20.運命と悪夢
とても短いですが、後の話に凄く重要なので、頭の片隅に入れておいて頂けると分かりやすいかなと思います。ただ、描写が流血表現はありませんが、微シリアスなのでご注意下さいませ。
―――「……クラリス様は、心根の綺麗な、優しい人だってこと、信じてますから」
その日の夜。 ベッドに入ると、今日のことが思い出される。
……それは、庭園でのあの時の彼女の言葉。
その言葉が全く頭から離れない。
(何であの子は、そう断言出来るの……?)
1つ目と2つ目は、あまり成功と言えないから省くけれど、3つ目と4つ目は酷い仕打ちでしかない。
彼女の形見を奪う形になった“クラリス”。
彼女の目の前で教科書を燃やした“クラリス”。
(……あの子の目は節穴なのかしら……!?)
見ているこっちが、ミリアさんが良い子すぎて虐めるのなんて馬鹿みたいに思えてくる。
(……何で私は、こんなことをしているんだろう……)
悪役令嬢とは何なのか。
悪役令嬢ポジションにいる私を、ドジで不幸体質にした神様は一体何がしたいのか。
そして何故、あんなに性根の良いミリアさんをヒロインにし、私には勿体無いくらいの侍女と素敵なアルが婚約者なのか。
(……もう、訳が分からないわ……)
それだけメリバを迎えさせたいのか。
悩むのも時間の無駄なような気がしてきた私は、ふーっと長く息をついてゆっくりと瞼を下ろしたのだった。
☆
「……ここは、どこ?」
……何か、焦げ臭い匂いがする。
……火の、ゴォゴォと燃える、嫌な音。
……熱い、体が燃えるように熱い……!!
体の芯から何かが凄い勢いで流れて、私の意識が飲み込まれそうになる。
(やだ、燃えちゃう、誰か、助けて……!)
その視界の隅で、誰かが倒れている。
……見慣れた、紺色の髪。
(……っ、あの人は……)
「ア、ル……?」
私の呟きに燃え盛る火の奥で、ゆっくりとこちらを見た目は、アイスブルーで。
彼が、私に何かを叫んで、手を伸ばそうとしたが、彼は力なく倒れこむ。
その姿を見て、目の前が真っ暗になって、いよいよとめどなくなく私の体の中で何かが流れ出す。
「アルーーーーーーーーーー!!!!!」
☆
「……っ!?」
ガバッと起き上がると、まだ外は薄暗かった。
目には、涙がとめどなく溢れる。
ガタガタと震えながら近くにあった鏡を見れば、汗だくになっている私。
(何て夢……)
それが夢だと分かったことに安堵しつつ、やけにリアルで怖い夢だと、私は呟いた。
(……もう、寝られそうに無いわ)
私はカラカラになった喉を潤すべく、近くに置いてあったグラスの中に入った水を、一気に飲み干した。
……その水が喉を潤す感じは、不思議と前にも感じたことのある冷たさだ、とか、自分でもよく分からないことを考えながら、ぼんやりと私は手を見つめる。
……火が、怖いものなのは知っているはずなのに。
あんなに凄い勢いで、物を破壊していく火の様を、初めて見た。
……いや、初めてではないのかもしれない。
(……でも、何も覚えていない……)
この夢の話は、後の大変なことに巻き込まれていくのだが、それはまた、もう少し先のお話である。




