十一夜
「まあ〜なんだあんたは死なすにはおしいな…」
修一は言った。
錬磨の目が開く。
「ん…んなにが、どうなったん、だ?」
意識のはっきりしない錬磨。
「ここは?っち、んだよ…そうだ!クソッ!あの女!」
意識がはっきりしていく錬磨。
「錬磨君起きたんだ〜、でもゴメンネ、今は相手してあげられないの」
剛の手当てをしながら錬磨に喋りかける麗羅。
「…どう、なってんだ?」
辺りを見回す錬磨。
「どこだよここ」
錬磨は呟いた。
2人の男が目に入る。
(なんだあいつら?…あれ剣か?あんなの構えてなにやってんだ?こんなとこで決闘でもすんのか?)
何故か冷静に物事を見ている錬磨。
「餌が目覚めたか?」
天夢は言う。
修一もチラリと視線を送る。しかし目の端では天夢を捉えていた。
「…」
修一は斬りかかる。
「おい!ちょっとあんた!」錬磨は叫んだ。
「…!なに!」
あわてて飛び退く天夢。
「っち…」
修一は舌打ちをした。
「不意討ちとは、あなたを買いかぶり過ぎましたね、俺は」
天夢は言った。
「…妙な事言うなあんた…暗殺に不意も何もないだろうに…」
修一は言い放つ。
「確かに貴方は立派な暗殺者かもしれませんね」
天夢は睨み付けた。
「ならば続きです!」
天夢は斬りかかる。
(なんなんだコイツら?本物の殺しあい?)
(汝は何も感じないのか?)(またお前か、ふざけんな!なんだよこの状況は!お前何か知ってるのか?)
(この戦は汝を中心に行われている)
(俺が…なんで?)
(汝は今、捕らわれ人。汝の為の戦だ)
(だから意味わかんねーって!)
(真実を望むのなら目を開け…我は汝と共に歩まん) (目なら覚めてる!)
(否、汝は…未だ目覚めぬ者)
金属のぶつかる音
「…」
修一は錬磨を目の端に入れた。
「やはり気になりますか?」天夢は問いかけた。
「…」
修一は答えない。
「多助おじさん急いで!」
彩花は言う。
「ンナコと言ったってよ!俺ぁそんな身軽じゃないんだ」
多助が言った。
「ほら騒いでないで、速く来なさい!」
月子が言う。
「んだよ〜月よ〜そんなシュウの野郎が心配なのか〜?」
多助がイヤラシ笑い方をする。
「バッ、何言ってんのよ?本当バカなんだから、アンタも…アイツも、ね」
月子は言う。
「も〜2人とも行くよ〜」
彩花は言う。
「あやはあやで王子様の心配か…」
多助が言う。
「あまり深入れさせたく無いんだけど、ね」
月子は彩花を見る。
「オマエさんたちの事は俺が命に代えてもちゃんと届けるから安心しろ」
多助が真面目な顔で言う。「オッサン、お父さんみたいね、まったく父さんなら私が幸せになるまで死んじゃ駄目って事だからね」
月子は言う。
「嬉しいーね本当に…」
多助が言った。
多助は過去に事故で妻と娘を失っていた。
「じゃあー行くぜ!大地の魔神!ジ、アース力を貸せ!」
『おう!多助!行くぜ〜』大地から羽根が出てきて3人を運ぶ。
「おじさん、目立つよ?」
彩花は言う。
「どうせ行くなら派手に行こーぜ!」
多助は豪快に笑う。
「バカだわさ…アースもよく一緒に居られるわさ」
球根が言った。
『こいつの熱さが解らないとは…女って奴は』
「暑苦しわさ、多助もアースも」
球根はため息をつく。
「ったく、しょうがないんだから、光の精霊ウィプス、我らの姿を隠しなさい」『月子、月影をつかうわよ?』
月子の魔神が言う。
月影は光を屈折させて姿を隠す。
「これでよしっと」
月子は言う。
対決の行方。
「…そろそろか、な」
修一は言う。
「何の事でしょう?逃げる準備ですか?」
天夢は言う。
「アンタ…不思議に思わないか?
なぜ援軍が来ないのか…とかさ?」
修一は言う。
「…!まさか」
天夢は気付いた。
「ああ、つまりはそう言う事、作戦が裏目にでたな」修一は言う。
「見せしめのつもりが、逆効果って訳ですか…」
天夢は言う。
彩花到着。
「レン君!」
彩花は叫んだ。
「…」
顔を上げる錬磨。
「誰だあんた?あんたも俺を知ってんのか?」
錬磨は言う。
「そっか…そうだよね、わかってた事だけどね」
彩花の顔が歪む。
「あやか…」
球根は下を向く。
「あんたが緑炎の姫さまか、なんだつまらなそうな女ね」
麗羅が言う。
剛の止血はすんでいた。
「…貴方は、あの蟲声の」
彩花は言った。
「そうだよ〜わたしよわたし♪」
可笑しそうに言う。
「なにこの娘…頭大丈夫?」月子は言った。
「なに〜失礼しちゃうな〜お姉さん…そんなに死にたいのかな?」
麗羅は言う。
「あら、気に障ったかしら?」
月子は挑発する。
「あや、アイツは私が引き付ける、だからあなたすべき事をしなさい」
月子は言う。
「月ねーさん…ありがとう」彩花はアースから飛び降りる。
「球ちゃん、行くよ!」
彩花は球根を呼ぶ。
「了解だわさ!」
球根から無数の蔦が伸びる。
「この!わたしを無視すんな〜」
麗羅が叫ぶ。
無数の糸が彩花を掴む。
「ほーら!パラパラになっちゃえ!」
麗羅の糸が絡まる
「えっ?なんで?確かに捕まえたのに」
麗羅は言った。
「あんたの相手は私って言った筈よ?」
月子は言った。
麗羅が掴んだのは月子が作り出した幻影。
「こざかいし真似してくれちゃって!」
麗羅は矛先を月子に変えた。
「こんなに簡単に引っ掛かるとはね、情けないよあんた」
月子は言った。
「あはは〜お姉さん、死刑決定だよ」
麗羅は叫んだ。
「…退かなくていいのかい?今なら追わないけど?」修一は言った。
「ありがたいですけど…こちらもこのままと言う訳にはいきませんよ!」
天夢は斬りかかる。
全ての斬撃をさばく修一。「ぬるい!」
天夢の隙を逃さず肩にナイフを突き刺す修一。
「くっ…さすがですね」
天夢は退いた。
「麗羅!引き上げます。」
剛を抱えて天夢は言った。「兄さん!こんな奴ら相手に!」
麗羅は納得のいかない顔で言った。
「引き上げだ…三度目はいわせないでくれ」
天夢は言った。
「見逃して頂けるのでしたっけ?」
天夢は問いかけた。
「ああ、今は退く奴に興味ない」
修一は答えた。
「今回は完敗ですね…次は最後まで…」
天夢は闇に消えた。
「…次があれば、な」
修一は呟いた。