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グロット・オー ~スナープ団をぶっ潰せ!~  作者: 雲乃琳雨


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4、初めての武器

 買い出しが終わると食堂で昼食を食べた。保存食以外のものを食べると、元気になる。豚肉と豆の料理を、コズエも喜んで食べていた。


(変わった味だけど、意外とおいしかった! デザートがあれば最高なんだけど、それは贅沢かな)


「この国に、甘いものが食べられる店とかはあるの?」

「首都に行けばあるよ。砂糖も結構、貴重品だから」

「なるほど」

「焼き菓子なんかは売ってるよ」


 お菓子屋には行かなかった。俺はあまり食べないから、気が付かなかった。虫歯になるし。でも、歯を磨けば大丈夫か。


「じゃあ、お菓子も少し補充しよう」

「やった! ありがとう」

「うん」


 お菓子屋に行って、コズエに選ばせた。クッキーとマドレーヌを買ってコズエに持たせた。なんか親の気分……。

 買い出しが済んだので、アルムヘイムの町を後にした。町を出るとまた、岩と砂だけの砂漠に入った。

 さっきの続きを話した。


「この国は他国と10年ぐらい戦争をしていたんだ。終戦から7年経ったのに、人もお金もなくてまだ復興中なんだ。それに、戦争に行かずに隠れていた大人が盗賊になったりして、治安がとても悪い。モンスターも出るから、移動する仕事をしている人たちはグループを作って活動していることが多い。

 俺がいたフリオン村は小さい村で、戦争が終わって1年後ぐらいに、人買いの集団に襲われたんだ。歩くのが遅い老人以外の村人が全員連れて行かれた」

(そんな!)

「俺のお父さんは戦争から無事に帰ってきたけど、大人の男の人が少なくて、人質を取られて抵抗することもできなかった。村人50人ぐらいが船で運ばれた。でもその船が海底の岩とぶつかって沈んだんだ」

「!」

「みんな死んで、俺だけが生き残った。村を用事で出ていたハシブおじさんは、残った老人から話を聞いて外に出た。おじさんも家族を連れて行かれたから。船が沈んだことを聞いて、海岸に向かった。そこで、流れ着いた俺を見つけたんだ」


『シュナ坊!』


 おじさんは俺を見つけると、抱きかかえた。


『息がある』


 おじさんは泣いていた。おじさんと俺は村に戻った。俺は家のベッドに寝かされていた。


『この村で生き残ったのは、俺とお前と数人の老人だけだ。

 俺は、絶対あいつらを許さない!』


「おじさんは復讐を誓って、人買いの情報を集めるようになった。冒険者になることにして、準備のために攻撃や防御とサバイバル術を身に付けた。いなくなった家の家財をまとめて資金にして、老人たちに村を任せて村を出たんだ。それから、冒険者をしながら、奴隷を買い取っては家に送ったり、家のない者は仲間になったり、そうやって少しずつグループの仲間を増やしていった」


(シュナは大変な人生を送っていたんだ。だから年下なのに、しっかりしてるんだね)


 コズエは黙って聞いていた。俺は話を続けた。


「一番の元凶は、スナープ団なんだ。表向きは商会だけど、裏では人を売って儲けている。国よりもお金があるんじゃないかと言われているんだ。貴族や外国にも顔が利くから、国も容易に手が出せない。組織と関係がなくても、人を売る奴がいる。それで周りから潰していくために、兵站に情報を送って捕まえることに協力してるんだ」

「……そうなんだね。フリオン団のしていることが分かったよ。シュナやハシブおじさんのように、人のために活動している人がいて安心した。話してくれてありがとう」

「うん。これは、この国の大事なことだから」


 コズエに伝わって良かった。


「それなら、私も武器とか持ったほうがいいのかな?」

「そうだな。コズエは何が得意なの?」

「私、部活でバドミントンをしてるんだ。スポーツなんだけど」(通じるかな?)

「遊戯みたいなものかな?」

「そうそう」(遊びで申し訳ない)


 コズエは黒い細長いカバンから、ソフトピンクの平たい網を取り出した。


「これはラケットで、ちょうど、ガットを張り替えてもらって、家から持ってきたんだよね」(普段は、クラブハウスのロッカーにしまってある)「なぜか向こうからこれだけ持ってきた……。半円形のコルクに羽が付いたシャトルを打つと、時速200kmぐらい出るんだよ」

「ふ~ん。それはすごい」

(時速が通じた。馬車があるからかな)


 俺は顔を近づけてよく見てみる。ラケットは、少しキラキラしているのが感じられた。これは……、


「これ、魔力がある。合成すれば武器になるよ」

「え! 本当!?」

「でも合成は魔法使いじゃないとできないから、今は使えないな。一応、コズエにも使えそうなものは用意してあるよ」


 俺はリュックから投石紐を取り出した。小石を拾ってセットして投げてみる。


「こんな感じ。石はどこにでもあるから」

「おお~、やってみる」(私は、命中率高くないけど、当てる範囲が広ければ大体OKよ)


 コズエは前にある岩に向けて投げてみた。見事に当たった。


「よし!」

「おお~。すごい」

(初めての武器だわ。喜んでいいのだろうか……)


 一回で当てたから、かなりの腕だ。

 また歩き出した。コズエは道すがら石を集めた。


「これもよさそう」


 下ばかり向いて夢中になっているので俺は笑った。コズエは集中していて、気にしていなかった。俺も石を集めておいた。

 オレンジ色の岩山の前まで来た。馬車が通れる渓谷がある。


「この渓谷には盗賊が出るから、キャラバンを待って一緒に乗せてもらう」

「え、出るのは決定なの?」

「だいたいそうなんだ。地形的に逃げ場がなくて、襲いやすいんだよね。でも、対策は取ってあるよ」


 俺は魔法袋から白い繭を取り出した。


「これはポイズンアピス。蜂型モンスターの卵だ。繭が割れると吸着して急速に孵化し始める。その後、近くにいる生き物の体内に入って十分食べると、今度はすぐに羽化する。単体でも増えるから、成虫になると毒で動けないようにして、卵を植え付ける。これを盗賊団に付ければアジトは全滅だ。しばらくはこの辺りに盗賊は出ないと思う」

(まじで怖いんですけど。スズメバチみたいなモンスターかな)

「羽化すると南の生息域に戻っていく。女王蜂しか繭にならないし、卵も産まない。冬が来れば、女王蜂以外は死ぬから増えすぎることもない。人に寄生しなければ普通に巣を作るから、いなくなった後はハチミツも取れる。近寄らなければ攻撃しないから問題ないよ」

「そうなのかな……」


 ポイズンアピスは普通の蜂と違って攻撃的ではない。コズエは疑っているようだった。

 キャラバンを待つ間に、武器の練習をしたり、護身術をコズエに教えたりした。


「狭いとこに連れ込まれたら、逃げ場がないから、隙を見て逃げるんだ」

「うん」(それは、最初来た時に十分感じた)

「ヘルナンはシーフタイプですばしっこい。ポルクはパワータイプで力が強いから、攻撃が当たったらひとたまりもない」

「シーフは職業クラスのことだよね?」

「そうだ」


 コズエの世界は、こちらの世界と似ているところがあるんだろうか?


(合成とかアイテムとか、ここはゲームの世界みたいだな。今は部活が中心でゲームしてないけど、前は少しやってた)


 教えているとコズエの動きはかなり良かった。


「コズエは、覚えがいいんだな」

「わ、褒められた! 勉強はイマイチだけど、体を動かすのは好きだよ」


 防御の型を教えて、組手をする。コズエは楽しそうだった。

 体力もあるし、ちょうど良かったな。今まで送り届けた人たちは、長旅に慣れていない人がほとんどだった。


 そうする間に、キャラバンがやって来た。


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