大人の恋?
それからいろいろと話していたところで、ケンが立ち上がった。
「じゃあ、そろそろ帰ろうかな」
そうだそうだ、帰れという声が香織の中でこだましていた。
「変態、もう帰るの?」
あ、と思ったが遅かった。年上に対して変態とはまた……。
でもまあ、間違ってはいない、と香織は自分に納得した。
「香織。この人はね、健って名前なのよ?
いくら変態でもかわいそうよ」
「ちょっと、二人していじめないでくださいよ。
俺、純粋で清潔ですから」
そう言って、爽やかに笑う。
「ほんっと、健君かっこいいわあ。
ちょっと、うちの息子になってよ。ていうか香織と結婚しなさい」
また言ってる……。呆れる香織。
「お母さんね、ありえないから。
あたしが変態と結婚とかありえないから。
しかもあたしまだ17だか……」
「まあ、いずれね」
あたしが言い終わる前に、いたずらっぽくケンが言った。
母までぽかんとしている。
「バカっ。無駄口たたいてないでさっさと帰ってよ!
さあ、早く!」
玄関から放り出した。ぽかんとしていた母が笑っていた。
「17でもしようと思えば結婚なんて余裕よ?
ま、まだまだ香織には早いけどね。
大人の恋、しなさいよ。そろそろ」
大人の、恋。
「そんなの……大人の恋って、どんなの?」
とっさに聞いていた。ずっとずっと疑問だったこと。
しかし、母はニコッと笑ってリビングへ行った。
「大人の恋、ねえ……」
呟きながら、自室に戻った。
床にゴロンとなるとさっきの疲れがよみがえってきて、またすぐに眠ってしまう香織だった。