42、スナープ団をぶっ潰せ!
階段を上がるたびに、空気が重く、嫌な感じがする。
「瘴気が濃い気がする」
「うん」(本当、重苦しい)
コズエも同じように感じていた。タクトも言った。
「魔力も濃くなっているよ」
上の階は、ワンフロアになっていた。太い柱が四本、天井を支えている。床は下と同じチェック柄だ。奥に階段付きの高い台があり、その上の赤いクッションの椅子に、ロドリゴは目をつむって座っていた。右手には杖を持っている。その後ろには、マントを被った丸顔の骸骨がいた。椅子をすり抜けて、ロドリゴの肩に手を置いている。
あれは、——ナイトメアだ! ここが一番魔力が強いから、悪魔が見えたのだろうか。二人に小さい声で言った。
「あいつ、ナイトメアに憑りつかれている」
「え、見えるの⁉」
「ナイトメアって?」
タクトが怯えた。コズエが聞いてくる。
「夢を操る悪魔だ」
ナイトメアは俺を見ると、丸い黒い目を三日月のように細めて笑った。ロドリゴは口を開いた。
「ここにいると、とても落ち着く。私の夢がここから世界に伝わっているのだ」
塔が何かを発信しているのか? 復興が進まないのはそれが原因なのか? 俺はロドリゴに聞いてみた。
「あなたの夢は何ですか?」
「私の夢は、金だ。金を稼いで贅沢な暮らしをすることだ!」
(あの料理もそうだわ。この塔も城と言っていたし、ここはロドリゴの完璧な世界なんだ)
ロドリゴの言葉に、コズエは表情を硬くしていた。
それで人を金に換えているのか……。あの海のように、心が冷たくなる。その夢には終わりがないから、悪魔も離れないんだ。——そうか。完全に守ることで、ロドリゴは油断した。悪魔のあの笑顔は、自分を解放してくれる者を待っていたんだ!
俺の目が一瞬鋭くなったのを、ロドリゴは見逃さなかった。目を細く開けて俺を見ていた。
「思い出した。フリオンは村の名前だな。あの船は沈んで、銅貨一枚も稼げなかった。思い出しても腹立たしい。シュナ、お前はフリオン村の生き残りだろう」
感情が顔に出てしまった。ユリスの気持ちが分かるな。やはり、スナープ団の仕業だったのか。
「フロスト村もそうなのか?」
「部下にやらせているから、私はいちいち知らない」
俺はコズエに小声で言った。
「コズエ、光の玉をロドリゴの頭一つ分上に向けて打ってくれ」
「分かった」(ユナさんの玉を使おう)
コズエは何もないところに光の玉を打った。
「私には攻撃は効かないぞ」
玉はロドリゴの上を通過した。
「どこを狙っている」
光の玉は見事ナイトメアに当たった。ナイトメアが光り、ロドリゴから離れた。浄化されたようだ。笑顔を浮かべて消えた。ロドリゴの体がガクンと下に沈んだ。
「なんだ? 体が重くなったようだ」
ロドリゴには悪魔が見えていないんだ。杖も自然と手にしていたのだろう。俺は階段を上った。
「お前は私の命が欲しいのか?」
「お前の命はいらない。俺たちの目的は塔の破壊だ」
「なんだと!? そんなことをすれば警備署に連絡して、お前たちは捕まるぞ」
「残念だな。神託が下りて塔を破壊することは決定された」
「あの王女か! お前たちが邪魔をしたおかげで、売り飛ばすことができなくなった」
王女の件も、スナープ団の仕業だったのか。ロドリゴは立ち上がった。
「もういい。フリオン団は邪魔な奴らだ。ここで私が始末しよう」
杖を俺に向けた。でも、何も起こらなかった。
「なぜだ?」
今までは、魔法が使えたのだろう。でも魔力を無限供給してくれていた悪魔がいなくなった。俺はニヤリとした。ロドリゴが護衛に命令する。
「ベルダ! ジギー! こいつらを捕まえろ!」
「はい!」
双子の護衛が階段を慌てて登ってくる。
「こっちは任せて!」
タクトが二人を魔法で拘束した。縄を出して縛り上げる。あっというまだ。
「ちっ!」
ロドリゴは舌打ちした。俺は剣を振り上げて飛びかかった。ロドリゴは杖で受け流す。撃ち合うたびに、杖から光が漏れて流れ出ているのが分かる。ロドリゴは息が上がって苦しそうだ。だが杖のおかげか、ロドリゴの動きはまだいいようだ。こっちも下からの攻撃は不利だ。タクトはロドリゴに拘束魔法を出してみたが、魔法は杖に吸収されてしまった。悪魔の杖の効果か。モンスターと同じだな。
「ダメか!」
「じゃあ私が」
コズエが小石を手に当てようとしたが、杖の魔法が吹き飛ばした。
(ダメだ)
ロドリゴの動きが止まった瞬間、俺は額に剣を振り下ろした。ロドリゴは杖で受け止めると強い光を放った。さっき吸収したタクトの魔力か?
「ふはははっ」
ロドリゴは笑う。だが、光が消えると、杖は砕け散った。杖の魔力がとうとう切れたんだ! そして壊れた杖とロドリゴの体が光って消え始めた。
「なっ、なんだこれは!?」
ロドリゴは杖ごと消えてしまった。
「やった!」
タクトが声を上げた。コズエも喜ぶ。
だが、ゴゴゴゴッっと地響きのような音が聞こえてきた。建物のあちこちに亀裂が入り、天井から破片が落ちてくる。壁が割れ、外が見える。床も崩れて、塔が崩壊し始めた。タクトが叫んだ。
「塔が崩れる」
「この塔は悪魔の力で作られていたから、魔力が切れたんだ!」
床が割れて、離れ出した。
「シュナ!」
「コズエ!」
俺はコズエの手を取った。だが、足元は割れた床しかない。後は、落ちるだけだ。タクトの魔法で何とかなるか?
すると光の玉が現れて、それぞれを包み込んだ。ゆっくりと下に降りていく。
『え?』
三人とも驚いた。辺りは光に包まれて、外界から隔絶された空間になった。光の玉から声がする。
『ありがとう。私たちを解放してくれて』
タクトは玉を見て言った。
「これは、もしかして魂!?」
スナープ団のせいで亡くなった人たちなのか……。その人たちが悪魔のエネルギーになっていたのか? ——みんな、この城に捕らわれていたんだ。お父さんも、お母さんも、妹のネネも……。
『お兄ちゃんありがとう』
ネネの声がする。俺は涙を流した。
「ネネ! 違う。俺は、誰も助けられなかった」
ただ、海に沈んでいくだけだった。コズエとタクトが俺に手を伸ばした。
「違う! シュナはみんなを助けた」
「そうだ。お前はみんなを助けたんだ」
「ありがとう」
俺は涙を拭いて、笑った。ネネの声がする。
『神様がみんなを助けるために、私たちに力を貸してくれたの』
俺たちは明るい空間に降り立った。光が上に上がって、みんなが消えていく。
ありがとう。さよなら、ネネ、お父さん、お母さん。




