっこりと妖艶に笑うアルの姿が。
(み、魅惑的すぎて怖いわ……!)
「……例えば?」
こういう時に好奇心が勝ってしまう私は、やばいのかもしれない。
完全にアルのペースに掴まれることになった私は、「そうだなあ」と考えた後思案したアルはソファに移動すると、手招きされ、「ここに座って」と促される。
「こ、ここって……アルの膝の上??」
「そうだよ?
だって、お仕置きでしょう?」
(どうしてそれが膝の上!?)
そう思ったけれど、アルという甘さが今まで夏休みで会えていなかった分(学園では学年が違うとはいえど、お話しなくても姿を見に行ったりはしている)、足りなかった私は、大人しく膝の上に座ることにした。
「……クラリスってやっぱり軽いよね」
なんて座って開口一番に言うものだから、私は恥ずかしさと喜んで良いのか分からないその言葉の返答に困る。
だけど、アルが無意識なのかなんなのか、手を伸ばして太腿を触ろうとして来たことには、流石にその手をつねって引っ張った。
「ちょっとクラリス痛いよ」
「アルが変なところを触ろうとしたのが悪いわ」
私は開き直って怒ると、アルは「お仕置きなんだから、大人しくしてて」と言う。
「だから、お仕置きってな……ひゃ!?」
私は驚いて身をよじる。
「あ、耳弱いんだ」
そう平然と言うアルに、私はびっくりして言う。
「今! 何したの!?」
「え、何って、耳触ってみただけー」
「触ってみただけー、って、ちょ、かゆいからやめてぇぇ」
私の耳にふっと息を吹きかけたりして楽しそうに笑うアル。
私はくすぐったくてふふふと笑ってしまう。
「……待って、これじゃあ全然お仕置きになってないことに気がついた」
「え」
そう言うやいなや、私は突然お姫様抱っこをされた、と思ったら、ソファに下ろされ、上から覆い被された。
「……さて、どうしようか?」
何がいい、と私を上から覗き込みながら、甘く、耳元で囁かれる。
答えられないでいると、再度妖艶に微笑みながらゆっくりと言葉を紡ぐアル。
「クラリスは、さっきお菓子を食べたいって言ってたけど、甘いの、好きなんだよね?
……何がいい?」
「っ〜〜〜〜!?」
私が言ったのはお菓子よ!! と声を大にして言いたかったけれど、何しろ“アル不足”もあって、強く言えないと判断する。
そんなことを考えてしまう自分に恥ずかしさで涙が出てくる。
そして、ようやく絞り出した答えを、アルに言ってみることにした。
「っ、アルに、甘やかされた、い……」
それだけ言うのが精一杯でそう言うと、驚いたような表情を浮かべたアルは、「今日はずいぶん素直なんだね」なんて言いながら、嬉しそうに、そして甘い微笑みを浮かべながら私に顔を近付けた、その時。
ガチャ、と突然ドアが開く。
「アルベルト様ぁ、只今戻りまし……って、あ」
……クレイグが、ドアの前で固まる。
お約束の展開に私は苦笑いするが、アルからは殺気が放たれる。
「……クレイグ、ノックをしろと、何度言わせれば気が済むんだ」
「ひ、ひぃぃぃお邪魔しましたぁぁぁ」
クレイグはバタンとドアを閉めて行ってしまった。
私は堪らず、プッと吹き出して笑ってしまう。
「本当に仲が良いわね、アル」
「……まあな」
恥ずかしいのか、少しぶっきらぼうに答えた愛しの婚約者様に、あら、と思ってもうちょっと顔をよく見ようと覗き込もうとしたところで……アルの唇が、私の唇を奪った。
(……残念、貴重な照れ顔を見られると思ったのに……)
なんて思いつつ、私は長く、甘い時間に身を委ねたのだった。
「ねぇ、クラリス」
「何? アル」
長く甘いひとときを過ごした私達はその後、ソファに二人並んで座り、私はアルの肩に頭を預けてうっとりと余韻に浸っていると、アルは引き寄せていた私の腰から手を離し、私の頭を大切なものを扱うように丁寧に撫でると言った。
「……今度は、僕の国に来ない? 今丁度、海がとても綺麗なんだ」
「……まあ! 素敵! 勿論、アルが良いのならいつでも、私は伺いますわ!」
私が興奮したように燥ぐと、アルはそこまで燥ぐとは思っていたのか、クスッと笑って「僕こそ、嬉しいよ」ともう一度私を強く抱き寄せ、フワリと優しく唇を重ねたのだった。
そして、足りていなかったアルという甘み成分を補給した私は、シュワード王国に行く約束をしたのをきっかけに、課題がいつもの倍以上のスピードで終わったのは言うまでもない。




