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ドジっ子な悪役令嬢は、今日も色々と空回り中。  作者: 心音瑠璃
第1章 恋の魔法にかけられて
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番外編SS-ヒロインとローレンスの淡い恋②

 それから、時は流れて現在……“表彰式”に至る。




 アルベルト様とクラリス様が一瞬にしてシリル様の魔法で消えた直後、会場はわーっと割れんばかりの拍手が起きた。



 それは、アルベルト様の“一生守る”宣言がとても素敵だったからだろう。

 確かに、とても素敵だった。

 女性なら、誰もが憧れるであろう理想のお似合いの二人。

 それは、アルベルト様とクラリス様というのだから、無理はない。

(……クラリス様は、私とは大違い)



 ローレンス様のお隣は、あのようなお方でなければ釣り合わない……




(……そうだわ、ローレンス様はどこに……)





 クラリス様とアルベルト様を見た彼は、きっと悲しかっただろう。




 私はキョロキョロとお姿を探していると、校長の「静粛に!」という言葉に、みんなは静まり帰って校長を見る。

 ……そのお隣には、ローレンス様の姿が。

(……何だか、緊張している……?)





 いつもにこにこと、温厚なローレンス様が珍しく緊張しているように見える。

 ちら、とこちらを見たローレンス様と目が合い、私はハッとする。

(っ、そうだわ! ここは、壇上の目の前でっ……戻らなきゃ!)





 私は、慌てて戻ろうと振り返ろうとした、その時。





「っ、お待ち下さい、ミリア嬢」

 私はその声に、ピタッと止まる。

 その声の主を振り返れば、壇上から私を見つめるローレンス様のお姿で。

「……は、はい……」

 私は周りの視線を感じながらも、小さく頷くと、ローレンス様は「そこにいて」と口パクで言われたから、戸惑いながらも頷くと、ローレンス様は少し微笑みを浮かべた後、みんなを見回した。




「先程もアルベルト王子が言われた通り、私達の学園生活には“悪魔”の存在が忍び寄っていることは間違いない。

 現在、その“悪魔”が何者なのか、そして倒す方法も、国王や王家で調査中だ。

 だが私達は戦い、必ず勝利すると、ここに宣言しよう」




 そうローレンス様が締めくくれば、不安げだった皆の表情が、一気に明るくなる。

(……っすごいわ……ここまで、皆をまとめ上げるだなんて……)

 次期ディズリー王国の王位継承者と言われている方。

 改めてその力をまじまじと見せられ、私は嫌でも、遠い存在の方だと改めて思った。




 それまで黙っていた校長……ランドル王は、満足そうに頷いた後、私を見た。

(えっ……?)

「アルベルト、ローレンス。 有難う。

 私からはあまり話すこともないな。 全て君達が話した通りだ。

 ……随分と、たくさん奔走してくれた。

 私の娘、クラリスのことについても、無罪を晴らしてくれた。

 それについては、オルセン伯爵の令嬢のミリア嬢にも世話になった。

 ……本当に、有難う」

 皆も、私もびっくりしてしまった。

 ……あの、ランドル王国の国王であり、この学園の校長が自ら、伯爵家の娘である私にお礼を言ったんだもの。





「と、とんでもございません!! わ、私は、クラリス様が、どうしてもやったとは思えなくて……その、優しくて、上品で、ステキな王女様で、私の憧れで……」

 言いながら、頭の中がぐちゃぐちゃになる。

 


 私は、クラリス様が羨ましかった。



 ローレンス様のお側に堂々と立てる方。



 そして、ローレンス様が思われている方。



 私は、クラリス様が見せた優しさだけではなく、ローレンス様の思われた方を信用したいと、そんな気持ちも芽生えていた。



 ……それなのに、王様にまでお礼を言われてしまったら、私のこんな気持ちへの罪悪感が、出てきてしまう……。





「……はは、本当に綺麗な心の持ち主だ。

 そうして君は、クラリスの無罪を晴らしてくれた。 ……怖かっただろう?」

「っ……」

 私は、何も言えなかった。 代わりに、涙が溢れて制服を濡らす。



「……ミリア嬢、泣かないで」




 いつの間にか、ローレンス様は私の目の前にいた。

 そして、私の手を軽くエスコートするように引くと、気付けば壇上に上がっていた。





「!?」

 驚きのあまり、涙も止まってしまう。

 ローレンス様は、「辛い思いをさせてごめんね」といつもの口調で言った。



「っ、ろ、ローレンス様、ここ皆さんの前で」

「だから、聞いて欲しいんだ。

 私の、本当の気持ちを」

「え……」

 ローレンス様は私の手を取ると、皆に向かって行った。




「彼女は、この通り綺麗な心の持ち主だ。

 ずっと、不甲斐ない私のことを支えてくれた。

 そして、勇気を持って、私の大切な幼馴染のクラリスの罪を晴らしてくれた。

 ……彼女以上に、素敵な女性は見たことがない」

「!?」

 その言葉に、会場がどよめき、御令嬢方は青い顔になって悲鳴をあげた。



 私だって、悲鳴を上げそうになった。

(だ、だって、ローレンス様の好きな方は……)




「……今まで黙っていてごめんね。

 私は、君の言葉に甘えてばかりで、君に辛い思いばかりさせてしまった。

 ……だから、今度は、」

 そう切ると、驚いている私の手に口づけを落とす。




「!?」

「……私が、貴女の一番近くで、貴女を支えられる存在になりたい。

 我儘を言っているのは分かっている。 けれど……、私は貴女と、ずっと一緒にいたい。

 今度は、自分の気持ちに正直になりたい。

 ……駄目だろうか?」





 手の届かない存在。

 私なんて、ローレンス様の瞳に思い人として、映ることはない。

 そう、思っていた。

 ……だけど。






「……っ、ろ、ローレンス様……本当に、私なんかで、良いのですか……?」

「っ、あぁ。 “私なんか”ではなく、“君が”いい」




 ローレンス様は、嬉しすぎて泣いてしまう私に微笑みを浮かべながら、再度会場を見回していった。




「ディズリー王国・第二王子、ローレンス・ディズリーは、この日を持って、ミリア・オルセンを婚約者とする……!」





 そう高らかに、ローレンス様は宣言したのだった。







 ☆







「ローレンス様」

 私は隣を歩くローレンス様に声をかける。

「? 何?」

 私は、優しく私を見る瞳にドキドキとしながら、「あの、」と言ってギュッと目を閉じると差し出した。




「っ、こ、これを、ローレンス様に差し上げたくて!!」





 そう言って渡したのは、赤いガーベラの花束。





「これを……俺に?」

「は、はい……」



 私は、ローレンス様が受け取ったのを見て、「えっと、」と私は言葉に詰まる。

(ど、どう説明すれば良いのかしら、どこから?)

 とパニックになっていると、ローレンス様がぷっと吹き出して笑ったのを見て、私は顔が赤くなる。




「ふふっ、ミリア嬢、百面相してたから可愛くて、つい」

「か、かわ……!?」

 私は俯くと、クイッと顎を持ち上げられて、「よく見せて」と何処か色気を持った口調で言うと、ローレンス様は私を見つめた。




 忙しなく動く鼓動に、あわあわと私はしていると、ローレンス様は今度はゆっくりと微笑み、口を開いた。



「いいよ、ミリア嬢。 そんなに慌てないで。

 君の話は、いつまででも、どんなことでも聞くから」

 というか聞かせて、とローレンス様は柔らかく言った。

 その言葉にコクンと小さく頷くと、私はローレンス様の顔を見上げたまま、ゆっくりと話し始める。



「……この花はご存知の通り、この前クラリス様が、身を呈して守って下さった花、なのです。

 私が大切な方に渡したいと、そう言っていたから……」

「大切な方……っ、そ、それって、ひょっとして……」

「……はい、ローレンス様です」

 私の言葉に、ローレンス様は驚き目を見開いて、顔を赤くする。




「っ、ろ、ローレンス様、お顔が赤」

「そ、それは言わないで! つ、続けて」

 お願いだからそんなに見ないで、とローレンス様は少し顔を逸らして私にそう促す。

 私はそんなローレンス様が可愛く見えて、ふふっと笑うと、「この花には、意味があるんです」と言った。




「意味?」

 不思議そうに尋ねるローレンス様に、「花言葉、というんです」と言って頷くと、これは言うつもりではなかったんですが、と付け足した。




「花の種類には一つ一つ、意味があるんです。

 この花は、赤いガーベラ。 そして言葉の意味は、“前向き”、そして“愛情”」

「!」

 ローレンス様は驚いたように私を見る。




「ローレンス様に告白をしようと、そう思っていたわけではなくて、ただ、私の気持ちを花言葉に乗せて、花言葉は言わずに花だけ贈ろうと、そう決めていたんです。

 ……でもその矢先、あんなことがあって、クラリス様が守ってくれたお花になって。

 より一層、大切なお花となって、ローレンス様に贈りたいと、そう強く思って……それで、まさか、ローレンス様が、私に今日、告白してくださるとは、思って、いなくて……」




 涙が出てきて、言葉が途切れ途切れになる。

 その涙を見たローレンス様は、指で優しく私の目元を拭ってくれた。

 ぼやけた視界がその手によりクリアになったことで、ローレンス様の目にも涙がたまっていることに気がつく。



「……ミリア嬢……いや、ミリア、俺は本当に、君にもらってばかりだ。

 ……でも、それでも俺は、君のことが好きなんだ。

 ……好きだよ、ミリア」

「ろ、ローレンス、様……。

 わっ、私も、ローレンス様を、ずっと、お慕い申しておりました……」





 私とローレンス様は、互いにそう言って微笑み合う。






「今度は、俺が君を守る。

 “悪魔”からも……君に害をなす者は、決して許しはしない。

 ……クラリスの時は、恋だと自覚していなくて、たまに夢を見たことはあったけど、アルが婚約者ならと諦められた。

 ……だけど、君だけは……ミリアだけは、絶対に誰にも譲れない。

 ……だから、ミリア。 俺の隣に、ずっといてくれる?」

「っ、はい! 私はずっと、ローレンス様のお側にいたいです……!」






 私の言葉に、ローレンス様は私の大好きな笑顔を浮かべ、そして真剣な表情になる。

 その金色の瞳の奥に、熱がこもっているのを感じながら、私はその瞳の中に、私が映っていることが信じられなくて、一筋、涙が頬を伝う。





 そんな私の顔に、ローレンス様の顔が近付いて、もう少しで唇が触れそうになったところで、ローレンス様はハッとしたように止まり、バッと引き離された。

 ローレンス様? と言いかけようとしたところで、ローレンス様はじっと私を見て言った。




「そういえば、何か勘違いしているようだから言っておくけど……俺は、もうとっくに、クラリスのことは吹っ切れていたよ。

 ……4月に君を、一目見た時にね」

「……!? え!!」



 私の驚きに、ローレンス様は、あぁやっぱり、と苦笑いをする。

「……あの時……ガーデンテラスで、君と話した時、“初恋話”としてクラリスのことは出したんだ。 紛らわしいことをしたけど、一応クラリスが好きだったことがバレてたから、初恋の人がクラリスだってことを話してからミリアにちゃんと、告白しようって」

 その言葉に、私は呆然とする。




「じゃ、じゃあ、あの後……ローレンス様が、過去の話をした後に、言いかけてたのって……」

「あはは……ごめん。

 初めて会った時からミリアが好きで、クラリスは初恋の人だから無罪を証明したいだけなんだって、訂正しようと思ったんだけど、タイミングを失って……」

「い、いいえ!! 私が最後まで聞かなかったのが悪くて……でも、嬉しい」

 ずっと、ずっと、私とローレンス様はとっくに、両思いだったんだ……。




「……ミリア、」

 ローレンス様は私の名を呼び、再びその端正な顔が近付いて……唇が触れ合う直前、ローレンス様は私を見て言った。







 ―――愛してる、と。









これにて二人の恋愛は終了です!書いていて一番ハラハラしました…。まどろっこしすぎたかも…。すみません、分かりにくくて…。

次回、夏休み編スタート!5話くらい…続きます(すみません、本当に長くて)甘さ多めです!

その前に今晩、ホワイトデーならぬバレンタインデーを出します〜!

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