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Element Master  作者: 柚子桜
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第二話 初仕事#4



ポラリス西の街の外れ、426T-3869、観光施設『レイジファーム』。

少女二人と少年一人は、受付の女性に案内されて社長室へと通された。

社長室へ入ると、三人はまずガラスの窓に目を奪われた。

入口とは正反対の方向、社長が使うデスクの後ろ一面はガラス窓で、社長が所有する広大な草原を一望する事が出来る。

三人が愕然として立ち尽くしていると、社長らしき男性が椅子から立ち上がり三人に近付いた。

「よく来て下さいました。私、社長のレイジ=アトランタと申します」

六斗と憂は、未だに口を開けて外の景色に見入っていた。

雲雀だけは意識を戻し、ガラス窓の外の景色から目を離した。

「あっ…ギルド『聖騎士』の白河雲雀です。今日はどうぞ、よろしくお願いします」

雲雀はそう言うと、深々と頭を下げた。

社長のレイジも、それにつられて頭を下げる。

「いえいえ。こちらこそよろしくお願いします」

レイジは頭を上げると、愕然と立ち尽くす二人を見た。

どこか嬉しそうなのは、自分の庭を眺め驚愕してくれているからだろう。

レイジは六斗と憂に、優しい声色でゆっくりと話し掛けた。

「このような広大な自然を見るのは始めてですか?」

「……はい、初めてです。それに、動物達がこんなに…」

「はっはっは。それはそれは、何よりです」

レイジは嬉しそうに笑う。

しかし、そうずっと眺めていては仕事の話に進めないので、雲雀は二人を引っ張ってソファーに座らせた。

「で、レイジさん。依頼と言うのは…」

「えぇ。最近、フレイムボアが私の庭園を荒らして…」

レイジは先程とは違い、声に重みを持たせて語り出した。

「元々、フレイムボアの被害がなかった訳ではないのです。しかし、フレイムボア避けの水水晶を置いていたので被害はあまり大きくならなかったのですが…最近は、フレイムボアが奥まで入り込んで来ました。自慢の庭園を荒らされ、動物達も危害を受けた。これが一度だけならまだしも、何度も何度も続くもので…」

レイジはそこまで語ると、大きくため息を吐いた。

きっと、フレイムボアのせいで経営があまり上手くいっていないのだろう。

「分かりました。では、私達はフレイムボアを退治すればよろしいのですね」

「えぇ」

「分かりました。では、今から」

「ちょっと待った」

雲雀が内容を確認し終えた時、六斗は話を止めた。

冷たい視線が雲雀から注がれる。

「何かおかしな点があったかしら」

「いや、ちょっと気になった事があってな」

六斗はそう言って、レイジに質問する。

「レイジさん。その水水晶ってどこに置いたの?」

「水水晶ですか? あれは確か、森と草原の境目…ちょうど300メートル間隔で置きました」

「そうですか」

次に、六斗は雲雀と憂に質問する。

「二人に聞くけど、水水晶ってどんなものだ? 予想では、火を寄せ付けないって感じなんだが」

「えぇ、正しくその通りよ。火の加護を受けた低級の魔物は、水を怖がるようになるの。だから、水の加護を受けた水水晶を置いて、火の加護を受けた魔物を寄せ付けないようにしてるのよ」

「効果範囲は?」

「物によるけど…」

雲雀は、横目でレイジを見た。

レイジもそれに気付いたようで、デスクからある資料を持ってきた。

「これを見てください。私はこの商業ギルドのパンフレットを見て買いました」

そこには、ギルド『自由の(ノーサイド)』のパンフレットが。そして、レイジはそこの水水晶のページを開いた。

「『自由の(ノーサイド)』ですか。確か、このギルドはどこの区画にも属さない商業ギルド」

「でも、ここは信頼出来るギルド。偽物を売るなんて事はない」

憂の言葉にレイジは「当然です」と呟き、パンフレットに視線を落とした。

「私が買ったのは、効果は三年・範囲は300メートルの水水晶です。今までに二回買いましたが、欠陥品は一つもありませんでした」

六斗は顎に手を当て、フレイムボアが侵入した理由を色々と考える。

「憂、距離が遠くなるほど効果が弱まる何て事は…」

「それはない。水晶の力はどこでも一緒」

「そうか…レイジさん、最近水晶を変えたのはいつですか?」

「一年前です。その一年、被害はありませんでした」

「うーん…」

六斗は頭を悩ませた。

商業と言うのは信頼が大事だ。偽物を売ればそのギルドの信頼は落ち、顧客は激減するだろう。何らかの原因で効果が弱まった可能性もある。だが、一番考えられるのは…。

六斗は高い高度にいた時に見た景色の事を思い出していた。

この街は西区画のかなり西にある。しかし、この街は山を挟んで北西の区画に接している。俺が見た所、この土地は森を挟んで山に接していたはず。

白ぎつねの言葉が、頭の中を駆け回る。「反対に、北西や北東から魔物の侵攻がある」と。

だとしたら、これは結構危険だと六斗は考えた。

――その時だった。

「きゃあぁぁぁぁ!」

「襲撃! 襲撃ぃぃぃ!!」

鐘の音が盛大に鳴り響いた。

六斗が立ち上がった時、二人の少女は部屋から飛び出していた。

「あぁ…何と言う事だ…」

レイジはガラス窓の前で立ち尽くし、絶望の眼差しで外を眺めていた。

草原から炎が上がる。動物達が、燃えながら空に舞い上がる。

六斗はその光景を見てようやく現状を理解し、二人の少女の後を追い掛けた。



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