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ねぇ、あのね

作者: 仁科 薫

「ねぇ、あのね」


私と彼はお付き合いしている。世間一般的にいえば恋人同士。

彼は大学2年、私は短大2年。でも年は彼のほうが1つ上。そんな感じは全くしないけれど。


「私たち、別れたほうがいいのかな?」


彼の家から一番近いファミレスで向かい合わせに座り話し出す。

彼はメニューから顔をあげ怪訝そうな顔で私を視線を移した。


「なんで?」

「だって、課題たくさんあるんでしょ?バイトもあるし私に構ってる暇なんて無いじゃない」

「なに、別れたいの?」

「・・・・邪魔になってるんじゃないかって、思って。」

「俺は邪魔なんて思ってないけど」

「それに最初に言ってたじゃない、『短大生と付き合うつもりはない』って。『すぐ卒業しちゃうから』って」

「それは・・・・言ったけど」


彼は少し気まずそうに下を向く。


「私は卒業します。貴方はあと2年も残ってる。院にいったらそれ以上だよ?たくさんの人に出会って、私なんかよりずっと素敵な人だって出会うよ」


その不安も少しあった。私としては彼は普通のどこにでもいるような人だと思っていたが、写メを見せた友人は皆彼をカッコいいと言う。所謂イケメンらしい。自分で言うのもなんだが、確かに他の友人の彼氏たちよりはカッコいい・・と思う。

それに対して私は可愛くもなんともない、下膨れで団子鼻、目も小さい。化粧っ気もなくて『イモ女』と母に言われるほどだ。

ほんと、なんで彼が私の彼氏なのか今でも謎だ。


「また一人で不安になってるんだ」


彼は比較的大きな目で私を見つめる。(実は足も彼の方が細い。彼のジーンズを履けたためしがない)よく見ればまつ毛も長い。よくよく見れば劣等感しかわかない顔ではないか。(でも、そんな劣等感でさえ彼は笑いながら受け止めてくれる)


「またっていうな」

「ごめんごめん。でもこの話何回目かなー?」

「うるさい!!私はいつでも本気なんだから!」

「知ってる。じゃあ別れてどうするの?俺さみしいなーただでさえ一人暮らしはさみしいのに・・」

「じゃあ、このままでいいの?」

「うーん、本気で追い込まれた時はメールも止めるかもだけどさーお前はわかってくれるじゃん。大変だって」

「まぁ。私がしなくていいって言ったからね」

「それにさ・・





結婚しなくていいの?」



思い起せば彼に告白したのは私。酒も入っていて酔っていた。なのに彼は告白を受け入れてくれた。今思い出しても恥ずかしい私の


『結婚してください。つーか結婚を前提にお付き合いしてください』


という告白を。


「・・・・ずるくない?」

「そう?つーか俺だって不安だらけだし。俺いいトコ1つもないし、ダメ人間だし。お前が俺のどこ好きになったのか今でも謎だし」


あ、同じこと考えてる


「でも、別れてもきっと俺のダメ人間具合は変わらねーよ?なら別れても意味ないし、俺お前のこと好きだし」

「別れた方がいいと思うけど、私だって貴方の事好きだから別れたくない」

「ならいいんじゃない?別れなくて」

「・・うん、ごめんね」

「謝んなって。不安になったらいつでも言っていいから。その方が俺も助かる」


「ありがとう」

「どういたしまして」



 私たちはこれまで何回も似たような話をしてきた。面と向き合ってはもちろん、メールでも。(メールは普段からお互いに絵文字等使わない派なので感情がとても読みにくい)私は彼のことが好きだから不安になる。それは彼も同じ。彼はたまに弱音を吐く時がある。いつもとは立場が逆になって私が彼を受け止めてあげるのだ。


 きっとこれからも繰り返し続けるのだろうけれど、それはそれで私たちの愛情確認ということにしておこう。それでいつも最終的には


「ま、お互いにダメ人間ってことなんだろうけど」


私か彼が締めくくる。


「で、何食べる?」

「んーじゃあ・・・・」




私が卒業しても、こんな言い合いできるのかな?

でも今は今を楽しむことにする。

いつだったか彼が『別れるときは別れるんだから』って言ってた。なら私はそのときが来るまで待つことにしようと思う。

だからとりあえずメニューを見ながら彼に


「ねぇ、あのね」















(なんで結婚かって?だって彼、部屋きれいだし。夜中でも気になったらシンクの掃除始めるんだよ。ちゃんと料理するし、洗濯もするし。結婚したら円満な家庭が築けそうじゃない!)

(もちろんこの事は彼も知ってるんだから!)

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