5、キャラバンと合流
俺がキャラバンに手を振ると、先頭の馬に乗った男が馬を止めた。俺は首から下げた冒険者証を見せて、馬車に乗せてもらえるか交渉した。
「俺は冒険者のシュナ。あっちは連れのコズエ。バリントの神殿まで行く途中です。渓谷を抜けるまででいいから、乗せてもらえないでしょうか」
ターバンにひげの生えた男は、俺とコズエを検分する。二番手の馬に乗った男もこちらに来た。
「いいぞ。子供二人でえらいな。お前たちは運がいい。俺たちは国の荷物を運んでいるキャラバンだ。バリントの神殿にも物資を届けに行く。希望のところまで乗せて行こう」
「そうなんだ。それは安心です!」
ポイズンアピスの作戦も話したら、男たちは喜んだ。
「それは助かる! 俺たちもその作戦に協力しよう」
話はまとまった。後ろで聞いていたコズエも安心していた。
「良かった」
「行こう」
二番手の男の後に付いて行った。全員に俺たちを紹介して、作戦の話をして回った。
「それは名案だな。賢いな坊主」
ちょっと褒めてもらえた。ポイズンアピスはもっと南に生息しているから、知っている者は少ない。当然盗賊たちは知らないだろう。
隊は普通の荷馬車が二台、幌付きの馬車が三台。護衛は先頭と後方、左右に二人ずつまんべんなく配置されていた。御者の交代要員も二人乗っていた。全部で15人の中隊だ。
真ん中の幌付きの馬車に乗せてもらえることになった。中は木箱と、宿泊用のテントなどの備品も積まれていた。
馬車は渓谷に入った。幅は馬車がすれ違えるぐらいある。両脇は高い崖だ。
「冒険者は戦力になるから、だいたい乗せてもらえるんだ」
「そうなんだ。さっき、何を見せてたの?」
「冒険者証だよ」
俺はコズエに冒険者証を見せた。角の丸い鉄製のプレートに、名前と誕生日、出身地、所属しているグループが刻印してある。おじさんは、村の名前をそのまま団の名前にした。
「冒険者は行方不明になることが多いから、協会があって登録制なんだ。このタグを見つければ、その冒険者の装備品を冒険者価格で買い取ってもらえる。普通の人がアイテムを換金する時は、相場より安くなるけど、プレートを回収できるから、特典があるんだ」
「へ~」(それだと、冒険者が襲われることもありそう……)
「コズエにアピスの繭を渡しておくよ」
俺は魔法袋から、アビスの繭を四個とりだして、二個をコズエに渡した。一個は予備だ。俺は胸ポケットに入れておく。
「え!! 持ってて大丈夫なの!?」
「うん。衝撃を与えなければ繭は割れないんだ。落としたり味方に付いても、潰せば済むから」
(うぉぉ)「分かりました」
コズエは観念して受け取ると、胸ポケットに入れた。ちょっと笑えた。俺はスリングショットを取り出した。
「あ、それパチンコ」
「俺はこれを使う」
「そっちのほうが当たりそう」(この世界にもゴムがあるんだな。ゴムは天然だからあってもおかしくないか)
「飛距離が短いんだ。俺が前に出るから、コズエは後ろからだ」
「うん」
俺は集めた石をズボンのポケットに移した。コズエも真似をする。
渓谷の距離は1㎞弱だ。歩いてでも10分程度で抜けられる。馬車はゆっくり進んでいた。
隊が急に止まった。来たな。俺は馬車から降りて確認した。前方に丸太が置いてあって、道がふさがれていた。先頭はそのだいぶ手前で止まった。後ろをふさがれずに済むので、賢い選択だ。隊は崖の上や辺りを見渡して警戒する。
すると、しびれを切らした盗賊が上から降りてきた。下の岩影からも現れる。盗賊の数は十人と少なかった。キャラバンの者たちが剣で立ち向かう。なかなかの腕前だ。コズエも馬車から降りた。俺たちも石を当てる。盗賊は劣勢になると崖に下げた縄を伝って逃げ始めた。
「今だ! コズエ」
俺はアピスの繭を放った。盗賊の足に命中すると、繭が割れて張り付いた。コズエも別の盗賊の背中に見事に当てた。
「やった!」
「上手くいったぞ」
コズエと一緒に喜んだ。怪我を負った盗賊は丸太の向こうへ消え、二人は動けずそのままだった。俺は録音石で記録すると、兵站に送った。
隊の損傷はなかった。強いキャラバンで良かった。俺たちも手伝って、妨害している丸太をどけると、隊は再び出発した。馬車の中でほっと一息ついた。
「終わって良かった」(初めての戦闘でドキドキした)
「お疲れ。初めてにしては上出来だった!」
「褒められた! やった!」
隊は、無事に渓谷を抜けた。俺たちは出口を出て見晴らしのいいところで降りた。行先は同じだが、お互い別で行った方がよいこともある。
「じゃあな。助かったよ、シュナとコズエ」
「こちらこそ、ありがとうございました」
「ありがとうございます!」
「気をつけてな~」
お礼を言って隊と別れる。みんなで手を振り合った。
入り口と同じ岩と砂だけの砂漠を歩くと、森が見えてきた。今日はここで1泊して明日はバリントの町に着く。
コズエとの旅ももう終わりだ。いつもは、人買いに売られて暗い顔をしている人が多かったけど、コズエは明るいので旅は楽しかった。誰かと旅をするのも悪くないなと思った。
昨日と同じように野宿の準備をする。二回目だけどコズエは手慣れたものだった。




