第一話 奇妙な世界#4
ギルドとは、まぁ所謂何でも屋みたいな感じらしい。
二人の少女が受けていた魔物退治もそうらしいし、護衛や、何かの材料集めや、人の家の庭掃除まで引き受ける。
そうやってギルドを大きくして、名を広めるのだそうだ。
名が広まると入ってくる依頼が増え、経営も楽になると聞いた。
そして、ギルド間での祭事や大会などもあるらしい。祭事を開けば町民の人気を得られ、大会などで優勝すると名声が得られる。
聞いていて、よく出来ているなと思った。
ちなみに、別にギルドに入らなくても、この世界で生きて行くことは可能らしい。
パン屋になることもできるし、樵になることもできるし、漁師にだってなることができる。
ただ、安定するまでがすごく辛いらしいが。
その反面、ある程度のギルドに入ると最初から至って普通の生活をおくれる。
しかも、この世界にやってくる人間は、たいてい何かの加護を受けている事が多い。
それは、こちらの世界に来る経緯にあるらしい。
ほとんどの人は、流れ星に打たれてやってくる。あとの少数は、事故にあったりと死にかけたりした時にこちらの世界にやってくるようだ。
そのせいか、こちらの世界にやってきた時には、何かの加護を受けているとの事だ。
普通は、その加護を受ける神に多大な信仰心を持っていないと駄目だったり、魔物や幻獣などはあるひょとした出来事で加護を受けたりするらしい。
まぁ、レアな物だと言うことには違いないだろう。
そして、最後にこの世界について。
この世界は、一つの大きな大陸らしい。
この大陸をこの世界の人々は『リュンボス』と呼んでいる。
リュンボスは大きく八つの区画に分けられていて、そこの中心都市を中心に栄えている。
一番発達している東の大都市『アルグーリ』。漁業が栄んな東南の都市『タルナ』。南に位置する商業都市の『オーバン』。農業が盛んな南西の都市『チッカ』。西に位置する観光都市『ベルニーニ』。魔物が多く、開発のあまり進んでいない地域、北西の『カタルーニャ』に北東の要塞都市『ガンベルゼン』。そして、北の未開の地『ダークベルト』。
『ダークベルト』に関しては、ほとんど情報がない。この地域は寒さが厳しく、険しい山脈も多々ありレベルの高い魔物が住んでいるのであまり人の手が入ってない。
反対に、この地域から北東・北西に向かって侵攻があるという。
そんな時は、『アルグーリ』が有する『円卓の騎士』率いる軍が、魔物を追い返すのだと言う。
そして、この大陸には遺跡があると言う。
何百年も前の遺跡。そこは魔物達が住みかとしているが、大変な数のお宝が眠っているらしい。
それはそれは、男児の心を刺激するものがある。白ぎつねには「絶対に行ってはダメですからね!」と言われてしまったが。
しかし、これまでの中に俺の目的はない。
俺の目的は、この世界の全てを見て、現実に帰る方法を見つける事だ(あの世界には帰りたいとはあまり思わないが)。
そう言うと、白ぎつねはこう返してきた。
「それなら、最北に立つ塔を登れば良いと思います。何でもあの塔は、この大陸の全てを見渡せると言われてますから」
要は、大陸の北まで開発しろと言うことだろう。
何か魔王を倒しに行くみたいな感じはするが、理由としては悪くはなかった。
そして最後にもう一つ。
白ぎつねのギルドは名を『聖騎士』と言うらしい。
名前の由来は円卓の騎士を真似てみたとの事。
現在、『聖騎士』のメンバーは全員で俺を含め六名。白ぎつね以外は、皆、こことは違う世界から来た人達らしい。
「貴方様も幻獣やら怖い人が沢山いるギルドよりは、同じ穴のムジナとでも言いましょうカ。そう言う人達と一緒の方が気が楽でございまショウ?」
と、白ぎつねが言うように、このギルドは人間の割合が高い。と言うか八割近くが人間だ。そういうギルドは珍しいとも、白ぎつねは言っていた。
総評。ギルドに入ればある程度の生活も出来るらしい。世界をみたいのなら北の土地に行って塔を登る。一人では無理。ギルドの居心地は悪くはない。
結果、俺はギルドに入る事を決めた。
「そうでございますか! ではでは、皆さんの紹介を…っていないのデス! ありえないのデス。新しい仲間が増えたのに、自己紹介も無しにどこかにフラッと消えるなんて…」
と、言った感じで少女二人はどこかに行ってしまっていた。
聞けば、残りの二人も仕事で出て行ってるらしい。
俺は少女二人を探しに行っても意味はないと考え、白ぎつねを引き止めた。
そして、残りのメンバーが返って来るまで、俺は白ぎつねと色々と話をした。
その中で、白ぎつねの扱い方を学び、少しだけ仲良くなれた気がした。