6、うれしくない再会
森を抜けると、少し下った先にバリントの町が見えてきた。
「あの町に神殿があるんだよね。シュナともお別れか~。寂しいな」
「……俺もだよ」ぼそっと言う。
「そうなの! じゃあ、お別れのハグを……。やっぱり臭いからやめとこ」
コズエは臭いを気にしてしょぼんとした。
「いいよ。最後なんだし。臭いはお互い様だ」
「わ~い」
多分、俺のほうが旅が長いから臭い……。コズエは2日前に来たばかりだからな。
町に入って、神殿に向かう。辺りはなんだか様子が変だった。人が少ない気がする。
神殿に到着して門から中を見ると、壊れた椅子やドアが外に置いてあった。
「どうしたんだろう」
50代ぐらいの男の神官が、壊れた大きな花瓶を中から持ってきた。
「何があったんですか?」
「ああ、旅の人ですか。昨日の夜、盗賊が来て、片付けをしているところです……。私はここの神官長です」
『!』
二人とも驚いた。神官長は元気なく答えた。
「俺は冒険者のシュナで、こっちが異世界人のコズエです」
「そうなんですか! タイミングが良かったのか悪かったのか。多分、良かったんでしょう」
神官長は中に案内してくれた。礼拝所の手前が荒らされていた。
「ちょうど、国からの支援物資が入った日だったんです。そこを狙われました。定期的にやってきては、食料を奪っていくんです……。町の店も襲われることがあります」
「そんな……」
コズエがつぶやいた。この世界ではよくあることだった。奥の倉庫に行くと空の箱が置いてあり、他は何もなかった。
「でも、保存庫がまだありまして、そこは無事です」
「分けて保管するのはいいことです」
こんなご時世だ。奥にある保存庫を見に行くと、中にピンク頭の女がいて、干し肉や干した果物を食べあさっていた。それを見て俺たちは驚いた。
「あんたは!」
コズエが叫んだ。
「あら、異世界人さん。売られたんじゃなかったの? 運がいいのね」
「売られたわよ」(シュナの活動のことは言えないから)「でも盗賊が来て、シュナに助けられたのよ」(昨日、盗賊に遭ったから嘘ではないな)
「ふ~ん」
ピンク頭はこいつか。確かにふてぶてしい奴だ。神官長が注意した。
「やめてください! 何をやっているんですか、あなたは! 大事な物資を盗むなんて」
「役人に突き出そう」
「ちょっと、やめてよ。いなくなるから」
「そうはいかない。もう食べただろ。この、コソ泥が」
女はナイフを取り出した。
「きゃあ」
神官長が悲鳴を上げて、俺たちの後ろに回った。
「!」(かわいい顔して、意外と怖い!)
「やるのか?」
俺は素手で構えた。ここは狭いから、中剣は邪魔だ。コズエも構える。
(細いし、力は弱そうだから、なんとかなるかも)
女は分が悪いと思ったのか、あっさりナイフをしまって手を上げた。
「分かったわよ。私はエリサよ」
「もういいですから、出て行ってください」
神官長はエリサを許したが、このまま逃がすわけにはいかない。俺はエリサに向かって言った。
「確かにかわいい顔だよな」
「あら! シュナだっけ。あなたいい人ね。そんな女はやめて私と組まない?」
「なんですって!」
「そうだな。ちょうどコズエとはここでお別れだ」
「シュナ! そんな奴、危ないよ」
「へへ~ん!」
エリサはコズエに舌を出して、俺にまとわりついた。俺は、エリサから魔法袋を奪った。
「あ!」
中から食料を全部取り出した。この倉庫と他の町で盗んできたものだろう。意外と少ないけど、ないよりましか。
「なんてことするのよ!」
俺は、食料を少し袋に戻した。そして、自分の袋から銅貨を五枚出す。
「これだけあれば次の町まで行けるだろう」
「お金をくれる人なんて初めてだわ! お金よりも食料の方が大事なのに」
エリサは素早く受け取ると、嫌味を言う。
「じゃあ、金は返せ」
「いやよ。あっても困らないもの!」
「取り返してくれてありがとうございます」
神官長は喜んだけど、これだけでは少ないな。
「盗賊から取り返そう」
「え!? ……そうか、アピスね」
「ああ。盗賊の居場所が分かればいいんだけど……」
「それなら、アジトは南の森だと言われています」
神官長が教えてくれた。
「分かりました」
「私も行くわ」
「うん」
気が付くとエリサは消えていた。逃げ足の速い奴だ。俺はメモに、エリサの髪や服装などの特徴を書き込んだ。職業は、コソ泥だ。
コズエと二人で南の森に向かった。




