切なく、儚く、散るテスト。
テストがきた。なんの脈略もなく口にするのも無理はない。まだ大丈夫だ!とか言い続けてたら、なんか知らないけど、テストがきた。ほんと勘弁して欲しいです。あいつは突然やってきます。
ちょ、まてよ。突然やってくるあいつとか、どっかのバカうめぇみそかつ屋を思い出したじゃねぇか。
これこれこのぼっち、くそかすヤバ人♪と、ご当地ネタをかましていく自称天才こと真谷村天神は、7日間という中途半端に短い時間に追われながらもテスト週間を颯爽と駆け抜ける。
まぁ、颯爽と駆け抜けたところで傷だらけなんですけどね…。
とにもかくにも、おれの…いや、おれたちの。
このろくでもないテスト週間を…刮目せよっ!!!
…これ、前書きでいいよね?
いや、これは前書きだっ!…そう信じたい。
テスト週間。
中学生史上最もやる気がなくなる一週間である。
自室の壁に張ってある学校配布のカレンダーに目をやると、今日からの七日後の備考欄までにかけて、妙に気合いの入った習字チックな字体で「テスト週間!」とだけ印字してある。
テスト週間。
それは、学生のヘルウィーク。
まだ大丈夫だ!と言いつづけ、気づけばテスト週間と対峙していたおれは、それはそれは深いため息をつくばかりであった。
しかし、たとえおれがどれだけテスト週間にうんざりしていても、テスト週間というものは始まる。
…いや、もう始まっている。
いくら努力しても苦痛であり、ことさらに、たぶん、いつものように不毛な結果になってテストが返ってくることが目に見えている。
それでも、おれはきっとテストという現実を受け入れなければならない。いや、受け入れざるを得ない状況に置かれるんだろうなぁ…。
学校で先生にテストの始まりを告げられた時は思わず、
「えぇ~!僕にテストなんて受けさせてくれるんですかぁ~?内申点くれるだけでいいのにぃ~!」と叫びたくなるくらいにまでやる気は無かった。
普通の人は、「うわぁ、めんどいなぁ~」とか言いながらも少しはやる気になるものだが、おれをなめてもらっては困る。
おれのやる気のパロメーターの指針は常に永遠のゼロを指しているので、やる気、元気、○わき。…とかいわれても、感情とか根性で物事が全て上手くいくならそもそも人間、こんなに悩んでないと思う。
うわぁ~、これ昭和のおじさんたちに言ったら超怒られそう。あの人たち超ロジカル嫌いだもんなぁ。
それどころか、妙にエモーショナルですらあるからな。
もしかしたら昭和生まれのおじさんたちはロマンチストな乙女なのかもしれない。
昭和の人たちの教えは、おれみたいな平成の若者には理解できないし、逆に、平成の若者の教えは、昭和のおじさんたちには理解できない。
だからむしろ、分かり合おうとすることのほうがおかしい。教えが違えば、至る結論も違う。今更こんな当たり前のことで悩んでいても仕方がない。
だからまぁ、fifty-fiftyということで。
…はい。今、日本は平和になりましたとさ。めでたしめでたし。
国を一つ平和に治めたところで、そんな救世主ならぬ急逝主は今日も今日とて、終わりそうにないワークにひたすら顔を向かい合わせている。
かつて、出された課題を進めるために手に取ったシャープペンがこんなにも重く感じたことがあったのだろうか。
なにしろ、中学三年生のテストの結果=高校を意味する。高校を意味するということは自然と大学を意味することは容易に想像できるだろう。
だから、人生を意味すると言っても過言ではない。
つまるところ、俄然手に取るシャープペンのウエイトが増す。
もしやこの重さは人生の重さなのかもしれない。
やっべ、人生をシャーペンに背負う俺かっこいい!
ちなみに、俺の年齢=彼女いない歴を意味する。
これ豆知識。
やっべ、青春をドブに捨てた俺かっこいい!
テストを体現するのなら「人生をかけた戦い」なんて言ってみればかっこよく思えるかもしれない。…が、しかし、残念ながらそんなかっこいい戦いではない。
テストというものを体現するのならば、暗闇でいきなり殲滅戦が始まるようなものだ。
それも、とびっきりの泥試合。
いつものように平和に「へーきへーき!学生によって得意なこと違うから!」とか、言いながら調子こいて過ごしていると、いきなり辺りが混沌とした暗闇(親の謎の圧力)に包まれスマートフォン、PC、ゲーム機を使うことが少々憚られる。
そして、「一週間やる、戦いの準備をしろ」とくそ生意気な教官らしき人物に告げられたら最後、「テスト 終わりの始まり」というタイトルで映画が公開されそうな勢いでかなりホラーな一週間が始まり、真面目に鬱になる。
やっとの思いで、その一週間を乗り切ったのも束の間、一難去ってまた一難。
今度は同じ時を共にした友達(笑)との殲滅戦が待っている。
…とはいっても武器はペンと紙なのだが。
よく、「ペンは剣よりも強し」と聞くが、確かに現実的に考えて社会的な伝達力を意味する「ペン」は直接的な暴力である「剣」よりも社会的に認められやすく、より多くの大衆を味方につけることができ、思念体としてコミュニティが形成されやすいので統合力としては圧倒的優位にあると言えるだろう。
しかし、ペンで事実を伝えようと紙に真実を書き記している人間が、いきなり、剣という刃を突き立てられたら、彼らはきっとすぐにペンを置くだろう。
結局、だれがペンを持つかは社会的な力ではなく、反社会的な力を持っている一部の人間が決めているのかもしれない。
人が人に与える影響というものの正体は極論、行動だ。
行動力が最終的にすべてを決するのであれば、あながち「剣はペンよりも強し」といっても間違いではないような気がしてきた。
まぁ、バカとハサミは使いようとも言うし。
バカを上手く扱えるほどの人間は同時にペンの扱い方も心得ているのかもしれない。
よく考えれば、思想も暴力も異なる正義を持った人々をまとめ上げ、結束させるためだけに創られた緩衝材にすぎないのかもしれないな。まぁ、暴力のほうが簡易で強力だから行動力の差で勝るだろうけど。
よぉし、「剣」のほうが強いなら、今度から計算してるやつの顔面をぶち蹴り飛ばそう。おれは、強い。(震え声)
やる気ないやつ特有のくだらない妄想にひたりながらも問題集のページを繰る手は止まっていない。
どうやらまだ集中できている自分を見失ってはいないようだ。
…しっかし、問題集ってやつは日本語が分かってないな。「次の問題を解きなさい」とか。
なんでこいつら敬語つかわねえのかなぁ。
「解いてください」だろ。
初対面で命令形とか失礼極まりない。
命令形で人を動かすとか…いきなり、「面白いことやって」って後輩に無茶ぶりする運動部内の同学年だとカーストが低くて威張れない実は悲しい先輩かよ。
一人で文句を言いながら、なかなか長考する羽目になった「問.1」ともそろそろおさらばだ。
さぁて、次の問題っと。
「問.1」の文末の真下に目をやれば、これまた同じような感じの小難しくもこざかしいニュアンスの「問.2」が待ち構えていた。
えーと、なになに。
「次の問題を解きなさい。ただし、以下の条件の場合とする」
…お客さん困りますぅ~!当店では、命令の二度付けは禁止となっておりますぅ~!
ほんと、まじでやめて。ノーモア、命令の二度付け。
おれの解答という名の秘伝のソースを汚すな。
問題に条件とか増やすと後で答えが見にくいだろうが。
ん?なになに?答え見ちゃダメだって?それは、たぶんいつかきっと、気をつけます。デュフwwデュフフwwコポォww…っと危ない危ない。
問題集が進まなすぎて、SAN値が急降下して正気を失いかけていた。諦めないで、あなたのSAN値を。
正気を失っていたからか、問題集から「あれれ?こんな問題も解けないの?ププッ!へーきへーきw学生によって得意なこと違うからw」(白目)と言われているような気がしてならない。
幻聴でしょうか?いいえ、だれでも。
憤りを覚えながら問題集を進めれば、今度は解答を書き進めるたびにシャープペンの芯がポキッと折れる。しかも、連続で。
ため息をつきながら書きそこなった文字を消しゴムで消そうとすれば、今度は消しゴムがヘタって折れた。
お前にSAN値を救えるか?無理です、ごめんなさい。
心臓にどこか得体のしれない痛みが走った。いや、救心とか服用しても治んない痛み。これは、ヤバみ。
どうやら、俺の精神にハートブレイクショットが決まったようで、心が折れた。あっ…やる気ってなんだっけ?思い出せない。あと、燃え尽きそう。あ、燃え尽きるのは違う漫画か。グッバイ、おれの豆腐メンタル。
筆箱を見やれば、シャーペンの芯は今ので最後。消しゴムはボロボロ。ついでに問題集ときたら提出の範囲まであと25ページある。
これはもう相当、勉強する気が失せる。タダでさえ勉強する気ないのに。
あの…僕、がんばったよね?もうゴールしてもいいよね?
リラックスモード突入寸前の倦怠感と、この味気ない文房具たちの迫害と、なによりも、全く進まない問題集の嘲笑とが重なり合って、それがまるで僕のテストの結果を物語っているような気がした。
ほんと、文房具と問題集の奏でるデスハーモニー。不協和音すぎる。
もうやだ。お疲れ様です、正気のおれ。
「ねぇぇ!シャーペンと問題集が僕をいじめてくるぅぅぅ!!!あと、消しゴムもぉぉぉぉぉおあぁぁぁぁぁぁ!エンダァァァァァァァァイヤァァァァァァァァ!!!」
鬱憤満載の叫び声をあげていると、隣の部屋の住人の「ドォン!」とこれまでに無いほどの改心の一撃。超絶怒濤の壁ドンをくらい正気に戻った。効果は絶大のようだ。
正気に戻ると、水に浸かったアンパンを配る生物の如く全身の力が抜けた。
やっぱりマンションって何かと壁ドン案件あるから叫べんな。
ましては夜中に叫ぶとかなりやべぇ。
幸い、今日は父親が夜勤で、母親は祖母の用事があるだとか言ってたから真夜中にしか帰ってこない。だから誰からも怒られることはない。
安堵と同時にかくっと首が落ち、視線が下がる。
すると、机の上の忌まわしい勉強用具たちが目に飛び込んできた。机上に嫌気がさし、それから顔を遠ざけるように体を後ろにのけぞると安物のリクライニングシートがギシギシと音を立てながらバランスを保っている。
…この椅子もそろそろ寿命かな。
なんでテスト週間に限って掃除したくなったり、物の寿命がきたりするの?テスト週間に断捨離効果ってあったっけ?危うく部屋の不要物を捨てると同時にテストまで捨てそうになるんだけど。
ところでテストって可燃ごみかな?超燃えるよね、だっていつも大炎上だもん。ほんと、火炎体制が欲しい。
このまま、一週間か過ぎてゆくんだろうなぁ…。
そんな予感が頭をよぎるのはいつものことだから、気にせずそのまま頭の後ろで手を組み、体はリラックスモードへ突入していく。
絶賛リクライニング中の椅子から見上げた視線の先にはどこの家にも必ずあると言っても過言ではない天井にこびりつく謎のシミ模様を眺めながらひたすらうだつの上がらない妄想にふける。
はあ、テストの点が召喚獣の攻撃力になったりしないかなー。そうすれば学年一位取れるのにな。
まさしく、バカとテストと非リア充だな。オモロイナー。
まずい、明らかに勉強できない奴の想像をかます程度にまでやる気のパロメーターが下がっている。
まぁ、もともと勉強できないことからは目を背けよう。一回このセリフ言ってみたかっただけですごめんなさい。
…なぜだろう、テスト勉強してるだけなのに自己嫌悪してるよおれ。
あーあ、やる気のデフレスパイラルだなこれ。学力の縮小が感じられる。学力は衰退しました。
気づけば、どうしようもない気持ちで胸がいっぱいになって、もうどうでもいいとすら思い始めた。
ゆっくりと瞳を閉じれば耳に痛いほどの静寂の訪れを感じた。
そして、それと同時にゆっくりとやってくる気持ちは、やはり憂鬱なものだった。
絶えず思っている気持ちが、思い留めているだけのこの気持ちが、この日ばかりは言葉となって口からこぼれる。
「はあ、勉強したくねぇ」
このように、テスト週間というものは、とにかくため息の多い一週間であるというのはきっと、どこの誰でも一緒のことだろう。
それを分かっていながらもがんばれない。それが、おれみたいなダメなやつの特殊能力なんだろうな。
まぁ…そんな日は、ため息と一緒に憂鬱な気持ちも、陰鬱な心持ちも、全部吐き出してしまえば少しは楽になるものだ。
それにしても、理不尽なことばかりだな。学校も社会も。
平等に与えられた条件下で努力し、その努力量が点数に。
良いものは上へ、悪いものは下へ。力なきものは自然淘汰され、生にしがみつき、泥水をすすって生きることとなる。
生まれも育ちも、食べるものも飲むものも、歩く道も履いている靴も違うのに、皆が定める平等とは一体何なのだろう。
とりとめのない疑問が交錯してばかりいるおれは、これから先、いや、数年先にある社会を、どう生き抜いていけばよいものか、考えたくもないな。
瞳を閉じた静けさの中に、カチ…カチと鼓動のように等間隔に響く、聞き覚えのある音が紛れ込んでいることを思い出した。
それが次第に耳障りになってきて、おもむろに目を見開き、右にある壁掛け時計の針に視線をやると、長い針も短い針も12の文字を指し示している。
夜の帳などとうの昔に降りた今、自分の部屋には、ただ静けさと壁掛け時計の時を刻む音だけが残るばかりだった。
再び瞳を閉じれば今度はどこか心地よい静穏な空気の流れを感じると共に、うっすらと目を細めながら椅子から立ち上がり、数歩先にあるベッドに倒れ込んだ。
おやすみ、地球。
夜が明ければいつものように憂鬱な朝が待っている。そして、いつものように朝に起きて、腹ごしらえをして、家を出る。こうして日常ってもんは過ぎてゆく。
当たり前のことを当たり前と認知した時に人はそれを常識として生活の一部に落とし込む。
だから、孤独というものは一般的に異常なものなのだが、時を重ね、涙を飲み込み、その悲しさが日常に溶け込んでさえしまえば、人は孤独を正常と化してしまう。
いわゆる常態化というやつだな。
人間の常態化という性質はたちが悪く、主観と客観に大きなズレを生じさせる。
異常が正常に。ともすれば、悪が正義に変わることだってある。
ほんとやめてほしいよね!?これにどれだけ苦しんだことか。マジで人間のバグだよこれは。パッチ修正いつ入るんだよ。ちょっと、運営さん?しっかりして。
人間の運営へのクレームを考えていると、気づけば僕は学校にいて、そこからタイムリープ能力に目覚めたかと思うくらいに瞬く間に時が過ぎていった。
ほんと、世界中の研究施設にいる能力者を救うためにタイムリープし過ぎて視力失うかもしれない。そろそろシャー○ット彗星落ちてきそう。
テスト週間中の授業といものは不思議なものだ。
授業中にふと、頬杖をつき、ゆっくりと瞳を閉じる。すると、なんということでしょう。
あんなにも退屈だった授業が一瞬にして終わっているではありませんか。
これはまさに、細やかな匠の気づかいというほかないでしょう!
あはは!もう最高!まさに、愉悦!
ははは!なにしてんだろ、おれ…。
だるい授業を快眠して過ごせば心が少しは楽になるかと思えば、シャキッと爽快になるわけもなく、元気ハツラツにもならなければ、ぽっぴんじゃんぷで、心がピョンピョンするわけでもなかった。はぁ…うさぎは尊い。
時刻は午後4時10分前。
中途半端に日が下りてきたこの時間帯はテスト週間独特の「早く帰れるぜ!おらワクワクすっぞ!」という思いが立ち込めてくる。
まぁ、帰ったところで待ってるのは勉強なんですけどね。
帰りのショートタイムも終わり、クラス中は駄べりながらも無駄に分厚い教科書を鞄に詰めている。
とりあえず、五教科全部置き勉しよう。
なにより教科書って重い。工事現場だって重筋作業を減らす努力をしているのに学校に教科書を置いていけないのはおかしい。
ん?テスト勉強?なにそれ、おいしいの?多分、塩かけて食べるとおいしいよね?
ん?なに?部活?なにそれ、おいしいの?多分、塩かけてもおいしくならないよね、あの部活。
三年生にもなれば受験を控えているからこの一番最初のテストを落とすわけにはいかない。
だから、テスト週間中に部活なんてもってのほかである………はずだった。
あの三十路と完璧超人、四季 雪愛の思考回路は予測不可能です。変幻自在で混沌としています。
おい、どっかの邪心かよ。うーにゃーうーにゃーでSAN値がピンチになるぞ。にゃんてこったい!
…とにもかくにも、あの角松先生が、テスト週間一日前のあの日に
「もし、テスト週間中に依頼があったらどうするんだ?サポート部だぞ?サポート!活動しないとこの部活の存在意味なくなるぞ!」
とか言われたが、
え?この部活そもそも存在意味あるの?とか思った。
まぁ、こうなってしまえば、ふざけた思考のやつの隣には必ずふざけた思考のやつがいることと同じように。1が過ぎれば、2が出てくるのと同じように。
当然、賛同する輩が出てくる。
「なるほど、確かにそうですね!そろそろ活動しないとこの部の沽券に関わりますし、やりましょう!」
そう言いながら、笑顔で挙手するようにして、右手を元気よくシュバッ!と教室の天井に掲げる四季の姿は実に可愛らしいのだが………話を聞かなかったことにしようと、教室を出て行こうとするおれの背中をわしづかみにしているこの左手は、おれの制服に消えないシワが一生残るんじゃないかってくらいに実に力強く、堅く、握りこんでいる。
四季の華奢で女性的な手には、可愛らしさもなにもあったものではない。だって、可愛らしいのにおれの背中が痛いもん。1+(-1)=0。よって可愛らしさゼロ!
それにしても…バレてたか。クラスの打ち上げみたいに盛り上がってきたところでドロンしようとしたのに…。
スニーキングミッション失敗。
これだけならまだ良い、まだ僕と、なにより新入部員、神ノ木がいる。
2対2ならまだ勝機はある。
おれが勝利の方程式をたてようと、思考をこらしていると、不意に困ったような声音でこんなことが聞こえてきた。
「あの…私テスト勉強があるのですが」
お、いいぞ神ノ木!お前ならできる!おれと違ってあの二人になめられてないからな。You can do it!あ、ここ流暢に。
これなら勝つる!と思ったその矢先、
「好夏ちゃん?部員としていつ、いかなる状況下でも活動できるのが学校のサポーターとしての役割よ。だから、ここはしっかり新入部員として自覚をもってもらわないとね~。それは、ちょっとね~、世間は許してくrえゃすぇんよ」
と四季が説得に入った。いや、カミカミ。どこぞのアキバにいるヲタかよ。
「神ノ木、ここは活動してもらわないと困るな!どうだ?ここは新入部員として学校を助けると思って部活に来てくれないか?」
はい、助言入りましたねぇ。角松先生。なかなかの常連っぷり。
その常連っぷりといったら、近所のコンビニで焼き鳥買いすぎて注文する前にレジに並んだ瞬間、かわともものレジうちが完了するなかなかのVIPな待遇を受けているやつのようだぁ!
いや、それおれ。
ふいになだれ込んできたおれのおれによる実況音声をかき消し、神ノ木に目をやった。
神ノ木は顎に手を当て、シンキングタイムに入った。
神ノ木、考えるな感じろ。いや、むしろ考えてから感じろ。
…俺のいきたくなさを感じろ。
十数秒の後、結論が出たのか、なだらかに胸元に向かっておりている、長く美しい黒髪を払いのけ一言。
「うーん、テスト週間ですし、成績との兼ね合いもありますし、なかなか時間的にも厳しい所存ではありますので、ここはやはり………行きます!」
あっれぇぇぇぇぇ!?なに?今の前置きなに?なに、この前置きを全否定していくスタイル。
新手のコミュニケーションツール?これは、三分クッキングの終盤に全く関係のない料理を持ってくる並みに前振りの意味がねぇ!
…という訳で、神ノ木が脳内が混沌としている邪心二人に丸め込まれたとさ。
そして、
「さぁ、君はどうする!?選択肢は「はい!」か「YES!」で答えろ!!!」
と僕は問われた。
「もう、冗談じゃないよぉ!テスト週間じゃなかったらよぉ!テスト週間じゃなかったらなぁんでも協力してやるのによぉ!こんなテスト週間の中、部活なんて言い出しちゃって!もぉたまんねぇよ!」
と危うくうめぇラーメン屋を開店することになりかけるくらいに切羽詰まっていたところなのだが、マジで、死ぬほど行きたくないとガチで思ったので、「おうち帰る!」って三人に答えたらグーパン二発と蹴り一発いれられた。
一発だけ加減を知らない強い蹴りが半月板にめり込んだのは解せないが今は置いておこう。
それで、涙目になりなが……ゴホンゴホン。
胸を張って凛とした眼差し(涙目)で、「YES!マヤムラ、ブカツイク。ブカツタノシイ」と答えた。
…で、このざま。
はぁ、なんでテスト週間中に部活があるんだ?めんどくさ!あーもう、やる気でねぇ!さぼりたい、勉強したくない、働きたくない。
寝ててお金入る職業とかないのかな?
最近はFXとかあるみたいだしな。
一回FXがどんなものかアプリダウンロードして模擬操作だけしてみたことあるけど、あんなにも簡単にできるのか。
おい、学生の野郎ども。
お前ら小遣い稼ぎにバイトとか考えてるだろ!?
そんなの古い古い。今の時代はFXだ!
無知識で直感的にやりまくったら、レバレッジがウマウマだったぜ!?俺はこの冴えわたりすぎた直感を酷使するセンセーショナルな手法で500万円の………負債を背負った。
…模擬操作でよかったぁ。ホントにゲーム感覚でお金がすっ飛ぶんだね!
現金でやってたらフランス語で希望っていう名前の船に乗らなきゃいけなくなるところだった。
下手したら鉄骨も渡るかもしれなかったしな。
ほんと、模擬操作に圧倒的感謝ですわ。
「ほならね、自分がFXやってみろって話でしょ?私はそう思います」
といういわゆる、ほならね理論を展開し始めていれば、
「イッケナーイ、モウ最終下校時刻ダヨー!部活イケナイヨー!」
と、なるわけもなく、とうとう…部室の戸の前まで来てしまった。
テスト週間中の部活というものは土曜日のボランティア活動いや、ブラック企業の休日出勤並みにイラッとくる。
いっけなーい、社畜社畜。
…休日出勤なんて働いたことないから知らんけど、相当ツラいということだけは伝わってくる。
「サービス残業バンザーイ!ワッショイ!ワッショイ!」て笑いながら涙流してるイメージがある。
とにかく泣きたいくらいに行きたくないしで、この切羽詰まった状況に憤りを覚えすぎてそろそろ勉強に使う頭の容量が不足してきそう。
俺の脳内のメモリーカードが全力で暗記科目を邪魔している。
暗記できなさ過ぎておれの海馬が揮発性メモリなんじゃないかって最近思い始めた。
勉強のイライラも相まってホントにストレスがたまってきた。
これはもう、ストレス溜まりすぎてストレッチマンが「ほら、ここに溜まってきただろう?(ストレス)」って言い出すレベル。
この溜まってきたストレスをどこにぶつけようか迷っていたので、なんとなく腹いせに部室の引き戸をつかみこれまでにないくらい勢いよくを開けてみると、部室にいた四季、神ノ木、角松先生の3人の視線が自分に集まる。
すると、がっかりしたような様子で四季が開口一番。
「なんだ、真谷村か」
…なんだよ、悪かったなおれで。
「…いや、お前らが呼んだんでしょ?」
そして、二番目に新入部員、神ノ木が口を開いた。
「もっと場をわきまえて入ってきてくれる?」
「おい、神ノ木。お前新入部員なんだから少しは遠慮しろよ。それともなに?かまちょか?お前?」
入部して早々ツンツンしてるなぁこいつ。それはもうカン違いしないでよね!?とか言い出しそうなレベルで。
おれがろくでもないことを思案していると、神ノ木がこっちをキッと睨みつけてから、そのムッとしていた口を開いた。
「…カン違いは死ね」
「おい、デレのないツンとかお前は毬栗か」
「ごめんなさい、言い過ぎました、冗談ですよ!」
流石に神ノ木も申し訳なく思ったのか律儀にぺこっと頭を下げ、素敵な笑顔を見せた。
素直に謝れる所は四季と神ノ木では対照的な所かもしれない。
まぁ、死ねって言われたから元も子もないんだけどね。
「好夏ちゃん、こんなぼっちに遠慮はいらないよ?むしろごみぼっちの自称天才将来有望の真谷村が遠慮しなさい」
いきなり、塩対応な声音が響いた。もちろん、四季の声。
やめろ、追い討ちかけんな。なに?おれ競走馬?もうラストスパート?走ってすらいないのにただムチで打たれてるんですけど。別の意味でゴールしそうだわ。
「ねぇ、会話を交わす度に僕をいじめるのやめてもらえます?」
ホントやめてっ!部屋入っただけでいじられるとか相撲部屋かよ。
可愛がられすぎだろおれ。(暴力的な意味で)
すると、可愛がられている俺を横目でちらと角松先生が見てきた。俺を見かねて場の空気を読んだのか、小さなため息をつき、角松先生が場を整えるように口を開いた。
「はぁ…まぁまぁ、落ち着けお前ら。依頼人がいないからってそうピリピリするな。働かなくていいのは、実に素晴らしいことだぞ!」
いや、腕組みながら「はい!場ぁ、整えたぁ!私優秀ぅ!」と言わんばかりのドヤ顔でいわれても場が全然整っていない!むしろ破壊しよった!
「いや、角松先生。全然場が整ってないんですけど。むしろ破壊してるんですけど。なんなんですか?あなたはマイクラのクリーパーですか?リフォームの匠ですか?」
「クリーパーをバカにするな。あれはあのゲームの醍醐味と言ってもいいくらいの存在なんだぞ!ああ、なるほど私が巨匠だということを言いたいんだな、その気持ちよくわかるぞ☆」
いや、確かに存在は大きいけどクリーパーってもともとはバグから生まれた失敗作なんだよなぁ。
…まぁいいや、黙っておこう。
うっかり、「クリーパーみたいにあなたもバグってますね!(爆笑)まさにリフォーム(爆破)の匠!たしかに現実という名のゲームの粗大ゴミですね!あ、間違えた醍醐味でしたねっ!」なんて言いかねないから、黙っておこう。本音と建前ってステキ。
のどまで出かかった本音を建前で押し殺していることには角松先生は気づいていない。
しかし、人間、表情に出てしまう生き物で、本音を押し殺している納得のいかない気持ちが俺の顔をこわばらせた。
その顔のこわばりを、角松先生は俺が不本意に部活動へ参加させられたことへの不満によるものだと受け取り、俺を納得させるためか、ゆっくりとした口調で口述してきた。
「まぁ、なんだ。テスト週間中の部活なんだし、自由にしていいぞ?私はなんとなくテスト週間中のピリピリした雰囲気の職員室が苦手だからここで時間潰せればそれでいい」
ねぇ、この人さらっと自分勝手な理由で今日の部活が行われていること喋ったよね!?この部活来る意味ないよね!?言質とれてますよぉぉお?!帰っていいっすかぁぁぁぁあ!?
それにしても、なんで職員室居づらいの?
何か理由が…あ。(察し)
まぁ、いいか。角松先生のぼっち濃厚説云々は置いておくにしても、どうせ帰っても勉強しないんならここで気休めの勉強くらいはしておくのも無きにしも非ずってとこかな。
勉強をしていく覚悟を決めたと同時にいきなり机に向かっていた四季がこちらに踵を返して、いつものように尖った言葉を投げかけてきた。いや、投げつけてきたの方が正しいか。
「ねぇ、あんたいい加減座ったら?それとも座れと言わないと座れない犬みたいな人間なの?」
「おい、四季。お前の一言一言はマイクタイソンのボディーブロー並みにじわじわ効いてくるからやめろ、ストレスで禿ハゲたらどうするんだ?」
「そもそも、ハゲるのは遺伝がほとんどらしいよ?ちなみに、ストレス性の禿頭症は円形に脱毛が起こる円形脱毛症が多いから頭皮マッサージをすれば予防できるらしいよ?よかったね!これで安心して人と会話ができるね」
「おい、神ノ木。お前は少し気の使い方を覚えたほうがいい。予防策を提示するのはありがたいが、なんでおれがハゲる前提なんだよ!?そして、誰得だよそのハゲ知識。ハゲの博愛家かよ」
おれがそう言い終えると、四季、神ノ木ともに微笑を湛えつつ、会話の余韻が覚めるとともに二人は再び踵を返して机に向き直った。
ほんと、お後がよろしいようで。会話のドッジボールがお上手でなによりです。そのままプロドッジボール選手にでもなればいいのに。(暴言的な意味で)
その二人の姿を横目に、俺はやる気のない足取りで、扉から一番近い椅子に腰を掛け、テスト週間中にも関わらず妙に軽い鞄を机の下にバサッと置いた。
僕が腰かけた椅子から90度右側を向くと窓の外がよく見える。ここは学校の最上階。だから、そこそこ景色もいい。といっても4階だからそうたいしたことはないのだが。
田舎の学校なだけあってそこからのぞく景色に、何一つ高い建物がない。
よーく、目を凝らせば名古屋の超高層ビルJRゲートタワーが見えるくらいだ。
意外といい景色だなぁ。と思って景色をぼーと眺めていても、このだるい部活動は終わらない。
右隣に四季がいるから、あまり長くの右側の窓の景色を見ていると勘違いされそうなので、正面の机に目を落とした。どうやらこいつらは、四つの机をくっつけて一つの簡易大型テーブルとして使っているようだった。
幸いにも、僕の腰かけた椅子は四季、神ノ木、角松先生の3人が取り囲んでいる椅子の内、だれも使っていない椅子だった。
空席だった場所に一人入り、2人ずつ対になるように4人が座っている。正面には神ノ木、その神ノ木の隣に角松先生、そして、僕の右隣には四季がいる。
おれは三人に何の気兼ねをすることもなく、まだテスト範囲で覚えきれていない英単語を覚えるために鞄を探ることにした。
机の下に潜り込むようにして視線を鞄に落とした。
右手は鞄の中の赤シートと参考書を探り、左手は机の上に。
すると、なぜか左手が何枚かのカードのようなものに触った感覚があった。気のせいだとは思うが、なんとなく嫌な予感がしたので、鞄を探る方の手が止まった。
視線を机の下の鞄から机の上に移すと、乱雑に重なったトランプの束がそこにはあった。
それから、さらに視線を上げ、机に座る三人に目をやれば、三人の目の前にも同じような枚数、トランプが散らばっている。
それだけならまだいい。
…なぜか、三人ともこっちを向いてニタニタと蠱惑的ないやらしい笑みを浮かべている。
「…あんたら、何やってんの?」
「よくぞ、聞いてくれました!」
待ってました!と言わんばかりに両腕を組みながら、いやらしい笑みを浮かべて挑戦的な態度で四季が高々と言明した。
ん?これ?なんかまずい気がするよ?
「右に同じ」
すぐさま、四季に続いて神ノ木が賛同の声を上げる。ヤバい。
「さぁ、ゲームをはじめよう!」
角松先生。この人も噛みついきた。ヤバみ。
よく考えればこの状況は非常にまずい。この流れだと、テスト週間中にろくに家にも帰らず、よくわからん部活動に参加して、部室でどうしようもない部員と先生で、トランプ遊びをするガーベージになっちまう。
めんどくせぇ。トランプとか放課後の部活でわざわざやることかよ。それと、テスト週間だしな。学生の本分は勉強ですよ?おれは、本分を全うするき皆無だからやらないけども。やりたくないなぁ。でもこの流れだと多分やるんだろうな。
一応、参考までにこの三人に聞いておこう。
「…拒否権は?」
そう聞いた途端、三人は椅子から体を乗り出しながら声をそろえてこう断言した。
「「「ないっ!!!」」」
ですよねぇぇ~~~~!
「…人権は?」
そう問うと、三人はさらに体を前に乗り出し、またもや断言するのであった。
「「「ないっ!!!」」」
えぇぇぇぇぇ…ヒューマンライツ守ろうよ?自由民権運動おこしちゃうよ?
燃え尽きた。と言わんばかりに、椅子にもたれかかって脱力の限りを尽くしていると、右隣の四季が人をなだめるような口調で僕を説得してきた。
「ま、まぁまぁ、真谷村。テスト週間に勉強ばかりじゃ体に毒だよ?息抜きしないと体がバカでいっぱいになって、本当のバカになっちゃうよ?」
…励ますのか、バカにするのかどっちかにしろよお前。
おれは脱力モードから憤りモードに移行し、ゆっくりと背もたれから起き上がり、背筋を伸ばしながら四季を論破しにかかった。
「いや、テスト週間に遊ぶやつの方がバカだろ。だいたい勉強しなくても頭いいやつなんているはずがな…」
おれが、そう言いかけた途端、四季がドヤ顔で自らを指差していることに気がついた。
「ほら、私。私がいるじゃん」
「なん………だと!?」
ホントダァァァ!学年一位の人がこんな所で遊ぼうとしてるぅぅ!神よ!なぜこんな奴に明晰な頭脳を与えた!?おれにもちょうだい!!!
伸びていた背筋は再び縮んで気づけば背中が猫背になって椅子に座っている。
「………」
「あれ?どうしたの?急に黙っちゃって?」
「うるせぇ」
なにこいつ、さらに煽ってくる。うぜぇ…。
しかし、流石に学年一位様に言われてしまってはぐうの根も出ない。どうせ、この流れだとやることになるんだ。ここは、断腸の思いで従うしかない。
僕は深いため息をつき、渋々トランプの遊びを受けることにした。
「はいはい、分かった。分かりました。やればいいんでしょ?」
おれは不承不承ながらも承諾してみせると、右隣の席にいる四季はグッと小さな拳をつくり、小さな声で「よし!」と言っているのが聞こえた。
さらに、さっきから固唾をのんで見守ってたであろう、正面の席にいる神ノ木とその隣の角松先生がテンションが上がったのか、いきなり声を上げ始めた。
「さすが四季!このゴミぼっちを説得できるなんてぇ!そこにシビれる!あこがれるゥ!」
と椅子から勢いよく立ち上がる角松先生。
「雪愛の話術は世界一!」
と座りながら両手をメガホンのように口に当ててフォローする神ノ木。
一連の動きが終わると、二人は「決まった!」と言わんばかりにハイタッチをかまし、再び席についた。
ちょっと?角松先生?なに茶番始めてんの?若い人と会話しても若くなりませんよ?という言葉が喉から出かかった。あっぶねぇ!これ言ったらぶち殺されてたゾ☆
喉から出かかった言葉を飲み込もうと机の下に頭を潜らせ、両手で鞄からお茶のペットボトルをまさぐる。
麦茶と綾鷹の二本を今日は持ってきた。
もちろん、選ばれたのは綾鷹でした。
その時、机の下でおれの、おれによる、おれのためのお茶ドラフト会議が行われていたことなど知る由もないであろう四季が、おれの背中を指でツンツンとしてきた。
え?なに?別に鞄の中をのぞいてるだけだよ?
いやいや、制服のスカートの中をのぞく気なんてナッシングだよ?おれは紳士だからさ、女子に興味なんてないんだ!いや、むしろ興味しかないんだよ?
…せつこ、それ紳士やない!スケベや!
疑われた時のための言い訳を考えていると、四季が話し出す内容は全く違う内容だった。
「…あんたってブラックジャックのルール分かる?」
「ほぉ、ブラックジャックか。まぁ大体はわかるけど…」
僕は姿勢を正し、綾鷹のボトルを開けながら答えた。
すると、四季は嬉しそうに微笑んだ後、正面を向いて一言。
「…そ、ならよかった!」
その後に四季は、角松先生に視線を送ってこう合図した。
「じゃあ、先生お願いしまーす!」
「わかったまかせろ!」
四季の合図で角松先生が突然立ち上がり、机の上に乱雑に重なっていたトランプを素早く回収し、それを器用にシャッフルし始めた。
色んな種類のシャッフルを素早くやって見せている。よく分からんが素人にもすごいことは伝わってくる。
シャッフルをし終えると角松先生は自分に二枚、右から神ノ木、おれ、四季の順に二枚ずつ。
机の上を滑らせるように、カッコ良くトランプを配った。
熟練した者にしか成せない精錬された手捌きだ。
さすがは三十路といったところか、熟練度がちが………何でもない。
命知らずな思考をひとり巡らせていると、神ノ木が早速カードを手にとり一言。
「やろう!」
…なるほど、本当にやるんだね?
現実でブラックジャックするなんて久しぶりだな。
おれがやるブラックジャックは、いつも冷たい無機質な画面の向こう側だからな。やっぱりカードゲームは画面の向こうより、現実でやるに限る。
…はぁ、やれやれ。ちょっと楽しくなってきちゃったじゃねぇか。
おれはポケットに手を突っ込み、冗談混じりに、返ってくる言葉にワクワクしながらも、もう一度、確認の意を込めて三人に問う
「一応聞いておくぞ?…なにをやるんだ?」
そう三人に問うと、またもや「待ってました!」と言わんばかりに、嬉しそうに互いの顔を見合わせ、三人は息を合わせてこう言い放った。
「「「ブラックジャック!!!」」」
これが自分なりの照れ隠しなのだろうか、本当は楽しみなのだが、こいつらの前で素直に喜ぶのも癪なので、あえてポケットに片方の手を突っ込んだまま頭をがしがしとかきながら、おれはまたもや、やる気なさげに言ってのけるのだった。
「…しょうがねぇ。今日は遊ぶか!」
おれはそう口にすると、さっき開けたばかりの綾鷹のペットボトルを一気に飲み干す。
数秒で空になったペットボトルを教室の右奥にあるゴミ箱に投げ捨てた。
ペットボトルは綺麗な放物線を描き、ゴミ箱のふちに当たり、その衝撃で上に跳躍し、綺麗に一回転した後、ゴミ箱の底へ消えていった。
あとがき
どうも、超絶お久しぶりです!そして、初めての方、始めまして!
まず、数多くの作品の中からこの作品を読んでいただいて誠にありがとうございます。
まぁ、8ヶ月ぶりくらいの投稿になりました。その間、色々と忙しいリアルのことをこなしつつ、小説の勉強云々もしていました。
…へ?普通の勉強?とうの昔に電車の中に忘れてきました。てへっ☆
色々と私のリアルは激動の一年になりそうです。
はてさて、この先なにがまっているのやら…考えたくもない。
それにしても季節は夏です。
現に私は、「おれも夏らしいこといっちょかましてやりたいっすわ、先輩!」というわけで、花火大会にいってきました。
心にズンと響くような音とともに、空に咲く無数の花々は、今も昔も、日本の夏の短夜を照らし続けていたのだなぁ。と感慨深く思うばかりです。
それにしても、祭りの後の帰り道とは不思議なものです。同じ暗い道でも一人で帰ると虚しく、二人で帰ると満ち足りて、三人で帰ると過多で、逆に虚しくなったりします。
やはり、帰り道は二人に限ります。
ましてや、懐かしい会話を交えながら帰ることなんて僕は今までに経験したことが無かったのです。
皆さんも、共に笑い、共にいたわり、共に懐かしみ合える。そんな、なによりも大切な誰かを見つけることができるといいですね!
話が変わりますが、次回の投稿はいつまでとは言いませんができるだけ早くしたいと思っています。…別に保険なんてかけてないですよ?
それと始めての方、Twitterやってます!
@tsp530と調べていただけれな見つかると思います!どうぞ、気軽にフォローお願いします!必ずフォロバします!
では、そろそろ睡魔と戦う時間になってきたので、私は気合いを入れて寝ます。…いや睡魔と戦わないんかい!って、つっこむところですよ?蛇足でしたね、ごめんなサイゼリヤ。
8月の、花火の後の静けさに、瞳を閉じては、偲ぶあの頃。
犬村 ツヨシ