43、コズエの帰還 第一部完結
『コズエ、帰る時が来ました』
また声がした。コズエが問いかけた。
「神様?」
神様は小さい女性として現れた。緩くて長い金髪で、分けた前髪にドロップ型の宝石のついたアクセサリーをしていた。白いゆったりとしたドレスを着ている。
(神様、小さいな)
タクトは頬を染めて見とれていた。
『コズエ、私たちの世界に来てくれてありがとう』
「はい」
コズエは返事をした。
(別れの時が来たんだ。涙が……)
コズエは、俺とタクトに抱き着いた。
「最後だから、ハグしていいよね」
「うん」
約束だから……。俺もコズエを抱きしめた。
「二人とも、本当にありがとう! 二人のこと忘れないよ。みんなにもよろしく言っておいてね」
「うん。もちろんだ。コズエ、俺たちを助けてくれてありがとう。俺も忘れない」
「コズエ~。元気で~」
タクトも大泣きだった。俺も涙を浮かべる。コズエが俺たちの腕をすり抜けて後ろへ上がっていく。カズヤの時と同じように、光に包まれた。コズエも泣いていたが、微笑んでいた。そして消えた。
横を見ると、タクトが自分を抱きしめて、チュウの口をしていた。
俺は、それを半目で見ていた。おまえ、やめろ……。
目を覚ますと、学校の廊下だった。あの瞬間に戻ったんだ。でも、私の体はこちらの記憶が遠いから、確かに異世界に行っていたんだと思う。
「梢! 部活に遅れるよ~」
友達の由香だ! 私は由香に飛びついた。
「え~、どうしたの? 私に会えたのが泣くほどうれしかった?」
「うん!」
私は涙を浮かべていた。由香から離れると指で涙をぬぐって笑った。二人で歩き出す。
「あれ? なんかかわいい木彫りのキーホルダーだね」
「え!?」
驚いて、ラケットの袋を見た。あのキーホルダーの、ムチッとした白リスが不敵な笑いを浮かべていた。え~!? そうだ。私は急いで袋の中を見た。中からピンクのきれいな袋が出てきた。
「あ~、これもある」
もしかしたら持って帰れるかもと思って、こっちにしまったのだ。ラケットにも合成の紫のラインが入っていた。
魔法は使えないだろうけど、異世界のお土産と思い出がある!
シュナとタクト、みんな、異世界で出会った人たち、本当にありがとう!
私はまたうれしさと寂しさで涙が出て、気持ちがいっぱいだった。
「梢~、先に行くよ」
由香は先に行っていた。私は意気揚々と走り出した。
「待って~。今行くー!」
◇
辺りは普通の景色に戻り、神様もいなくなっていた。塔があった場所は何もなかった。瓦礫も中の物もすべて、光になって消えていた。ロドリゴが消えたのも、あの時点で建物を維持する魔力が足りていなかったんだ。足りない分を物で補って、変換されてしまったのだろう。
働いていた人たちは無事だった。双子の護衛は縛られたままだ。塔の中心部には、書類だけが残されていた。あのカタログもあった。
おじさんが、兵士とともに走ってきた。
「お~い! シュナ!」
「おじさん!」
「塔が崩れ出したんで驚いたぞ。兵士を連れてきた!」
「うん。……終わったんだ」
おじさんが呆れる。
「様子を見に行ったのに何で終わったんだ!? まったくお前には驚かされるな」
「みんなのおかげだ。コズエは異世界に帰った」
「そうか!」
おじさんはすごく驚いていた。それから、兵士がスナープ団で働いていた人たちを連れて行き、書類も回収した。俺たちも報告のために城に連れて行かれた。
王女もいきなり塔がなくなって驚いていた。その場で録音石の情報を証拠として、城の受信石に送信した。光の空間の映像はなかった。個人的なことなのでそれは良かった。俺はあの塔の役割を話した。王女もそれを聞いて安心していた。これで、この国は良くなると思う。
録音石の情報と残された書類によって、ロドリゴの悪事は暴かれた。この後、スナープ団と関係のあった者たちも捕まえる予定だ。いなくなった村人たちの捜索も書類をもとに始めることになった。
スナープ団の資産は国がすべて没収したが、戦争時の借金返済に消えてしまった。それでもまだ借金は返しきれていない。
これを機に、村人がいなくなった村は領主から放置されていたので、返還させて国の管轄となった。領主たちも手が回らないので、しぶしぶ了承した。
復興までは税金が免除されることになり、村の復興事業は王女が担当することになった。
後日、俺たちは褒章がもらえることになった。おじさんとクレードはそれぞれの村の準領主となり、自治権が認められた。準領主は世襲制ではなく、国が次の領主を任命する。タクトは授業料の借金が免除になり、なんと魔法学校の特待生になって復学した。好きな時に自由に学べることになっている。俺は騎士の称号をもらって、国の探索者となった。全員がフリオン団の活動をそのまま続けている。
あのカタログは複製されて、魔法学校とマーレイの図書館に寄贈された。
新聞にはロドリゴの事件と、フリオン団のことが大々的に書かれた。
『悪魔の塔、崩壊!! またしてもフリオン団のお手柄』
悪魔のことは伏せられているが、タイトルだけは通称なので使われていた。
もうこの国で、俺たちを知らないものはいないけど、団員の顔写真は載せないようにした。
もちろんコズエのことも異世界から来た仲間として書かれた。異世界人のコズエが俺たちの世界を救ってくれたことは、これからもずっと、この国で語り継がれると思う。
ありがとう、コズエ!
読んでいただいて、ありがとうございました<(_ _)>。シュナとタクトの冒険はまだ続きますが、一旦終了とさせていただきます。




