39、城への招待
本物だと思うけど……俺たちがここに来たのが分かったんだ。準備が早いな。俺とおじさんは男性を見た。
「団のために荷馬車で来ています。先方には裏口に付けて入ります」
目立たないように、ということだな。おじさんが答えた。
「分かりました。準備をしますので、待ってください」
俺たちは部屋に戻った。おじさんがみんなに言う。
「城に行くことになった」
『えっ!?』
当然みんな驚くよな。
「コズエとタクトもだ。迎えが来ているから準備してくれ」
「分かった」
「了解!」
コズエとタクトも準備をしに行った。
「じゃあ俺たちはお留守番だな」
「留守を頼む」
『了解!』
ジミーとコリンが返事をする。準備をして外に出ると、アパートの前に幌付きの馬車が停まっていた。俺たちが乗り込むと出発した。コズエが聞いてくる。
「秘密なんだね」
「そのほうが、目を付けられなくていいからな」
俺が答えた。城に着くと、馬車は裏口から入った。馬車を降りると、使用人の出入口に案内される。中に入ると衛兵が二人いた。
「ハシブ殿は、会議に参加してください」
「分かりました」
もう一人の衛兵が言った。
「三人は王女がお待ちです」
「分かりました」
「じゃあ行ってくるな」
「うん」
おじさんの言葉に俺が答えた。俺たちは左右に分かれて付いて行った。
(城だ~。わ~、ドキドキする!)
コズエはうれしそうに辺りを見回していた。タクトも口を開けて眺めていた。俺も初めてだから緊張する。応接室に通された。ソファに座って待つように言われ、メイドがお茶を出してくれた。早速コズエがお菓子を食べる。
「後だと食べられないかもしれないから」
お菓子を頬張る姿に、ちょっと笑った。緊張が取れた。少ししてから王女が入ってきた。メイドが中で待機している。
「みなさん、来てくれてありがとう! 今日はお礼を渡すために呼びました」
「お招きありがとうございます」
『ありがとうございます』
コズエもお茶を急いで飲んで、タクトと挨拶した。それを見てまたちょっと笑った。王女は、ピンク色のきれいな小袋を俺たちに差し出した。
「これは昨日、助けていただいたお礼です。危ないところを助けていただいたのに、金貨十枚しか用意できなくてすみません」
王女は申し訳なさそうに言った。俺は手を振った。
「とんでもないです。十分です。ありがとうございます!」
(金貨十枚は、百万円ぐらいね)
コズエが鋭い目で何かを考えていた。王女はほっとした顔をして話した。
「神託が承認されました。会議ではスナープ団に関する人身売買の情報を、ハシブさんに話してもらっています」
「そうですか」
塔を壊すことに関しては、文句を言われないということだな。でも、スナープ団からは何があるか分からない。
「明後日、舞踏会が開かれることになりました。スナープ団のリーダー、ロドリゴも参加します。今は商人の力が強いので、貴族だけではなく商人も招待しています。
ロドリゴは舞踏会に参加する時は、要人との交流のために前日から、城に近いホテルに宿泊します」
それはつまり……。王女はにこやかに言う。
「ロドリゴは塔を留守にしますので、その時に訪問されてはと思いました。今日はそのことをお礼と一緒に、お伝えしようと思いました」
「なるほど……」
そういうことか。いずれは行くからな。
「分かりました。明日行ってきます」
「ありがとうございます」
王女は顔の右側で手を合わせて、ニッコリ笑った。ちゃっかりしてますね……。それから王女はフリオン団の話を聞いてきたので、みんな自分のことを話した。ノックがして、衛兵が会議が終わったことを告げた。
「では、終わりにしましょう。今日はありがとうございました」
「はい、こちらこそありがとうございました」
『ありがとうございました』
俺たちは王女にお礼を言った。王女の後について部屋を出ると、廊下で別れた。
「王女様にまた会えた~。今日もきれいだったね」
「うん……」
うれしそうなタクトに、コズエが目だけ笑って返事をした。コズエは律儀だな。コズエがいなかったら、俺が返事をしているだろうなと思った。また裏口に戻り、おじさんと合流して同じ幌馬車で帰った。
アパートの廊下でイグナシオに会った。ちょっと聞いてみた。
「事務所の建物の保証はどうなった?」
「ああ、俺は保険に入ってなかったから、建物のオーナーが築年数の分を引いて借金にしてくれた。新築するまでの家賃も払うことになる」
「そうか」
だいたい家賃は金貨一枚ぐらいだろうか? それが半年と、三階の建物だと金貨三百枚ぐらいはかかるだろうな。あとは商売の設備費用の借金もあるだろうし、家族がいない身で冒険者をやっていれば返せない額ではないな。装備は冒険者協会でもレンタルできるし、借金もできるから揃えられる。けど……、俺はコズエとタクトを見た。
「みんなの分だけど、少しあいつに分けてもいいだろうか?」
「いいよ。私の分はシュナに渡す」
「俺はシュナに従うよ」
二人は了承してくれた。俺は王女からもらったきれいな袋から、金貨二枚を出してイグナシオに渡した。イグナシオは驚いた。
「これは返さなくていい。大変だろうから渡しておく」
「……お前ら。ありがとう。やっぱり、いい奴だな」
イグナシオが涙を浮かべてお礼を言った。俺たちはイグナシオと別れて部屋に戻った。部屋ではいい匂いがした。クレードとジミーたちが、夕飯の用意をしてくれていた。
「お帰り~」
「ただいま」
コリンが出迎える。
「お土産はある?」
「あるよ。ほら」
俺はきれいな袋を見せた。
「王女から金貨をもらったんだ。みんなで分けよう」
俺はコリンとジミーに、金貨を一枚ずつ渡した。二人とも大喜びだった。
それから、おじさんとタクトと自分に二枚ずつ分けた。
「俺は?」
クレードが聞いたので、コリンたちを指さした。
「もう渡した」
「お~い。お前ら、くれ」
「ダメだよ~。僕たちがもらったんだから」
クレードが二人に寄っていくと、二人は金貨を持って逃げた。それを見てみんなで笑った。俺はもらった袋をコズエに渡した。
「この袋はきれいだから、コズエにあげるよ」
「ありがとう。本当にきれい」(サテン生地みたいね)
コズエはすごく喜んだ。早速、ラケットのバッグのほうにしまっていた。女の子は、こういった小さくてきれいなものが好きだよな。ネネもきれいなものを集めていたっけ。小さな石とか。——また、ネネのことを思い出したな。




