表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドジっ子な悪役令嬢は、今日も色々と空回り中。  作者: 心音瑠璃
第1章 恋の魔法にかけられて
24/113

23.王子様と、悪役令嬢の望み

 



「……さて」



 僕は眠ってしまった大切なクラリスをルナに預け、視線をゆっくりと御令嬢に戻すと、口を開いた。




「……説明してもらおうか」

「あら、何のことですの?」

 冷ややかな笑みを浮かべるこちらに対して、侯爵令嬢は不敵に笑う。

「質問を、変えたほうがいいか?

 ……お前はどうして、その侯爵令嬢に取り憑いている」

 その言葉に、令嬢は動きを止め……そして狂ったように笑い出した。



「はははは、さすがにバレるかぁ。 ……まあ物語のヒーローがそうでなくちゃ、面白くないんだけど」

「……物語?」



 急に口調が変わり、ケラケラと笑う令嬢は、宛ら悪魔のようだ。

 ……いや、取り憑いてるのは悪魔だから、宛らではないだろう。



「はは、そうだよ、物語。 僕の中では皆、面白いキャラクター達さ」

「……そんなつまらない物語に、僕達を巻き込むな」

 そう僕が言うと、「は?」と笑うのをやめ、不機嫌さを醸し出す悪魔。




「……何を言っているんだ、それを言うならちゃんちゃらおかしいね。

 だって巻き込まれたのはあんた達じゃない。

 僕さ」

「は?何を言っている」

 僕の言葉に、「まだしらばっくれるの?」と怒気を強くして言った。




「忘れたとは言わせない。 あんた達が……8年前に起こした、あの事件のことだよ」

「!? 何故お前がそれを知っている!!」

 すると、痛みに顔を歪ませるように悪魔は「はぁ? そんなの決まっているだろ」と背筋が思わず凍るような声で言った。




「俺がその事件の被害者だからさ。

 ……あんた達が、俺達の生活を全部、台無しにした」

「……何だと」

「信じるか信じないかは、あんた達次第だよ。

 ……だから今度は代わりに、あんた達の大切なものを全部、潰していってあげる。

 一つずつ、ね」

「……おいっ、待て!!」



 令嬢から出て行く寸前、悪魔の後ろ姿が一瞬見える。






(……黒、髪……)







 “黒髪”。 黒色は、この世界では差別されている色だ。

 魔力によって変わる髪や瞳の色。 何も魔力を持っていない人々は茶色。

 それ以外で稀に、黒色の髪を持って生まれてくる人々がいる。

 ……いるのは知っていたが、初めて目にした。






 そんな黒髪の悪魔が一瞬で消えたのを見て、呆然とその場で立っていると、ローレンスとクレイグが走ってくる。





「アル、今のって……」






 僕達以外……ルナやミリア嬢、クレイグ以外の時を止めていたローレンスは、倒れた令嬢の姿を見て困惑の表情を浮かべる。





「……とにかく、今は後始末が先決だ。

 ローレンスは“記憶使い”の所へ行って、操られていた彼女の記憶を一応消しておいて」

「……クラリス様の記憶は……?」

 おずおずと、ルナは抱えていたクラリスを見ながらそう聞いてくる。




「クラリスは……いい。 一応、このままの記憶で残しておこう」

 俺がそう答えると、ルナは慌てて言う。

「で、でも! それでは、クラリス様の()()()の記憶が……」

「駄目だ、それ以上は。 ……言っちゃ駄目だ」

 ルナの言葉を遮るように、クレイグが首を振りながら言って止めた。




「……じゃあ僕は一回時を動かすよ。 ……最近時を動かしてばっかりだなぁ」

 後で怒られる、とぼやく幼馴染に、「すまない」と頭を下げると、「いや、幼馴染を見捨てたくはないから」と笑って、ローレンスがパチンッと指を鳴らせば、時がまた動き出す。




 ローレンスが驚きで固まっていたミリア嬢を呼び、一緒に離れて行くのを見計らってクレイグに呼びかける。

「クレイグ、御令嬢方は保健室で休ませろ。 ……すぐに、“記憶使い”に記憶を封じてもらうから」

「はっ、お任せを」

 そう言ってクレイグは、少し硬い表情を浮かべながら指示通りに動き出す。





「……クラリス」





 彼女の瞳には、うっすらと涙が滲んでいた。


 それをそっと拭うと、僕はルナに頭を下げる。



「な、何をやっているのですか、殿下!? そんなことをしてはいけません!!」

 慌てたようにルナが悲鳴に似た声で言う。

「……いや、全部俺の責任だ。

 彼女のことは安心していい。 全部、分かっているから。

 ……全部、僕が方を付けてくる。

 だから、僕がいない間は彼女を宜しく頼む」

 そう言うと、ルナは「お任せ下さい」と言った後、僕にこっそりと、あることを耳打ちするのだった。





 ☆








「エンディングが庭園でだなんて、素敵……!」




(これは……前世の私)




 ゲーム画面を見て、嬉しそうに目をキラキラさせる私はそう叫んだ。




「しかも告白場所は、“表彰式”!! ……はぁぁもう、これはやばいわ……!」



(表彰式って……)






 1つしかない。

 ランドル学園の夏休み前に行われる行事で、この3ヶ月で1番頑張った者を表彰する式典。

(……ランドル学園の式典が、私とミリアさんのエンディングっていうわけね……)




 これで、最終的にミリアさんがどのルートで、何のエンドかが決まる。




(……これで私のクラリス・ランドルの悪役令嬢としての役割は、終了か……)





 漸く、クラリスの演技が終わる。





 ……そして、アルに婚約破棄されるかが決まる。






(でも、もういいの)






 アルが誰を選ぼうと、私には素敵な思い出をくれた。






 クラリスの悪役令嬢として、5つ目という最後の仕事で、アルが助けてくれた。






(……もう、これ以上望まない……)








 そう、決めたのに。






(……何で涙が、止まらないの……!)







 私は顔を目で覆う。








(駄目よ、私! これ以上、何を望むと言うの……!)










 ―――……クラリス、起きて。







(……っ、この声は……)







 ―――……もう、大丈夫だよ。







 だから、早く起きて……―――







(……あぁ、この声は……)







 私はゆっくりと、目を開けた……。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ