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二夜

「錬磨お前なにやってんだよ」

凱鬼は錬磨問いかけた。

「俺は…守るん…だ」

「なにを守るってんだよ?その女か?わかってんのか?そいつは人じゃないんだぞ!」

凱鬼が叫ぶ。

「俺は…守る…んだ」

錬磨は紅い目のまま呟く。「そいつは魔なんだ!守る価値なんてありゃしないんだよ!」

錬磨は電柱に寄りかかっている飛遠の足に木の枝を突き刺した。

「!うわー!この出来損ないめー」

叫ぶ飛遠の頭を電柱に叩きつけた。

飛遠は意識を失った

「お前何してるかわかってんのかよ」

「…死ぬ事は罪じゃない…殺すことが罪なんだ」

虚ろな目で放つ言葉に、対峙する剴鬼はこの感覚に覚えがあった

「錬磨、お前スイッチが入ったのか…

嘘だろ」


(俺は何やってんだっけ…剴鬼が何か言ってる、スイッチ?あいつ何言ってんだ)

錬磨は少し離れている彩花に目をやった。

それは無意識の中でやった行動であり、人物を確認するための行動じゃなかった。

彩花が少し退いた、その行動もまた命を守る為の自然な行動だった。

「宗家の奴ら錬磨の頭ん中までいじくりまわしやがったのか」

凱鬼は怒りを覚え初めていたが、冷静さを失わなかった。

「彩花、今日は見逃してやるよ、あいつも医者に見せなきゃいけないしな」

凱鬼は飛遠の方を向く。

「それに、今俺が此処にいれば錬磨のスイッチがオフにならないだろうしな…そうなったら脳の回路が焼ききれちまう、それは避けたい…従兄弟としてな」

彩花は答えない、その場にいるだけで精一杯だった。去り際に凱鬼は錬磨に言った。

「錬…お前はこっちに来ちゃいけない、俺が守ってやっから…出来る事なら忘れてくれ」

凱鬼は子供の頃に呼んでいた呼び方で錬磨にそう伝えた。


やがて凱鬼の姿が消え、街に音が戻ってくる。

「このままじゃちょっとまずいかな」

彩花は自分と錬磨を見比べた。

「はぁ〜お互いボロボロだね」

彩花の言った通り二人の服は所々で破けて血や泥などで汚れていた。

「…」

錬磨は答えない。

静かに紅い目で彩花の姿を捉える錬磨。

「ねえ君、大丈夫?」

錬磨は彩花の方へ歩み始める。

(おい!何するつもりだ)

『全ての魔を殲滅せよ』

(何言ってんだよ!あの娘に何するつもりだ!)

『魔の殲滅が我の存在意義』

(やめろ!お前!俺の力なんだろう?ならやめろってんだよ!)

錬磨の動きが止まった。

「君、ねえ君!」

声を掛けながらも彩花は臨戦体制をとっていた。

「…や…め…ろ」

錬磨の声が微かに届く。

「えっ、何?」

錬磨の体制が崩れかける。「えっ、ちょっ君!」

彩花が駆け寄る。

「君!ねえ君ってば!」

必死に錬磨に声を掛ける。「っるせーな…少し休ませろってんだ」

錬磨が声に出す。

瞳の色は元に戻っていた。「休ませろって、君!」

「…」

錬磨の意識はすでに切れていたのか反応はない。

「んもう、休ませろって言われても、結界が解けかけてんのに、こんなとこにいられないでしょう!」

少しふてくされ気味に彩花は言った。

そして力を振り絞り立ち上がる。

「緑よ、大いなる自然の緑、今契約の元に我にその力を示せ!」

彩花の言葉で緑色の光が集まる。

その光の中から球根型の精霊が現れた。

「彩花大丈夫?今回は大変だったね、凱鬼の奴まで出て来ちゃってさー、もうヤになっちゃうよ」

この精霊は魔神【まがみ】彩花と契約を交わした魔の力である。

「球ちゃん、話しは後だよ今はここから移動しないと」

彩花は精霊の言葉を止め、現状を訴えた。

「そだね、彩花の言う通りだね、でもその男どうすんのさ?一緒に運ぶの危険くない?」

精霊は問いかけた。

「でも、ほっとけないよ、一応助けて貰ったし…それに悪い人じゃないと思うよ?」

彩花は答える。

「うーん、まっいっか、いざとなったらアタシの根っこで絞め殺せばよいしね」精霊はそう言うと、でかい葉っぱを作り出し彩花と錬磨を乗せた。

「しっかし、まー彩花も物好きだね〜こんなんよりもっといいやつ居ると思うよ」

精霊はニヤニヤしながら彩花に話し掛ける。

「なっ、何言ってんのよ!別にそんなんじゃないって、全く急に変な事言わないでよ」

彩花は首をブンブン降った。

「…そんなんじゃないんだから」

錬磨の寝顔を見ながらそう言った。


一方その頃

「…錬磨…こんなことに巻き込まれてんじゃねーよ」凱鬼は伏せ目がちに呟く。「うっ、っつ」

飛遠の意識が戻り始める。「ん…遠ちゃん、気が付いたかい?」

凱鬼に支えられていた飛遠は慌てて離れようとした。くっ…」

飛遠はかろうじて歯を食いしばった。

「おいおい遠ちゃん無理すんなよ、足の傷痛むんだろ?」

苦笑いしながら頭をかく凱鬼。

「しかし凱鬼さんは僕の上官ですから迷惑掛ける訳にもいきませんよ」

皮肉っぽい口調で言った。「全く、たまには上官に頼るのも部下の務めって奴だぜ」

凱鬼からため息が漏れた。飛遠は凱鬼の方を向く。

「…」

凱鬼が先に口を開いた。

「悪かった」

目を見開く飛遠。

「何がです?凱鬼さんは何もしてないじゃないですか?」

「だからだよ、何もしなかったからな…お前の暴走を止める事も…奴を、錬磨を止める事さえもしなかった」

凱鬼は真面目に答えた。

「凱鬼さん、奴はなんなんです?いきなり人が変わったみたいに」

凱鬼に問いかけた。

「さぁ〜な、俺にもよくわからないんだ…」

首を振りながら答えた。

「あんなアイツはじめてみたからな」

「そう…ですか、

でも僕は凱鬼さん止めようとしても、奴がまた邪魔をするなら…次は容赦なく躊躇いなく殺しますよ?」

「…」

凱鬼は答えなかった。

「凱鬼さん!」

「ん、なんだ?」

その瞳は何か悲しげに見えたからだろか、飛遠は。

「やっぱ肩かりてもいいですかね?」

凱鬼は少し可笑しそうに。「ああ、好きなだけ貸してやるよ。

まぁ俺に女が出来るまでだけどな」

凱鬼が言った。

「じゃあ僕離れられないじゃないですか」

「…なんですとー!お前俺を舐めちゃいけねーよ、その気になれば女の5人や100人はホイホイだぜ?」

凱鬼は外見だけ見れば流行りのイケメンだった。

「52敗」

飛遠が呟く。

「っつ、ねぇ遠ちゃん何かなその数字?」

凱鬼は冷や汗をかいた。

「僕に言わせたいんですか?もしかして凱鬼さんはMの方なんですか?」

飛遠は意地悪そうにわらった。

「…」

凱鬼は目を泳がせる。

「まぁ、僕の趣味は人間観察ですからね、興味の対象は特にですかね」

飛遠は言った。

「お前…少し離れろ。」

凱鬼はなるべく優しく言った。

しかし内心ではかなり焦っていた。

「…」

その後二人は会話なく歩いていたら、高級車が二人の横にとまる。

空いた窓の隙間から女の瞳が見つめる。

「ご苦労様、凱鬼君

今日は遅いから報告は明日で…最も今日はいい話しは無さそうですけどね」

車は去って行く。

「ちっ」

凱鬼は舌打ちをした。

「では凱鬼さん、僕もこれで、あっ気にしないでください、傷のリカバリーは終わりましたんで」

飛遠も去って行く。

「…錬磨」

空を見上げる凱鬼。



(あったけぇな…ここどこだっけ?)

ゆっくり意識が覚醒していく。

「眩しな」

辺りを見回すが、見知らない部屋だった。

錬磨は立とうとしたが。

「なんだ?体がいてぇ」

ヅキッ、錬磨は突然の頭痛に頭を抱えた。

「っつ〜なんだって言うんだよこの痛み」

「あっ君起きたんだ?大丈夫?」

錬磨は声の方向に顔を向ける。

「!あんたは!」

夜の事が頭に過る。

「って〜なをなんだよこの頭痛」

錬磨の頭痛はひどくなる。「君!無理しないで、ゆっくり落ち着いて…ね」

彩花は優しい声で錬磨に話し掛ける。

大きく息をする錬磨。

「はー、ふぅ」

だいぶ落ち着いてきたのか錬磨は彩花に話し掛けた。「なぁ、あんた何者なんだ?昨日の夜…ありゃ夢じゃねーよな?」

錬磨は確かめるように問いかける。

「ちょっと待ってよ、まず先にする事あるでしょ?」彩花が言った。

「?…助けてくれたんだな、ありがとう」

錬磨は言ったが彩花はため息をついた。

「なんだよ、ため息なんかついて…あんた」

「ハイ、ストッープ!」

彩花が錬磨の話しを止めた。

「あんた、あんたってちょっと失礼だよ?

私は姫髪 彩花

君は?」

彩花は自分の名前を名乗り錬磨に問いかける。

「えっ…」

錬磨は呆気にとられた。

「名前だよ、君の名前!教えてくれないのかな?」

イタズラっぽく彩花は再度問いかけた。

「あ、ああ…俺は、戦鬼 錬磨だ」

錬磨は少し戸惑いながら名乗った。

「クスッ、錬磨君か、ん〜じゃあレン君でいいかな?」

彩花は錬磨に笑い掛けた。錬磨は気恥ずかしさを感じ視線を外して言った。

「あんた、ちょっと馴れ馴れしくないか?」

照れ隠しだった。

気にせず彩花は続けた。

「私の事は彩花でいいよ?私自分の名前好きだから♪まぁ彩ちゃんでもいいけどね」

彩花は錬磨に自分の名前を呼んでくれるように促した。

「…あやか」

錬磨が言った。

「ん、何かな?レン君」

彩花が微笑む。

錬磨は頬をかきながら部屋を見渡す。

「!あっ!!」

錬磨が声を上げる。

「えっ、何?朝御飯はまだだよ」

彩花の答えは検討違いだった。

「ちげーよ、バカかあんたは?

ってこんな事してる場合じゃねーよ」

錬磨は慌てた様子だ。

「何よ失礼ね、どうしたのよレン君」

「時間だよ!時間!」

彩花は時計をみた。

「7時25分だよ?それが何よ?」

彩花は首を傾げる。

「ハァ!仕事だよ仕事!あんたは大丈夫なのかよ?」 「ああ、仕事か〜、やってみたかったけど〜なんて言うか」

「なんだよ?ぷーなねか?」錬磨が言った。

「うん、まぁ私お嬢様だからね、…ってかレン君ホント失礼だよね?」

彩花はしょんぼりした。

「ん、ってかここどこだよ!今から行って間に合うのか?」

錬磨は勢いよく立ち上がった。

「体は…ちょっとダルいけど大丈夫だな」

錬磨がいった。

「レン君無理は駄目だよ?」彩花が言った。

「それに多分間に合わないと思うな〜」

「ハァ?何でだよ?」

「だって昨日の場所から相当離れてるよ?」

「相当?んなわけねーだろ?」

夜からならそう移動距離はないだろうと錬磨は思っていた。

「ここどこだよ?」

錬磨が訪ねた。

「伊豆の方だよ」

「ハイ?…なんで?昨日まで都内に居たじゃねーかよ!」

錬磨は再び頭を抱えた。

「レン君、どうしたの?頭痛むの?」

彩花は聞いた。

「ああ、いてーよ!いろんな意味で…なんなんだよホントに」

錬磨は項垂れた。

「大丈夫?レン君?」

彩花は心配そうに錬磨の顔を覗きこむ。

「もういい!もう決めた!今日は休む!!誰がなんて言おーが今日は休む!!」

彩花は少しびっくりした。「あやか」

「ん?なにかな?」

「電話貸せ、携帯家におきっぱだ」

「あ、うんちょっとまってね」

錬磨は財布の中から会社の電話番号の書いてある紙を取り出す。

「ハイ、レン君電話」

錬磨は電話を受け取る。

電話を掛ける錬磨。

「…もしもし、戦鬼です。あっハイ、そうです、

それですいませんが今日はお休みもらいます。

あっすいません、ハイ、ありがとうございます。

じゃ失礼します。」

錬磨は電話を切る。

「はぁ〜ったく、すくねー有給が減っちまった…」

錬磨はぼやく

「で…だ、今度はこっちの問題か…」

錬磨は彩花に向き直る。

「うん、そうだよね…覚えてるならそうなるよね…」彩花は目を伏せる。

「まぁ、ほっとけねーよな、さすがに」

「…」

彩花は目を伏せたまま押し黙る。

今にも泣き出しそうな彩花を見て錬磨は。

「ハァ、まぁなんだ…朝なんだしまず朝飯だよな、悪かった話す前になんか食おーぜ」

錬磨は彩花に考える時間を与えた。

彩花が錬磨を見る。

コクンと頷き、答えた。

「そうだね、せっかくレン君の為に作ったんだからちゃんと食べてくれないと、駄目だよ」

「えっあやか料理できんのか?」

「なんで?」

「だってさっきお嬢様って言ってたから」

「うん、お嬢様だよ、でも料理位できるよ。」

錬磨は少し不安になった。「もうすぐ味噌汁できるからね、ちょっと待っててね」

彩花はキッチンに向かった。

「…」

錬磨はため息をついて呟いた。

「まぁ、食えねーもんなんかそうそう出てこねーよな」


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