やっぱりこいつはかわいくない
衝撃的な誘いを受けた廊下にはまだ、悲痛な叫び声が響きわたっている。
結局、あの誘いは何なのだろうか。
私!気になります!ってバカたれ!
そういえば、角松先生とあれ以来喋ってないな、まぁいいか。
まだ、悲鳴の余韻がかなり残っている。
幸い、そこは誰もいない図書館の廊下の前だったので、死は免れたのだが。
「あの…超うるさいんですけど。黙って。」
真剣にそういわれた。
なんだか、面と向かって美人に罵られるのは、悪い気はしない。
おっと、そういう新しい世界に進出したくはない!
「とりあえず、今じゃ時間がないから放課後に校門で待ち合わせをしましょう。」
全く願ってもいない部活の誘いを受け、世界中の男子が願う女子との待ち合わせの誘いを受けた。
「………分かった。」
「じゃ、また放課後!」
彼女はそう言いながら素敵な笑顔をこっちに向けて、3年生の教室の方に向かって走っていった。
なんか、今の一瞬だけの会話を振り返るとリア充になった気がした。
ふっ………こんなことは最新のVRゲームでもできまい!
リア充の疑似体験なんてな!!!
自分でもよく分からない優越感に浸っていると、チャイムが鳴った。
キーンコーンカーンコーンと一定のリズムで僕に圧力をかけてきた。
急げ、まだ授業には間に合う!走れ、エロス!
…いや、おれはエロくない。
ついでに処刑されることを受け入れてくれるほど深い仲の友などいない。
嗚呼、ぼっちは、悲しきかな。
6限が終わり帰りの準備を進めていると、さっきのことを思い出した。
「じゃ、また放課後!」
………どうしよう、究極にめんどくさくなった。
小学校で、遊びにいくわ!っていって、当日になぜか行きたくなくなるのと同じだ。
いったい何なんだろうね、あれ!?もしかして、無意識のうちにツンデレ化してるのかな?いや、この場合はデレツンか。
まぁ、いいや、しょうがないから行ってやるか。
べ、別に笑顔がかわいかった訳じゃないんだからねっ!
おれのツンデレとか、誰得だよ。
そうやって、ツンデレについて考えながら、階段を降りてゆく。
隣のリア充どもが手をつないで階段を降りているのに対して、僕は手すりと手を取り合い階段を降りている。
この差はいったい何なんだ?
若干、奴らに睨みを効かせながら心の中で奴らにこう言った。
「果たしてその愛がいつまで続くかな!?」
声に出したい、だけど言葉にできない。
くそ。おれは手すりとなら手を繋いでても、ファイヤーダンスの時の女子みたいに嫌がられることが全くないからもしかしたら、うまくなっていけるかもしれない。
もしかして、これは恋!?手すりに恋しちゃったよおれ!?
ついに、ぼっちの思考もここまで来たか………
「いや、まだ助かる、まだ助かる、マダガスカル!そーれぇぇ!!」
そう心の中で叫びながらいきなり、走り始めた。マダガスカルにではなく、校門に向かって。
もうだめだ、リア充の姿は僕にとって刺激的すぎる。
階段を下り終わったくらいだろうか。
急激に息切れが訪れた。
そういえば最近スポーツしてないなぁ。
スポーツしようにも相手がいないと基本、練習できないからな。
誰もいない下駄箱で靴を履き替え、息切れが収まるまで少し休み、再び校門に向かって走り出した。
そこには少女の後ろ姿があった。
「じゃ、また放課後!」
そう言って、走り去った時に見た後ろ姿だ。
ふわっとしたショートカットの髪型に、ふわっとした雰囲気があたり一面の空気を浄化している。そんな気がした。
これ以上おれが近づくと浄化されるんじゃね!?
上位階級にこんな最下位階級が近づいていいの!?
RPGで一番最初にゾーマ城入るみたいなもんだぞ、おい。
これは人生がバグったのかな?
そんな疑問を持ちながらも硬化した喉をほぐすようにして、咳払いをした。
次になんていったらいいのか、全く分からん!
とりあえず、
「どうも、待ち合わせの約束を受けた真谷村です。」
なんとか声をかけることができた!
きっと言葉のキャッチボールもうまくいくはず!多分。
「誰ですか?」
ちょ、おま…。それはさすがにないって。
「昼放課のこと覚えてないんですか!?それとも僕のこと馬鹿にしているんですか!?」
神様お願い。どうか、後者であってくれ頼む。
「ああ、あの人ですか。すいません。あまりにも特徴がなかったので、覚えていませんでした。」
なんで覚えてないの!?そんなに特徴ないかなおれ!?
もういっそ今度からモヒカンにして学校来てやろうかな~?
この馬鹿やろうが!!!
思いっきり嫌そうな顔をして、獣が敵を威嚇をするような形相で睨みつけるとそれを察したように、
「あー、はいはい、冗談ですよ!」
ふぅ、良かった、危うくまた一つトラウマが増えるところだった。
だいたい、ぼっちにそんなこと言うのはだな…
「ぼっちにその冗談はきつすぎるわ!」
心の中に収まりきらなかった言葉が直接、喉を通ってきて口から飛び出てしまった。
「そ、そうなんだ。ごめんね。」
彼女は上目遣いで申し訳無さそうに謝ってきた。
仕方ないなー!謝ってくれたし、許してやる………
おーと、危ない、危ない。危うくかわいさのブラインドで罪を見逃すところだった。
そうだ、
ここがぼっちの違うところだ。物事を一人でしっかりと見つめ直せる。
マジぼっち最強。
「そんなことをしても誤魔化せんぞ。」
「ちっ、バレたか…勘のいいぼっちだ。」
くそ、腹立つなこの女。
やっぱり、前言撤回!!!
かわいくなんかねぇ!
「そんなことより、ついて来てください!」
そうだよ!だいたいおれは何をしにここへ来た?
部活とやらの話を聞くためだ!
決して、女の子と話したい!とか、笑顔がかわいかったから!とかではない。
ほ、ほんとだよ!?
「はいはい。」
とりあえずついて行こう。
「返事は一回だ!」
くそ、やっぱ腹立つわ、この女。
「で、なんでこんな部屋に僕は連れてこられたの?」
そこは、古い机や壊れた椅子などが入り乱れたもう使われてないであろう教室。いかにも学校のグレーゾーンにあたる人たちが生息していそうな場所だった。いや、なに!?おれボコられんの?
「ここは、サポート部!私はサポート部・部長の、雪愛だよ!」
いや、そんなどっかのフレンズみたいな自己紹介されても困るんですけど。
とにかく、挨拶だけでもしておかないと。
「そりゃ、ご丁寧にどうも。四季 雪愛さん。」
彼女の名前は、四季 雪愛
「雪を愛する」と書いて、「せつな」と読む。
成績は学年一位であり、スポーツも万能、八方美人で、だれも文句の付けようがない完璧超人だ。
特にその容姿は街で歩いていると、10人中、10人が振り向くぐらい優れている。いわゆる、顔面偏差値が高いというやつだ。
これは噂のレベルだが、中学3年生にして様々な資格を持っているんだとか、クラスの会話で盗み聞い………
ゴホン、ゴホン、クラスで聞いた。
というように、こんなゴミぼっちでも知ってるくらい有名だ。
だが、僕の経験上、完璧な人間などいない。あるものに優れている人間ほど、どこかに大きな欠点がある。
畜生!絶対見つけてやる!
おれの必殺!「粗探し」!
この技の前では!どんな天才も凡夫になりさがるぅぅぅ!
はぁ…。
本当に汚い子どもだな、おれ。
それにしても、
「なんで僕がその部活とやらに入ることになったんだ?」
3年目の学校生活で一番の疑問をぶつけてみた。
ちなみに2年目は「何で友達できないの?」で、1年目は「先輩?なにそれ?」である。
すると四季は無言で椅子にストンと腰掛けた。
「知らない」と口にしなくても態度で伝わってくる。
疑問に満ちた目線を送ると、向こうから1月中旬くらいの冷たい目線が返ってきた。
これはかなり冷えた。角松先生より冷たい目線。
なに?女の人ってこんなに冷たい目線を飛ばせるの!?
なにそれ、おれもその能力欲しい!
「とりあえずここで待っといて、もうじき来るから。」
そう言った直後に、戸がガラガラっと音を立てて開いた。
「おう。すまんな、放課後に呼び出してしまって。」
どこかのなにかでヘッドセットから聞いた覚えのある声がした。
「いえいえ、私は構いませんよ。」
四季がそう答えたあと、僕のほうに角松先生は詰め寄ってきて、両手を腰に当てこう言い放った。
「よし、真谷村。単刀直入に言おう。お前はサポート部に入ることになった。」
そんなこと、さっきから聞いている。
「ゲームのことはあえて置いておくとして、聞きましょう。なぜ、僕をこんなよく分からない部活に招待したんですか???」
今、ミレニアム懸賞問題よりも聞きたい答えを唯一知っている、角松先生にぶつけた。
「うむ、つまり、ヘッドハンティングだ!」
バシッと僕に叩きつけるように、そう答えた。
「はぁ!?」
「えぇ!?」
僕と四季がほぼ同時のタイミングでそう声に出した。
ヘッドハンティング、ねぇ。
確かに僕は、成績も悪くない、運動神経も悪くない、顔も悪くない、だけど、
「僕、友達いませんよ?」
「この人、友達いませんよ?」
またも、四季と同時に同じ言葉を発した。
しかし、僕が発したのは自虐であり、四季が発したのは僕への揶揄である違いはあった。
くそ、やっぱりこの女かわいくねぇ。
どうも!犬村 ツヨシです!
まず、投稿が遅れてしまってごめんなさい。
それと、みかんがおいしい季節ですね!
特に運動後のみかんあれマジ最高です。
僕は、冬に沖縄に行く予定がありますが、皆さんはどうでしょうか?
やっぱりマイペースな生活が一番ですよね!?
と言うと、投稿が遅れた言い訳にしか聞こえないのでやめておきましょう。
最後に、沢山の小説の中からこの小説を読んでいただき誠にありがとうございます!今後とも連載をがんばっていくので、暇な時に読んでもらえたらとても、とても嬉しいです。
では、また次話でお会いしましょう!