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もし「魂」が無くなったら僕はどうするか

作者: ちせ

 

 20XX年、6月のある日


 世界中の人々の頭の中に、世界中の人々が理解できる言葉で、同じ内容が何かから届けられた。



「私は神様です」

「魂の貯蔵が尽きました」

「もう、魂の持った命は生まれてきません」

「輪廻の輪は壊れました」

「神の劣等種たる人間よ、リミットは尽きたのです」



 最初は何を言っているか誰もわからなかった。

 全員が全員、寝ている人は夢だと思い、起きてた人は幻聴だと断じた。

 だって、突然言われた言葉を理解して受け入れるには余りにも重すぎたし、意味がわからなかった。

 でも、みんながみんな同じことを囁くものだから誰もが不安に包まれた一日を過ごした。


 次の日、変化はなかった。

 けど、その次の日に恐ろしいニュースが挙げられた。



 前日出産した赤ちゃんが全て死産

 鶏の卵の中身が全て空

 ジャイアントパンダの芽芽の出産失敗



 普段の内容からすると余りにも異様で、悍ましくて、僕の体は知らずのうちに震えていた。



 あの声は、何か超越的な存在で、言っていたことは全て本当なんじゃないか?


 本当に、もし本当に、あの声が言っていたことが真実ならば僕は、しなくちゃ行けないことがある。



 僕は覚悟を決め、その日は高校を休み、通帳から全てのお金(お小遣い)を引き出し、ある場所へ向かった。

 ある場所とは、そう……











 肉屋だ。



 __




 あの声は言っていた。

「魂の貯蔵が尽きました」と。

 では、魂とは何だ。それは今まで不確かなものとされてきた。

 では、あの声が真実だと仮定して、あの声が言っていた「魂」とは……

 声はこうも言っていた。「魂の持った命は生まれてきません」、これを言葉通り捉えると「魂のない命は別である」と考えることができるのではないのだろうか?

 そこで生物を区分けできるとするとそれは、「動物」と「植物」ではないのか?


 現に「動物」である人間の子供と、鶏の卵と、パンダの赤ちゃんは亡くなっている。

 それは、植物がそうならないとはならない。けど、そう考えてしまうと一つわかってしまうことがある。



 これから先、お肉は貴重品になるのではないかと。



 仮に、植物も動物もこれから生まれない未来があったとしたら、人類は確実に詰む。

 よってこれは考えても意味がない。

 次にあるのが、「動物」は生まれないが「植物」は生まれる場合だ。

 この場合、肉は瞬く間に人々の胃に収まり、干し肉ですら手の届かない高級品になってしまうのではないかと思う。


 それは、駄目だ。

 俺は、お肉が大好きだ。

 国産品でも輸入品でも高級品でも安い部位の肉すらも、俺は好きだ。


 正直に言おう、俺はお肉を愛している。

 特に牛、俺は牛を愛している。

 俺の両親は普通の会社員だけど、俺は親の反対を押し切って高校は畜産科に入った。

 それ程までに牛が好きなのだ。いや肉をだ。


 だから俺は、俺が対処できる最悪の可能性を考えて肉屋に赴いた。

 とにかく量を、保存品は自分で作ればいい。

 とにかくたくさんお肉が欲しかった。



 __



 あの声を聞いたから一週間が経った。


 世界は今、混乱につつまれている。

 神様は本当にいたんだとか、世界終末論とか、

 確かにもう人が生まれないとなると、人類は滅びの道に向かっていってる。

 そんなことお肉のこと考えすぎて眼中になかったわ。


 そして、これからの食料事情もワイドショーに出ていた。

 植物は問題なくこれからも生まれるということ、そしてお肉はもうこれから先口にできないほど高級品になるかもしれないこと。

 価値はどんどん暴騰して、二ヶ月後には金より価値が出るかもしれないこと。

 先見の明があったと俺はほくそ笑む。

 さすがすぎる……、ま、自分で全部食べちゃうんだけどね。


 そして、

「いや〜肉がこれから食べれないとなると困っちゃいますね〜」

「困るってもんじゃないですよ!特に畜産を生業としてる人はこれから先働き口を失ってしまうことになりますし……」






「あ」

 俺、就職先見つかるかな……?









何でこんなのを書いたのだろうか

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