37、爆破事件
食堂は賑やかだった。おじさんが説明する。
「食事は1回1時間で、その間は自由に出入りできる。9時までやってる。風呂は10時までだ」
『分かりました』
コズエとタクトが返事をした。
食事を取っていると、顔見知りの冒険者ジョーとベインが来て、タクトを見て言った。
「自慢の魔法使いって君かい?」
「え?」
「ハシブさんが魔法使いが入団したって、自慢してたんだよ。ぜひ、魔力の補充に協力してほしいんだけど~」
「お前ら」
頭に手を置いているジョーと、揉み手しているベインに、おじさんが半目で言う。
「今月厳しいんだよ。家族に仕送りしなくちゃいけないし」
「ほら、みんなのフリオン団でしょ」
二人は同じ村の農家で出稼ぎで来ている、40代の仲良し冒険者パーティだ。おじさんはしぶしぶ言った。
「タクトがいいならな」
「いいですよ。そんなに疲れてないし。俺も体力あるから」
そうなのか。やっぱりコズエと一緒だなと、食事をしながら感心した。
「やった」
「食事の後、お風呂に入ってから談話室でしますね」
「OK。ありがとう!」
二人は喜んで去って行った。クレードがちょっと忠告する。
「談話室だとみんなが来るぞ」
「いいですよ。なんか知り合いが増えそうだし。みんなの役に立てるならうれしいです」
「タクトはいい奴だな」
クレードは感心して言った。あまり深く考えてないと思う……。
食事が終わると風呂に入って談話室に向かった。コズエも風呂に入ってから様子を見に来た。タクトはすでに、魔法使いがいない小パーティたちの人気者になっていた。みんな探索石や録音石、他の魔法石を持ってきている。壊れた道具や武器を持ってきている人もいた。
俺は壁の掲示板を見ている。掲示板には、モンスターやアイテム情報など、冒険者に必要な情報が貼られていた。真ん中は、冒険者情報だ。ミンたちとポルクの情報が、顔写真付きで貼られていた。顔写真は、登録時に録音石で撮られる。それをプリントアウトしたのだ。死亡と冒険者資格の剥奪の内容が書いてある。ミンたちは北東の同盟国ロンファウから来たお尋ね者だった。ロンファウは第五側室の国で、東の国が北東を抑えられたことによって戦争が終わった。ミンたちの確認が不十分だったことについて、冒険者協会の謝罪も書いてあった。コズエも掲示板のほうに来た。
「あ! ミンとポルクのことが載ってる」(文字が読めるわ。これがチートね)
「読める?」
「うん。キーラたちも冒険者だったのね」
「そうみたいだな」
単独行動していたし、何かと便利だから登録はしていたんだろう。その隣には、事件の新聞記事の切り抜きが貼ってあった。ここはダイジェストでその後が分かるので、見るようにしている。先に自分たちが関わったものを見た。
『砂漠の人買いのアジト摘発』
『渓谷の盗賊全滅』
あの後、人買いたちは捕まって良かった。あの時の盗賊も全滅したのが分かった。もちろん、俺たちの名前は出ていない。アピスのことも秘密だ。
『バリントの森の盗賊全滅。神殿と村人たち感謝』『フリオン団ありがとう!』
ここからは荷物を取り戻したので、俺たちのことが出ている。なんか恥ずかしいな……。コズエが記事に気がついた。
「最初の! この記事は、私たちの旅の記録みたいだね」
「うん。俺たちの活躍は、全部コズエが来てからだ」
「そっか、それなら私が来た意味があるのかもしれないね」
「そうだと思う」
コズエが俺を見てニッコリ笑った。俺も微笑んだ。
『プラットの町を襲った冒険者盗賊、賞金首が退治』『フリオン団が商品を取り返す!』
賞金稼ぎの情報は書かないので、フレイアのことも当然書いていない。俺たちのことは書いてある。
『エイリアスの花で、S級魔法使い復活!』
サンドルの記事もあった。シロリス村は、エイリアスの花を求める人が押し寄せているらしい。だがその後、誰も取得に成功していない。
『魔法使いフロスト村を占拠後事故死。フリオン団村人を開放。少女たちは帰る』
ゴーザの顔写真も載っていた。魔法学校の卒業生と書いてあり、冒険者たちの死亡疑惑についても書いてあった。
『バスタとアイサム間の盗賊全滅』
こっちも全滅だな。アイテムの蛇使いの笛は兵士が回収したとある。モンスターよけに使えるからな。
『聖女誘拐事件ポリントで解決』『グリート団の冒険者仲間割れ一人死亡』
誘拐事件の船と首謀者は、いまだに分かっていない。船は一旦外国に行ったかもな。ポルクの記事も載っている。キーラたちの名前は出ていない。さすがに今日の神託の神殿のことは記事に出ないだろうな。タクトの様子を見に来たおじさんも掲示板にやってきた。
「お前たちの記事ばかりで鼻が高いぞ。みんなに聞かれたよ」
「へへへ」
俺は照れた。
「タクトはいい魔法使いなのに、特待生になれないなんて残念だな」
「うん。俺もそう思う」
そのおかげでうちに来たけどね。
「まあ、学校もお金がないから仕方がないかもな」
「おーい、今食堂で聞いてきたけど、首都で爆破テロがあったらしい」
談話室に来た冒険者が、全員に向けて話した。そこにいたほとんどが驚いた。
「俺は仲間割れだと聞いたぞ」
「グリート団の事務所だろ。敵国のスパイがいたらしいぞ」
「何だって!」
俺は思わず声を出した。スパイならデナスのことか。南の国の服を着ていたのはカモフラージュかもしれないな。本当は東の国なのかも。でも、どうしてそうなったんだ? コズエがつぶやいた。
「キーラやユリスさんが心配だな」
「そうだな」
おじさんも俺たちが親しくなったので、コズエに同調した。
「詳しいことは明日の新聞を見れば分かるだろう」
「うん」
俺も返事をする。タクトが俺に手を振った。
「シュナ~、みんなこっちに来て」
どうやら終わったらしい。行ってみるとタクトの前の机には、お菓子や缶詰などの保存食がたくさん置いてあった。みんなが代金の代わりに、お礼として置いていったらしい。
「たくさんもらったよ。一人じゃ運べないから、みんなで分けよう!」
「お~、ありがとう」
おじさんも喜んだ。クレードたちも呼んでくる。まだ三人とも起きていた。
「欲しいものを持っていっていいよ」
「助かるよ。ありがとう」
クレードもタクトにお礼を言った。ジミーとコリンも両手に好きなお菓子や、干した果物を持ってご機嫌だった。
「私の分は二人に分けるね」
「うん」
「タクトのおかげだな」
みんなで食料を持って、ニコニコしながら部屋に戻った。




