41、塔の宿泊
塔に残ったコズエは、ロドリゴに建物の中を案内された。中央にエレベーターがある。
えっ? エレベーター!? 護衛と一緒に、四人で乗り込んだ。ちょっときついかも。
「これはどうやって動いてるんですか?」
「魔法石だよ」
「なるほど」
魔法か~。五階で止まる。降りると、床はつるつるの素材で、深い青い色をしていた。ここも壁は白く、窓もほとんどない。同じ丸い照明がぶら下がっていた。なんだか、近代的なデザインだ。
「五階からが居住区で、君の部屋も用意してあるよ」
え~と。「ありがとうございます」
とりあえずお礼を言っておこう。
「この建物は十階建てだ。八階より上は私のプライベート空間だ」
「そうですか」
秘密は八階より上にあるのかな? 部屋に案内されて中に入る。中は、中世風のアンティークな部屋だった。建物だけモダンなんだな。窓が一つだけ付いている。空と街並みが小さく見える。外が見えて良かった。久しぶりに高い所に登ったな。
「ここが君の部屋だよ。ドレスも用意してあるから着替えたまえ。では、私は戻るから、あとはこの婆やに任せるよ」
ドアの前に、背の低い腰の曲がった丸顔のおばあさんがいた。ロドリゴは護衛と行ってしまったので、ほっとした。婆やはロドリゴの親戚かな? なんか似ている。ロドリゴは元々お金持ちそうだな。
「着替えを手伝いますよ」
「はい」
婆やがピンクのドレスを出してくれて、髪もきれいに上げてくれた。鏡を見てなんだかお姫様みたい。でもこのドレス、ピンクの色がきつい。赤いフリルがスカート部分に横に付いていて、胸にも赤いリボンで全体的に子供っぽかった。趣味がイマイチだな。まあ、いっか。
「では、案内しましょう」
「はい」
婆やがいい人で良かった。婆やについて行く。五階には食堂や調理場があって、料理人が二人働いていた。掃除の人も見かけた。階段もエレベーターの周りにあったが、婆やは使わなかった。それぞれの階にも上がって廊下を歩いたが、誰もいなかったし、調理室がないだけで、五階と造りは変わらなかった。天井を見上げた。なんだろう、この建物の壁は変な感じがする。上の階に行くほど、重苦しい気がした。
タクトと俺はアパートに戻った。おじさんがさっそく聞いてきた。
「どうだった? ん、コズエは?」
俺たちは気まずい表情をする……。俺は指で顔をかきながら言った。
「それが、コズエだけ泊まることになって……」
「え!? 大丈夫なのか!?」
クレードが驚いた。
「一応、明日迎えに行くことになってる」
俺は塔でロドリゴと会った時のことを話した。録音石の映像をみんなにも見せる。見終わるとおじさんはつぶやいた。
「そういうことか」
「ロドリゴは悪魔と契約しているということか?」
クレードが聞いたので、俺は答えた。
「多分そうだ。あの塔は、悪魔の力でできていると思う。それならあの規模でもおかしくない」
「やっぱりアイテムじゃなかったね」
タクトも同意した。おじさんが言った。
「じゃあ、その杖を何とかすればいいのか?」
「そうだと思う。あとは、コズエの報告を待とう」
「分かった」
コズエが無事に塔を出られるかだよな。明日のことを話す。
「明日はおじさんも来て、近くで待機してほしい。午前中に行くから昼過ぎても俺たちが出て来なかったら、警備署に連絡してほしいんだ」
「分かった」
「クレードたちは危険だから、またお留守番していてくれ」
「了解だ」
『了解』
ジミーとコリンも額に手を当てて返事をした。
スナープ団の塔。コズエは食堂で、婆やが用意してくれた食事を一人で食べていた。
コース料理でとてもおいしかった! 元の世界も含めて、今まで食べた中で一番おいしかったな。みんなにも食べさせたかった。ごめんね、みんな。
婆やが明日の予定を言ってきた。
「明日は、ご主人様と朝食の予定です」
「分かりました」
よしよし、朝食を食べた後に帰れれば問題なし。その日は、ゆっくりお風呂にも入れて、いいベッドで寝られて、なんだかいい思いをしているな。今まで大変だったからいっか。その日は熟睡した。
翌朝、またドレスを着た。今日は黄色のドレスだ。鏡を見ながら、まあ、かわいいよね。ドレスが。食堂に向かうと、ロドリゴはすでに来ていた。新聞を読んでいる。今日は舞踏会の日だよね。
「よく眠れたかな」
「はい、とっても」
シュナといたので、私も礼儀正しさが身に付いて、世渡り上手になったかしら。オホホと心の中で、上品に笑ってみせた。
朝食もすごくおいしかった! 食事が終わったので、早速言ってみる。
「今日は一旦帰ります」
「そうか、残念だ」
ロドリゴは顔を曇らせたが、無理なことは言わなかった。良かった。
「私は午後からまた出かけるから。それまでは上にいるよ」
「はい。お暇する時にお伺いします」
これで上の階に行ける。私は部屋に戻ると、ドレスを脱いで元の服に着替えた。念のためカバンからラケットを出しておく。階段を使ってロビーに向かった。これだと婆やに会わずに済む。とりあえず階段に隠れて様子を見るか。
俺たち三人は、また塔に向かった。待ち合わせ場所を少し離れた街灯に決める。おじさんが立ち寄る喫茶店も決めて、塔の周辺で待機してもらうことになった。
俺は録音石のスイッチを押すと、タクトとまた塔に入った。
「コズエに会いに来ました」
「あ、えっと」
「シュナ、タクト!」
コズエが脇から飛び出してきた。受付の女性は驚いた。もしかして、呼びに行くつもりがなかったとか?
「ロドリゴさんに挨拶してから帰りますね」
「分かりました」
コズエがそう言うと、女性は了承した。コズエは俺たちを引き戸の前に案内する。コズエがエレベーターの説明をしたので、俺もタクトも驚いた。人を運ぶ滑車のようだ。エレベーターに三人で乗り込む。コズエは最上階の十階を押した。個室に入ってようやく会話できるので、コズエが話した。
「会えて良かった!」
「うん。なんか変だったね」
「俺もそう思った」
「ロドリゴさんは、私にはいいって言ってたけど、違ったのかな?」
コズエはそう言うと、俺たちに顔を近づけて小さな声で言った。
「この建物は上に行くほど、重い感じがするから上に秘密があるみたい。私は七階までしか行かなかったけど、そこまではどの階も同じだった。それ以上はロドリゴの部屋って言ってた」
「そうか」
コズエは用心していた。この会話も聞かれているかもしれないな。俺たちも気をつけないと。
「まったく警備がいないな」
「そうなんだよね。普通に働いてる人はいたけど、警備らしい人は赤い服の二人以外はいなかったよ」
「それだけ、悪魔に守られているということかもな」
悪魔が相手では誰も勝てないだろう。SS級のモンスターでも。なにせ、悪魔は実体がないからな。エレベーターが十階に着いて、ドアが開いた。床が水色と紫の大きなチェック模様になっていた。目の前に双子の護衛が立っていた。
「ここからは立ち入れません」
「ロドリゴさんに挨拶しに来たんだけど」
コズエが言った。横に短い階段があって上から声がした。
「問題ない。ここに参られよ」
まだ上にも部屋があったんだ。俺たち三人は顔を見合わせると階段を登った。




