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ドジっ子な悪役令嬢は、今日も色々と空回り中。  作者: 心音瑠璃
第1章 恋の魔法にかけられて
25/113

24.ゲーム上の終幕は

「ん……」




(……ここは……)




「……保健、室……?」

「ひ、姫様ぁぁぁっ」

 呆然と私が呟けば、制服姿のルナがガバッと抱き着いてきた。



「……ルナ、時間がないからそういうのは後にしてくれないか」

「あら、貴方が何故ここに……?」




 私がそう呟けば、グレーの髪を持ち、綺麗な顔に眉間の皺を寄せながら、大きく溜め息を吐くローレンスの執事・シリルの姿があった。



「……全く、人使いが荒いんですよ、主もアルベルト様も。 ……特に貴女絡みになると、アルベルト様はいつも形振り構わないんですから」

 そう淡々と言うシリル。



「そう言うシリルこそ、そんな愚痴言ってる暇があったら連れて行ってくれない!?

 もう、いつも貴方は表情に欠けて、人に誤解されやすいんだから!」

「それは今は関係ないと思うが」

 さっき注意されたルナが今度は私の番だ、と言わんばかりにぷんぷんと怒り始め、シリルはそんなルナに冷静に反論する。



 このままだときっと二人の応酬が続いてしまうと思った私は、さっきのルナの言葉に疑問を持った点を問うことにした。

「行くって……何処に?」



 私がそう尋ねると、「あ、そうでした!」とルナは説明してなかった! と言い、シリルは大きく溜め息を吐く。



「……本当に、貴女は……」

「シリル、黙ってて!

 ……いいですか、姫様。 あまり時間がないので端折りますが、今日は“表彰式”の日です」

「……えぇっ!? 待って、端折り過ぎて頭が追いつかないわ!

 私、どれくらい寝てたの!?」


 だって、表彰式は7月の初めなのよ!?

 なのに……



「……姫様は魔力回復のため、長くお眠りになられておりました。 今日でちょうど10日間ですね」

「……ちょっと待って、本当に頭が追いつかないわ」



 10日間!? え、私そんなに長く眠っていたの……?



(……魔力回復って、そんなにかかるものだっけ? でも、どうして……)




「混乱するのは分かりますが、表彰式はもう始まっている時間です。 行きましょう」

「姫様、軽くお支度を致しましょう。 表彰式には必ず参加しないと!」

「え、え、でも……」

 シリルとルナの言葉に、私は狼狽える。



(私、まだ心の準備が……)




そんな私の動揺を見向きもせず、シリルは持っていた懐中時計を見て口を開いた。


「……とりあえず、タイムリミットは15分としましょう。 それまでに、制服に着替えてその髪型も何とかして下さい」

「あら! 女性の支度にそんなに時間がかからないとお思い!? シリル、貴方酷いわね!」

「仕方がないでしょう。

 表彰式に間に合わせないと、私がローレンス様とアルベルト様に怒られてしまいますから」



 早くお願いしますね、とシリルは付け足して、保健室を出て行った。





「姫様、早く支度です! さあ、起きられますか?」

「え、えぇ、ちょっと体は、重いけど……」



 足が少しフラフラする。 眠っていたせいなのだろうか。



「では、私もお手伝いしてパパッと終わらせますね! クラリス様、少々辛抱下さいませ!」

 そう言って、目にも留まらぬ速さで私の着ていた部屋着を脱がし、制服に着替えさせるルナ。

「……ふふっ、ルナ、本当にありがとう。

 ……今日で、悪役令嬢のお仕事はおしまいよ」

 そう言うと、ルナはハッとした顔で私を見上げた。



「……えぇっ、そ、それは……!」

 ルナはゆっくり微笑むと、私に向かって頭を下げた。

「……クラリス様、お疲れ様でした。 私はどんな結果でも、姫様のお側を離れるつもりはございません」




 その言葉に、私は頷くと、「有難う、ルナ」と言って、二人で微笑んだ後、又急いで支度を整えたのだった。








「さぁ、いいか、もう行くぞ」

「……そういえば、どうやって?」

 私の問いに、さすがにルナも唖然とする。 そしてシリルは「もう説明するの面倒」と、敬語を使わずぼやくと、パチンと指を鳴らす。



(……あ、思い出したわ、最近見てなかったけど、シリルの魔法は瞬間移動……)






 こうして私達は、保健室から一瞬で表彰式の会場へと、飛んだのだった。






 ☆









 ストッと降ろされた場所は……





(え……?)







「な、な……!?」






 会場の、舞台の上だった。





 当然、皆何事だと私を見て大騒ぎになる。





(し、シリル〜〜!? 貴方一体何を考えているのよ!!)

 シリルとルナだけ何故か、目立たない場所にストンッと降り立っていた。

 ルナなんか、グッと私に向かって何故か親指を立てている。



(いや貴女、主人を置いて何やってるのよぉぉ)




 私はとりあえず立ち上がろうとしたけど、足に力が入らなくて座り込んでしまう。




(うぅっ、こんな姿、衆目に晒すことになるなんて……!)





 この学園の王族なのに、これでは後で校長に怒られるわ……!





 なんて考えていたのも束の間。







「静粛に!!」






 と声を上げ、皆が一斉に静まり返り壇上を見上げた。 そこに立っていたのは、お父様と、その隣にいるのは……









「……アルベルト様?」







 こちらを見て、にっこりと笑って「来た」と嬉しそうに言う、アルの姿だった。







(……え、え、ちょっと待って、壇上に、アルがいるってことは……)








 ……これは、もしかしなくても、アルベルト様エンド……!?









(表彰されているのは、アルで、確か表彰される人が、ルートのエンドに繋がってて……っ)

 グルグルとあまり活性化していない頭で考えていると、アルが「校長、良いですか」と口を開いて、校長から許可されるとゆっくりと、凛とした声で話し始めた。





「その場で聞いて欲しい。

 ……今回、このような賞を貰ったことは、私はとても嬉しい。

 だが、この賞にはもっと、私よりも相応しい者がいる」



 その言葉にざわつく会場。




(あ、アル!? 貴方、一体何を考えているの……!?)




 しかも、エンディングではこんなシーン、なかったはず……!




(……シナリオが、変わっている……?)






 私は一つの答えに辿り着き、ハッとしていると。






「その人は……





 クラリス、貴女だ」








「え……?」






 壇上でアルは、アクアブルーの瞳で真っ直ぐと私を見て、そうはっきりと告げたのだった。





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