十夜
「修君は普通の人と違う力あるって実感した時に…どう思ったのかな?」
彩花は聞いた。
「…うーん、特に何もなかったかな…」
修一は言う。
「俺は…さ、そういう風に作られた人間だからさ、そうなるのが当たり前としか思ってなかった」
修一は続けて言う。
「ごめんなさい、変な事聞いちゃったよね…」
彩花は頭を下げる。
「ん…やめなよ、そんな事しなくても俺は気にしないからさ」
修一は頭を撫でる。
「姫はさ、まだまだ一人立ち出来そうにないね…まったく
まぁまだしばらくは俺が守ってやれるからゆっくり立って行けばいいさ」
修一は言った。
「もう…そんな子供じゃないよ〜
ありがとう修君」
彩花は言う。
買い物を終えて。
「…さて、と帰るかね」
修一は言う。
「そうね、はやく帰らないと月ねーさんまた飲み過ぎちゃんもんね」
彩花は苦笑いで言う。
「まったく…参った事だ、今のところあれを止める手段はないからね…」
修一も苦笑いで言う。
「修君と月ねーさん結構お似合いだよ?」
彩花は言う。
「参ったね…どうも」
頬をかく修一。
不意に気配を感じる。
「…蟲か?」
修一は言った。
「そねようだわね」
球根が出てくる。
「戦闘タイプじゃ無いようだけど…いっぱいいるみたいね」
彩花が言った。
「…気を抜くな、戦闘の意思はないが…何かあっての事だろ?」
修一は言った。
「うん、でもなんなんだろ?」
彩花は言う。
蟲が喋り始める。
「わたしは〜裏政府暗殺部隊の麗羅、今日は緑炎のお姫様にお話があって、通信したんだけど〜聞いてるかな〜」
麗羅の声が響く。
「…」
修一は聞いてる。
「わ、たし?なんだろ?暗部なんて私しらない」
彩花は言う。
「えーっとね〜完結に言うとぉ〜貴方のせいで一般人の男の子が〜人質になってんの、誰だかわかるかな〜?」
可笑しそうに言う。
「人質…まさか!」
彩花が青ざめる。
「今から指定するとこに来て欲しいんだ彼の為にもね〜、来ないと錬磨君わたしのペットになっちゃうよ〜」
場所を伝え消えていく蟲。「なん、で…なんでレン君が…」
彩花は慌てる。
「あやか、落ち着いて、挑発だわよ、どこでアイツの事知ったのかわからないけど」
球根は言う。
「でも、でもホントだったらレン君が…」
彩花は取り乱したまま言う。
修一は彩花の頭を軽く叩いた。
「落ち着けよ、ったく…面倒な事しやがる、
大丈夫…まだ無事だよ彼は」
修一は言う。
「何でよ!何の保証があってそんな事言うの?」
彩花は泣きながら聞いた。「無事じゃなきゃ人質の意味ないだろ?」
修一は言う。
「じゃあ、速く行かなきゃ」彩花は言う。
「ちょっとあやか!待ちなさいな、行ったって罠しか無いわよ」
球根は言う。
「でも行かなきゃ!レン君が!」
彩花は言う。
「殺られるのが分かってて行かせる訳ないわさ、あやか冷静になってよ」
球根は言った。
「でも、でも」
彩花は言う。
「落ち着けよ…姫、
行くにしろ準備が必要だろ?
それにわざわざ見せ物になる必要もないだろ?」
修一は言った。
「見せ物?何の事だわさ?」球根は聞いた。
「…なんで奴は俺達だけでなく蟲をあんなに出してきたのか、
キューはわからないか?」修一は聞いた。
「ターゲットが解らない訳じゃないって事だわね」
球根は言った。
「ああ、多分見せしめだろうな…」
修一は目を細めて言った。「そりゃ、確かに見せ物だわね、だけど逆に考えれば十六夜以外の組織も動いてくれるって事だわね」
球根は言った。
「…基地に戻って、月子に蟲声を使わせて協力してくれる奴を集めろ…俺はやる事ができた」
修一は言った。
「えっ?修君どこ行くの?」彩花は口を開いて聞いた。「王子様を助けたいんだろ?…今は俺を信じろ」
修一は言った。
「しゅう…気をつけて行くわさ」
球根は言った。
修一は片手を上げその場から去った。
指定場所。
「遅いな〜錬磨君見捨てられちゃったかな〜」
麗羅は言った。
「っち、餌にもなりゃあしねーのかよ」
剛が言った。
「アニキどうするよ?」
剛は聞いた。
「慌てる必要もないだろ?それに…珍しいお客さんが来たみたいだ」
天夢は闇を見据えた。
「おいおい、誰だてめーは?」
剛が問いかけた。
「…」
修一は何も言わない。
「なぁに?魔じゃないみたいだけど、何かよーかなお兄さん?」
麗羅は聞いた。
「…」
修一は黙ったまま構える。「なんだ?こいつおれらと殺るつもりか?」
剛は言った。
修一は三股のナイフを両手に構える。
「避けろ!」
天夢は剛を突飛ばした。
剛のいた場所には修一が立っていた。
「…」
修一は天夢を見据えた。
「まだお前達じゃ、荷が重い」
天夢が言った。
「しかし、何故あなたがいるんだ?」
天夢は聞いた。
「…暗部はいつからそんなお喋りになった?お前達のはもう暗殺じゃねーだろ?」
修一は言った。
「結果が同じなら変わりない!」
天夢の武器カタールで斬りかかる。
「…っち」
天夢は舌打ちした。
完全のタイミングだったがそこに修一はいなかった。「さすがに速いな、あの零日とやりあった事だけはあるってことか」
天夢は言った。
「…下手だなお前」
修一は言った。
「それを決めるのはまだはやい」
天夢は言った。
「なんなのアイツ兄さんと戦える奴なんて暗部にも数える程しかいないのに」
麗羅は爪を噛む。
「あなたと比べられて、どんだけ俺が迷惑したと思ってるんです?」
天夢は言いながら斬りかかる。
「…知らないよ、そんな事」全ての攻撃を見切る修一。「死神がなんでここにきたんです?」
天夢は言った。
「死神だと!あれが暗殺における天才と言われた死神か?」
剛は言った。
「剛兄ちゃん死神ってなに?」
麗羅は聞いた。
「麗羅は知らなかったか?人を殺す為だけに作られた最強の暗殺者、殺す事だけなら零日をも凌ぐと言われたほどの男だ」
剛は説明する。
「なんでそんな奴がここにいるの?」
麗羅は言った。
「そんなの俺に聞くなよ…死んだって聞かされんだがな」
剛は戦闘を見る。
「…そろそろ逝くか?」
修一の動きが変わる。
防戦から攻撃に移る。
「…!」
天夢は防御の形に移る。
「っち、速い、しかも打ち込まれる度に重くなる」
天夢は少しずつ焦りがでる。
「待ちなさい!死神!これが見えないの?」
麗羅は錬磨の喉さきにナイフを突き立てた。
「…関係ないね、しかしそれを傷つけたらお前らの切り札がなくなるぞ?」
修一は攻撃の手を緩めない。
「っく…麗羅やめろ」
天夢はなんとか言った。
ナイフを引っ込める麗羅。天夢は距離をとる。
「なぁ?大人しくそいつを渡せばこっちは消えるが?」
修一は言う。
「悪いがそれはできない、こちらもそれが必要だから持ってきた」
天夢は言った。
「…仕方ない、か」
修一はため息をついた。
「くたばれ!」
剛が後ろから殴りかかる。剛の武器は鉄球。
「遅いよ…あんた」
剛の右腕を切り落とす。
「剛!下がれ!」
天夢は叫んだ。
「っそが!」
剛が叫んで殴りかかる。
「…うるさいよあんた」
修一は剛に斬撃を繰り出す。
「剛兄ちゃん!」
麗羅は糸で止血する。
「ヤバいよこいつ」
麗羅は言った。
「剛を連れて下がれ…傷を見てやれ」
天夢は構え直す。
「弟の腕は安くないぞ!」
天夢は斬りかかる。
先程とは違い確実に急所を狙ってくる。
「…やればできるじゃないか」
修一はニヤリと笑う。
「余裕のつもりかー!」
天夢は斬撃を増やす。
「…」
飛び退く修一。
「…未来視か?厄介だな、お前」
修一は言った。
「!流石と言うべきか、こんなにも早く能力がばれたのは初めてですよ」
天夢は言う。
「…雑魚とばかり遊んでるからたろ?」
修一は言う。
「おやおや手厳しい、あなたからすればほとんどの相手が雑魚でしょうに」
天夢は言った。