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第二話 0の組織

梅田の夜は、相変わらず騒がしかった。


 明るいビル、人の声、酒の匂い。

 その中を歩きながら、入井凌輔はふと足を止める。


「……久しぶりに行くか」


 視線の先にあったのは、昔よく通っていた居酒屋だった。


 店の中は、昔とほとんど変わっていなかった。


「お、珍しいやん。8年ぶりちゃうか?」


 カウンターの向こうで、店主が笑う。


「……どうも」


 軽く手を上げて、席に座る。


「とりあえず、生」


「はいよ」


 グラスが置かれ、泡が揺れる。


 一口飲む。


「……はぁ」


 少しだけ、肩の力が抜けた気がした。


 ふと、店の奥に目を向ける。


 スーツ姿の男女が六人。

 どこか統一感のある雰囲気。


「……営業か?」


 特に気にも留めず、視線を戻す。


 店主と他愛のない会話をしながら、酒を流し込む。


 一杯、二杯、三杯――


「……飲みすぎたか」


 気づけば五杯目を空けていた。


 その時だった。


 店の扉が静かに開く。


 黒のフードを被った男。


 顔は見えない。


「……」


 無言のまま、店を出ていく。


 妙に引っかかる。


「……なんだ?」


 理由は分からない。

 だが、無視できない違和感。


 少し迷ってから、立ち上がる。


「おっちゃん、ちょっと外出るわ」


「おう、気ぃつけや」


 外に出ると、さっきの男の姿が遠くに見えた。


 自然と足が動く。


 距離を取りながら、追う。


 人通りの多い道から外れ――


 気づけば、人気のない裏路地に入っていた。


「……やばいパターンか?」


 小さく呟いた、その瞬間。


「――動くな」


 背後から声。


 同時に、冷たい感覚。


 振り返ると、拳銃が向けられていた。


「……マジかよ」


 フードの男。


 さっきのやつだ。


「尾けてきたな」


「……まぁな」


 距離は近い。


 普通なら、終わりだ。


 だが――


「撃つぞ」


 引き金に指がかかる。


 その瞬間。


 パン


 だが、弾は当たらない。


 身体を最小限動かし、軌道を読むように避ける。


「なっ……!?」


 男が驚いた隙。


 一気に距離を詰める。


「遅ぇよ」


 能力を集中させる。


 全身の感覚が研ぎ澄まされる。


 ――一撃。


 鈍い音とともに、拳がめり込む。


 男はそのまま崩れ落ち、動かなくなった。


「……はぁ」


 息を吐く。


 静まり返る裏路地。


 その時。


「――まさか」


 少し幼そうな女性の声。


 振り返る。


 そこには、さっき居酒屋にいたスーツの男女六人が立っていた。


「……なんでここにいんだよ」


 気配がなかった。


 本当に“突然”現れたように見えた。


 女の一人がスマホを取り出し、どこかに電話をかける。


「……はい、確認しました。対象、能力者の可能性ありです」


「おいおい……」


 状況が理解できない。


 その間にも、男たちは素早く動く。


 倒れているフードの男を押さえ込み、手際よく拘束する。


 まるで訓練された動きだった。


 そして――


 黒塗りの車が、路地の前に滑り込むように止まる。


 ドアが開く。


「……乗ってもらえますか」


 一人の男が言う。


「いや、いきなり言われても――」


「我々は、公安警察です」


 その言葉で、空気が変わった。


「……は?」


 現実感が薄れる。


 公安?


 なんで自分が。


「詳しい話は移動中に」


 男は一歩近づく。


「ご同行、お願いします」


 断れる空気じゃない。


 逃げるべきか――一瞬考える。


 だが。


「……はぁ、マジかよ」


 諦めたように、頭をかく。


 そして、ゆっくりと車へ向かう。


 夜の裏路地。


 倒れた男と、黒スーツの集団。


 そして、黒い車。


 そのすべてが――


 ニート入井凌輔の日常が、完全に終わったことを示していた。

次回予告

公安の大阪支部に来た入井。超能力者のことをよく知るというの公安特殊部隊隊長から告げられる超能力者の真実とは?そして、話されるこれからの宿命。入井の判断とは?

次回「人類宇宙侵略計画」

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