9、神殿の祈り
翌日、装備屋まで二人で荷車を押してきた。神官の話では、この店は盗賊被害に遭っていないので、現金はあるだろう。建物の作りも頑丈そうだ。装備屋にはアイテムが集まってくるから、厳重に魔法アイテムで防御されているようだった。
二人で装備品を店に運び入れた。小さい町には、冒険者協会公認の冒険者の店はないので、相場の買取になる。
「買取をお願いします」
店のおじさんはにこやかに対応してくれた。
「聞いたよ。盗賊を退治してくれたんだろ? 若いのにすごいね! どこの冒険者なんだい?」
「フリオン団です」
「聞いたことがあるよ! 慈善協力もしていて、すごく評判がいい団だって」
「へへ、僕は創設メンバーなんです。僕はシュナ、こっちはコズエです」
「それで強いんだ」
(私も団員として褒められちゃった)
つい、お行儀よく僕と言ってしまった。でも、こうしておけば他の団員も、いい印象を持ってもらえる。
「あ! 魔鉱石がある~。欲しかったんだよ! やった。魔法石は高いから、野良の魔法使いに魔鉱石を加工してもらうんだ~」
(野良の魔法使い?)
「これは、教会に寄付する品です」
「さすがだね。なら、20%上乗せして買い取るよ」
「本当ですか! やった」
「え、すごい!」
コズエと二人で喜んだ。20%上乗せなら冒険者の買取価格と同じだ。おじさんがぴたりと止まった。
「君、女の子だったんだね」
(元の世界では、一度も男の子と間違われたことないのに……。服装のせい? 環境で顔が変わったのかな?)
コズエが固まっていた。ダメージが、計り知れない気がする……。
「すまなかったね。間違えちゃって」
「いえいえ、とんでもないです」
ほっ、良かった。コズエが聞いてきた。
「野良の魔法使いってなに?」
「魔法使いは土地に定着していることが多いけど、旅をしている魔法使いを野良にいるということで、野良の魔法使いって言うんだ」
おじさんは、査定をしながら話した。
「あの森はラシットの実が採れるんだけど、たくさん人が死んだならゴーストが出るかもしれないね」
「ゴーストってお化けのこと!?」
「そうだよ」
コズエの問いに俺が答えた。コズエはお化けが怖いらしい。
「近寄れなくて残念だ。盗賊がアジトにしてたから、ずっと食べてないんだよ。大好物なんだけど」
「それなら、ちょうど、採ったものを売りに行くところだったんです。上乗せのお礼に、おじさんにも差し上げます。これからは神殿の人たちが採りに行ってくれますよ。森にお祈りもしてくれると思います。」
「本当かい!」
おじさんは胸の前で、両手をグーにして喜んだ。お祈りは多分、ゴーストには効くだろう。
俺は、魔法袋からラシットの実をお椀に二杯分取り出した。魔法袋は保存したときから時間が止まるので、採れたてだ。
「わしも、魔法袋に保存する!」
おじさんは自分の魔法袋を取りに行って、ラシットの実を入れた。さすが、装備屋だ。
「帰ったら、妻と食べるよ。喜ぶだろうな。ありがとうね」
おじさんの喜びようを見て、コズエと二人で微笑んだ。査定も終わって、現金を受け取った。空になった荷車を引いて、食料品店に向かう。そこの店は、少し補修された跡があった。食べ物は盗賊に狙われやすいからな。
店に入ると、店主のおばさんに買取をお願いした。
「ラシットの実を採ってきたから、買い取ってもらえないでしょうか?」
「聞いたよ。盗賊を討伐してくれたんだろ」
「はい」
どうも町全体に、神殿で働く人たちから話が伝わったようだ。
「これも、神殿に寄付します」
「ありがとう! 少し寄付を上乗せしておくね! 買い物するなら、おまけするよ」
「ありがとうございます」
「やった、ありがとうございます!」
「女の子なのに大変だね」
「えへへ」
おばさんが間違えなくてほっとした。さすがだ。
お金を受け取ってから、二人分の食料を買い込んだ。おばさんは、買わなかったソーセージや魚の缶詰、乾燥チップスにお菓子をおまけで付けてくれた。買った物は全部魔法袋に入れた。
荷車を押しながら神殿に帰った。
「町の人たちは、みんないい人ね」
「そうだな」
盗賊団がいなくなって、来た時より人通りがあるし、活気が出ていた。
「次の神殿まではどのくらいあるの?」
「また二日ぐらいだよ」
「そっか。ごめん、全部寄付しちゃったから、シュナのお金に頼っているよね」
「大丈夫さ。もっと遠くまで、送って行くこともあるよ」
「ありがとう!」
「俺はB級冒険者だから、一人で行動できるし、結構ため込んでるよ」
(シュナはえらいな)
コズエに冒険者ランクの説明をする。
「冒険者はF級からあるんだ。B級になると一人で行動できるようになる。俺もB級になってから、おじさんと別行動するようになったんだ」
「ランクはどうやって決まるの?」
「モンスターにランクがあって、取得したアイテムの買取をしてもらうとランクが上がるんだ。A級以上は、一人で倒すのは難しくなる」
「なるほど」
「魔鉱石はどのモンスターでも落とすから、B級でも結構稼げるんだよ。C級までだと仲間と分け合うから、取り分が少なくなる」
(効率がいいから、シュナは一人なんだ。しっかりしてるな)
「午前中で済んだから、午後から出発しよう」
「うん」
帰ってお金を神官長に渡すと、みんな喜んでくれた。最後の昼食をみんなで取る。
「お礼にお祈りをします」
『はい』
礼拝堂で、神官長が杖を持って祭壇に祈りを捧げる。そのあと俺たちのほうを向いて、祈りを授けてくれた。二人の周りに、キラキラした小さな粒子が見えた気がする。コズエが感想を口にした。
「なんか、スッキリした気がします」
「神の御加護が付いたのでしょう」
神官長がニッコリ笑った。俺も、清々しい気分になった。祈りの効果はあるんだなと思った。それともコズエがいるからかな? よく考えたら、祈ってもらったことがなかった……。コズエが俺のほうを見る。
「良かったね」
「うん。ありがとうございます」
「ありがとうございました」
二人でお礼を言った。みんなに別れを告げて、神殿を後にした。




