36、フリオン団集結
俺はスナープ団の塔に詳しくないので、王女に聞いてみた。
「スナープ団の塔は、4年前に突然できたと言われていますよね」
「そうです。城からも見えました。あの時はみんな大騒ぎでした。突然できた塔を窓から見て、不吉なものを感じました……」
王女は顔をこわばらせた。塔は急にできたので、民衆の間では悪魔の城や血の塔とも呼ばれている。コズエがいまいちピンとこない感じで聞いた。
「1日で塔が建つんですか?」
「魔法石を使ったんじゃないかな」
タクトが答える。塔は白くて細長い。下が少し広くなっていて、十階ぐらいある。モーリアの冒険者協会と似た形だが、それよりも倍以上高い。
「規模が違うから、尋常じゃない魔力が要る。SS級のアイテムを使っても無理な気がするから、別の方法を使っているんじゃないかな」
「詳しいですね。私も調べてみたのですが、立場上近づくのが難しいので、調べるのに限界があります。そこで、みなさんにお願いがあります。スナープ団の塔の秘密を探ってほしいのです」
最終的にはスナープ団を壊滅させることが、フリオン団の目的でもある。危険だけどやらないといけないな……。
「……分かりました」
「ありがとうございます! では、これで。また後日、今日のお礼をしますね」
「はい!」
タクトが元気よく答えた。王女は席を立つと、ドアから出て行った。
「王女にまた会えるんだ!」
「そうだね……」(とんでもないことを頼まれたけど、タクトはいいのかな?)
タクトを見てコズエは微妙な笑みを浮かべた。
「俺たちも出よう」
三人で部屋を出ると、神官たちが待っていた。
「フリオン団のみなさん、この度のことは本当にありがとうございました」
「はい」
神官長がお礼を言って頭を下げた。後ろにいる二人もお辞儀をした。俺が返事をする。これでまた、フリオン団の名声が上がった。得意気な反面、名声が上がったことで難題を抱え込むことになったと思う……。おじさんに早く会わないと。神官たちが丁寧に門まで見送ってくれた。俺たちもお辞儀をして、敷地を出た。
「じゃあモーリアに行こう。夕方には着くよ。そこには、協会がやってる冒険者の宿があって、冒険者は格安で泊まれるんだ。おじさんはそこにいると思う。応接室や会議で使う部屋なんかも、タダで貸してくれるよ」
「へ~、すごい便利だね!」
コズエが感心して言うと、タクトも喜んで言った。
「初めてだから楽しみ!」
「タクトは泊まったことないんだ」
「うん! シュナと会った時は学校の寮から来たんだよ」
「そっか」
キンバリーで昼食を済ませてから出発した。夕方にはモーリアに入った。モーリアは木が至る所に植えてあって、緑が多い街だ。協会本部の横にある、冒険者の宿に着いた。宿は結構大きい。空いていれば一般の人も泊まれる。左右に分かれていて、左が冒険者用、右が一般の人用になっている。
本部の建物は、白壁で三階。上が平で下が広がっている、寸胴な建物だ。前の広場は、青や白、黄色なのどの小さいタイルで、曲線の美しい模様が地面に描かれている。コズエは本部のほうを見て言った。
「素敵なところだね」
「うん」
宿に入って先に部屋を取る。コズエが一人部屋、俺とタクトが二人部屋を取った。ロビーにある談話室を覗いてみる。広い場所にテーブルとソファがいくつか置いてあって、待合室にもなっていた。おじさんが座って、他の冒険者と話をしていた。俺に気が付いて手を上げ、こちらに歩いてきた。
「シュナ! 久しぶり」
「うん!」
おじさんと再会のハグをした。
((シュナが自然にハグしてる!))
(おじさんはシュナのお父さんだもんね)
(シュナはハグをいやがらないよな)
二人がいろいろ考えていそうだが、俺はおじさんと会えてうれしいから気にしない。おじさんは少し丸みを帯びた顔にがっしりした体格だ。ハグすると安心する。
「そちらが、コズエとタクトだね。話はクレードから聞いてるよ。あいつももう宿についている。今は子供たちと風呂に入っているよ」
「そうなんだ」
「初めまして、コズエです」(優しそうな人だな)
「タクトです。よろしくお願いします」(優しそうな人で良かった!)
「ああ、二人ともよろしくな。三人の活躍は、先にクレードの手紙で聞いてたよ。あのゼインのパーティまで、お前たちを絶賛しているらしいじゃないか。本当に驚いたぞ」
「えへへ」
褒められてうれしかった。俺はおじさんたちに、王女の話をしなくてはいけない。
「おじさんたちに大事な話がある」
「分かった。会議室を取ろう」
小会議室は十人入れる。中会議室は二十人まで。それ以上は小広間がある。俺たちは部屋に荷物を置きに行って、おじさんが取った小会議室に集まった。中には長いテーブルと両脇に五席ずつ椅子が置いてある。すでに、おじさんとクレード、ジミー、コリンが向こう側に座っていた。クレードが俺たちに声をかけた。
「やあ、久しぶり!」
『お久しぶりです』
「思ったより早かったね」
「そうだな。乗合馬車やキャラバンに乗せてもらったよ。女の子に長旅はきついからな。みんな街道沿いの町から来てたから、その流れでモーリアまで来れたよ」
なるほど。俺たちも座って、クレードと分かれてからのことを話した。おじさんが驚いて言った。
「聖女誘拐から、異世界人までとは。スナープ団の奴らだろうか?」
「俺もそう思う」
クレードもおじさんと同じ意見だった。それから今日の王女と神託の話もした。これにも二人とも驚いていた。ジミーとコリンは疲れて、お互いに寄りかかって寝ていた。
「王女の依頼を了承して、スナープ団の塔の秘密を探ることにしたんだ。二人にも協力してほしい」
「う~ん、分かった。聞いた話では、あそこは商会として使われているから出入りは自由だし、警備も厳しくないらしい」
「ということは、そうしなくてもいい何かがあるんだな」
クレードの情報に、おじさんが右手を顎に当てて考えながら言った。俺もその意見に賛成だった。
「アイテムがいくつかあるかもしれないな」
「そうなるとSやSSアイテムは惜しかったな」
クレードがそう言いながら、頭の後ろで両手を組んで、背もたれにもたれた。俺はうれしそうにしていたクライムを思い出して、ちょっと笑った。
「今はテンバー団にある」
「俺も、持ってないことに賛成だ。敵だったとはいえ、子供が亡くなったんだ」
(やっぱりおじさんは優しい人ね)
そう言ったおじさんを、コズエは穏やかに見ていた。
「そうだな」
クレードも下を向いて同意した。たぶん自分の息子のことを思い出したんだろう……。おじさんが話を締めくくった。
「じゃあ、明日は首都に向かって塔の情報を集めよう。話はここまでにして、みんなで夕食を食べよう。ここの食堂はバイキングなんだ。魚に肉に、デザートまであるぞ」
「デザートも!」
「わあ、楽しみだ」
コズエとタクトが喜んだ。
「ここの宿泊代は俺が持つから心配するな」
「ありがとうございます」
おじさんが言うと、クレードがお礼を言った。
「お前は違うぞ」
「え?」
「冗談だ」
「もう! いつもおごってくれてるじゃないですか」
「そうだな。ワハハ」
クレードは寝ている二人を起こして、おじさんの後から出て行った。コズエが俺に言った。
「おじさん、いい人ね」
「うん。——おじさんは初めに言ってくれたんだ。俺を抱きしめて、
『お前は村の子供だ。みんなのためにも、俺が立派な大人に育ててやる』
って。……俺はすごく安心した」
俺はその時、おじさんの温かな体温を感じながら静かに涙を流したのを思い出す。村の子供はもう俺しかいない。おじさんは俺を安心させるために言ってくれた。おじさんには今もすごく感謝している。
俺を見て、コズエとタクトも優しい表情を浮かべていた。




