38、グリート団を訪問
翌日、朝食を取ってから新聞を見に行くと、みんなが読んでいるので待つしかなかった。宿は大きな事件があった時は、多めに新聞を買っている。おじさんが知り合いに声をかけて、回してもらうことができた。
「デナスという男が地雷を投げたらしい。団員が何人か死んだようだ」
『!』
被害が相当大きいな。地雷ならやはり誘拐犯と仲間なのか。地雷は投げて使うこともできる。とんでもない奴だ。新聞を見るとデナスの似顔絵が載っていた。ターバンを巻いて冷たい目が、嫌な笑いを浮かべている。
「じゃあ、首都に向かおう」
「うん」
俺たちは首都に向かった。首都には2時間ちょっとかかる。子供がいるからもっとかかるかもしれない。クレードが俺たちに言った。
「おまえたち先に行っていいぞ。冒険者のアパートで合流しよう」
「分かった」
首都には協会がやっている冒険者用のアパートがあって、短期滞在用の住まいを貸してくれる。冒険者は首都に用がないから宿はないのだ。俺たち三人は先に行くことにした。2時間弱で行けるかもしれない。
首都の街が見えてきた。それと同時にスナープ団の白い塔も見えた。裾広がりの外観に、ところどころ窓がある単純な形だ。コズエが珍しそうに言った。
「あれがスナープ団の塔なんだね」(他は低い建物だから、すごく目立つ)
「うん」
俺が返事をする。
先にグリート団の事務所に向かった。地区は新聞に載っていた。アパートよりも先の繁華街にある。街は石造りの建物が並んでいた。近くに行けば事件のあった場所なので、聞くとみんなが知っていた。
グリート団の事務所は三階建ての建物だったが、そこに着くとその場所だけ建物がなく瓦礫になっていた。隣の建物は建っているがガラスが割れたり、壁が削れて損傷している。地雷のすさまじい威力だ。新聞には、魔法で瓦礫をよけて埋もれた人を全員出したと書いてあったが、二階にいた人も含め、全員死亡していた。三階には人はいなかった。
「ひどい……」
コズエが手を胸の前でぎゅっと握ってつぶやいた。瓦礫の中にイグナシオが一人で座っていた。俺が声をかけた。
「おーい、どうなったんだ」
「……フリオン団か。よく分からないが、デナスが地雷を使った。俺は出かけていて助かった。半分以上の仲間が死んだ。生き残った仲間もいなくなった。レイナも……。俺はすべてを失ってしまった」
「え!?」
イグナシオは肩を落として下を向いた。コズエが驚いた。
(なんだか、サンドルさんが言ってたのと似てる。大人の女性は頼りにならなくなったら、いなくなっちゃうのね)
コズエは目を線にして、残念そうな顔をしていた。建物は借りていた物だろうから、賠償しないといけないだろうな。
「ユリスやキーラたちはどうなった?」
「ああ、あいつらは現場にいたけど無事だ。俺もあいつらも冒険者のアパートにいる」
「そうか」
結局アパートに行くことになった。アパートに入ると受付の前にキーラたちがいた。受付は管理人の部屋になっていて、窓越しに対応する。コズエから安堵の声が出た。
「キーラ、ユリス、ヘルナンさん!」
「コズエ、みんな」
キーラが返事をする。いつもと違い元気がない顔をしていた。とくにユリスは重い表情をしていた。二人ともポリントの時と様子が同じだ。キーラたちは俺たちのほうに歩いてきた。荷物を持って旅支度をしていた。チェックアウトしたんだな。
「無事で良かった!」
「そうだね」
コズエの言葉にキーラが控えめに答えた。俺が聞いた。
「何があったんだ?」
「……あたしたちが原因だ。どうしようか迷ったが、昨日の昼に三人で事務所に行ったんだ。そうしたら、デナスが後ろのドアに移動してこちらを見た。あいつは笑って地雷を投げたのさ。ホント、何が起こったのか一瞬さ」
「私のせいです。私がデナスを睨みつけてしまったから。きっと、私が無事に戻ったことで、自分のことがバレたと悟ったんです」
「ユリスが光魔法で防御してくれたから、俺たちは助かったんだ」
「キーラとヘルナンが私をとっさにかばってくれました。私は両手を出して魔法を使いました」
三人がそれぞれ説明した。光魔法はすごいな。
「そうだったのか」
「ご褒美をもらいに行ったら、団は壊滅して、リーダーに残ったのは借金だけさ」
笑えないけど、キーラはいつもの軽口をたたいた。結局ユリスが、グリート団を終わらせてしまったな……。
「これからどうするんだ?」
「私は、モーリアの神殿に行きます」
「あたしたちが、ユリスを送って行くよ。あたしもポルクの件があったから、イグナシオとはもう離れる。潮時だね。また、新しい雇い主を見つけるよ」
「俺はキーラさんに付いて行きますよ」
ヘルナンはキーラに言った。キーラは微笑んで、手の甲をヘルナンの胸にトンっと軽く当てた。俺が別れの挨拶をした。
「会えてよかったよ。じゃあ、また」
「気を付けて」
「ユリスちゃんも元気で!」
コズエとタクトが手を振った。タクトの言葉にユリスもやっと微笑んだ。キーラたちも手を振って、笑顔でアパートを後にした。俺も手を振る。グリート団はみんなの予想通り、やっぱり崩壊した。
俺たちは受付で三室ある部屋を取った。一人部屋にコズエ、二人部屋に俺とタクト、三人部屋におじさんとクレードたちのつもりだ。台所とトイレ、お風呂も付いている。
「本当にアパートだ」
コズエが感心した。受付の人には、おじさんたちに部屋を取ったと伝えてもらうようにお願いした。リビングのテーブルの上に地図を広げた。
「ここが、現在地。ここが、スナープ団の塔だ。ここからでも見えると思う」
「外からも見えたね」
コズエが言った。位置的には、城とアパートの間にある。城は中心部から端寄りの高台の上に立っている。ドアがノックされた。
「来たぞ」
クレードの声だ。俺はドアを開けて、四人を迎え入れた。おじさんがさっそく聞いてきた。
「グリート団はどうだった?」
俺は見たことと、聞いてきたことを話した。
「そうか。もう解散したんだな」
「うん」
そういうことだな。またノックがした。俺はドア越しに対応する。
「はい?」
「受け付けです。御用の方がお待ちです」
「分かりました」
俺とおじさんで玄関まで行くと、初老で黒いジャケットの男性が、帽子を取って立っていた。受付から離れて話をする。聞かれたくないことなんだな。その男性は手紙をおじさんに差し出した。封蝋には王家の紋章が押されていたので驚いた。
『!』
俺とおじさんは顔を見合わせた。宛名はフリオン団になっている。おじさんが封を開けて手紙を読んだ。
『フリオン団の皆さん
城に招待します。リーダーのハシブさん、シュナ、コズエ、タクトは迎えの者と一緒に来てください。
ウティルナ王女』
手紙はウティルナ王女からだった。




