33、テンバー団を訪問
翌朝、出発した。マーレイには半日ちょっとで着く。手前の宿場町で昼食をとってまた出発する。マーレイは岩山に囲まれた、北側の国境近くにある貿易都市だ。街が見えてきて、コズエが感嘆した。
「小さいけど賑やかね!」
「商人がたくさんいるからね。テンバー団もここに拠点があるんだ」
「え! じゃあフレイアちゃんに会えるかな」
「……そうね」
コズエがまた半目でタクトを見ていた。神殿に着くと、みんなで中に入った。神官長や神殿の人たちが、ニンスの帰りを泣いて喜んでいた。
「もう会えないかと思ったよ」
「ありがとうございます」(戻って来て良かった)
ユナとマリーも滞在を許可された。
「聖女が三人になって大歓迎だよ。でもまた狙われるかもしれないから、あまり言わないで活動してもらうよ」
「それがいいと思います」
俺が神官長の言葉に同意した。神殿に滞在していた親方とヤンも来た。
「四人を救出するなんてすごいな!」
「えへへ、今回はみんなの協力があったから。こちらは、グリート団のキーラとヘルナン。グループとは別行動していて、たまたま会ったんだ」
「よろしく」
キーラが微笑んで手を振る。ヤンの印象は悪いままなので警戒していたが、挨拶した。
「バスタの復興グループのヤンだ。こっちがリーダーのバルジフさん」
「みなさんありがとう」
親方はお礼を言うと、さっそく目を診てもらった。ユリスが手をかざすと、強く光った。光が消えてから、親方は静かに目を開けた。
「ああ、見えます。頭痛も取れた! 聖女様ありがとうございます! 感謝します」
親方はユリスに頭を下げた。ヤンとダッジもお礼を言う。ユリスは微笑んだ。良かった。これで任務完了だ。
親方たちともここでお別れだ。神殿の玄関に出る。
「シュナ、コズエちゃん、タクト。みんな本当にありがとう」
「いえ、こちらこそありがとうございました。親方、ダッジさん、ヤンさん、みなさんお元気で」
「ありがとうございました」
「また会いましょう!」
みんなで挨拶して、親方たちの馬車を見送った。
「じゃあ、あたしたちも行くわ」
「お世話になりました」
キーラとユリスが挨拶して、ヘルナンが手を上げる。
「またね。ユリスちゃん!」
「気を付けて!」
グリート団の三人とも手を振って別れた。遠ざかってからユナが指に顎を乗せて言った。
「あの二人、いい感じね。もう一人がいなくなったんでしょ」
「私もそう思った!」
コズエも同意した。俺は違う意見だ。
「そうか? あの二人はあのまんまだと思う」
「そうなの?」
「うん」
コズエのテンションが落ちた。そんなものだと思う。
「じゃあ、俺たちも行くか」
「うん」
「じゃあ、ユナさんもお元気で」
「うん。コズエ、向こうに戻っても元気で頑張るんだよ」
ユナはコズエを抱きしめた。カズヤが帰ったから、コズエもいつ帰ってもおかしくない。これが最後になるかもしれない。コズエは涙ぐんだ。
「うん。ありがとう!」
ユナも涙ぐんだ。二人は離れると、指で涙を拭いた。笑顔で手を振る。
「元気で!」
「ユナ、俺たちはまた会おう」
「うん!」
「ありがとう!」
ニンスとマリーも手を振った。俺たちも歩きながら手を振った。
「聖女たちもかわいかったね。たくさん友達になれて良かった」
「あはは……、良かったね。タクトは女の子が好きだよね」
「うん。コズエのことも好きだよ」
「う~ん、ありがと」
コズエは考えてからお礼を言った。
「シュナのことも好きだから」
「あ、どうも」
(人が好きなのかな?)
俺もとりあえず答えた。コズエは微妙な微笑みを浮かべていた。俺も同じだ。タクトとの距離感がいまいち分からない……。コズエがいなくなったらどうなるんだろ。考えても仕方ないか。
「郵便局に寄っていくよ。みんなの場所が分かるかもしれない」
「どうやって分かるの?」
「団の名前で私書箱を借りてるんだ。そこに自分宛ての手紙が転送されてくるんだよ」
「魔法すごっ!」
コズエが驚いた。名前で借りるには条件がある。団体の名前は証明できるものがなければ使えない。名前が被った時は、後者が個別番号を付けることになる。
郵便局に行って受付で、団の名前と俺の名前を伝え、冒険者証を見せた。局員の人が手紙を持ってきてくれた。
『今からモーリアに行く予定だ。ハシブ』
と手紙に書かれていた。封筒は「メンバー」宛てになっていて、読んだメンバーの署名が横に書かれている。クレードも読んでいた。おじさんは今一人で行動している。書いてある東の町と日付から、もう着いている頃だろう。
「おじさんがモーリアに行くから会えるかもしれない。二人を紹介したいから俺たちも行こう」
「うん!」
「話に聞いてたから、会えるの楽しみ」
タクトもコズエも会えるのを喜んだから良かった! おじさんもきっと、クレードから二人のことを聞いたに違いない。
「その前に寄り道したいけどいいかな」
「いいよ」
俺の提案にコズエが答えた。封筒の表に署名した。新しい紙を出して今日の日付と同行者の名前、
『俺たちは、神託の神殿に寄ってからモーリアに向かう』
と書いて同じ封筒に入れてまた封をした。切手代を払って私書箱に戻す。日付が過ぎれば誰かが回収する。
「街を出る前に、フレイアちゃんに会いに行こうよ!」
「あ、すっかり忘れてた」
「そうだな。テンバー団の商会を見に行くか」
「やった!」
タクトはおじさんのときより大喜びだった……。街の人に聞くとすぐ近くだった。
『誰か! 助けて!』
「人の声がする……」
「えっ? 幽霊?」
タクトがコズエの肩にしがみついて怯える。コズエも緊張する。
「違う。生きている人だ」
「そうなんだ」(シュナは不思議だな)
タクトは安心したようだ。テンバー団の建物の前に荷馬車が着いていた。白い帽子に前合わせの上着を着た二人が、担架に布をかぶせたものを運び入れていた。北の国の衣装だな。
「なんだろうあれは……」
人ぐらいの大きさだ。声が聞こえなくなった。もしかしてあれか?
「とりあえず、テンバー団に入ろう」
「うん」
商会なので出入り自由だ。カウンターがあったのでそこで待った。左側には低い仕切りがあってその向こうにソファが置いてある。
「こんにちは」
「はい、どのような御用件ですか?」
廊下から、金髪ショートカットのくせっけで、30代前半ぐらいの耳の尖った男性が出てきた。エルフっぽいな。丸眼鏡をかけて茶色のベストを着ている。
「フリオン団のシュナです。こっちはタクトとコズエです。フレイアさんと知り合いなんですが、マーレイまで寄ったので来ました」
「そうですか! お待ちください」
男性は廊下に戻るとしばらくして、眼鏡をかけた若い男性が歩いてきた。
「やあ! フリオン団の諸君。私はここのリーダーのクライムだ」
『えっ!』
まさかリーダーが対応してくれるとは思わなかったので、みんな驚いた。
「その節は、フレイアが大変お世話になったね! 本当にありがとう。それにアイテムも譲ってくれて、なんて太っ腹なんだ! 感心するよ」
「あ、いえ。はじめまして」
『こんにちは』
勢いに押される。二人もおどおどと挨拶する。よく見ると、ネックレスと腕輪をしていた。
「もちろん、私が着けてるよ! これでも結構狙われているからね。残念だけど指輪は私がつけても仕方がないから。でも家宝にしているよ!」
危険だから人には使わせないということだな。きっと。
「フレイアは今手が離せないから。私が来たよ」
「……それなら、貴重なコレクションがあると思うので、見学できますか?」
「……ああ、もちろんいいよ」
クライムは少し考えてから、了承してくれた。クライムについて行きながら、コズエがこっそり聞く。
「どういうこと?」
「さっきの声のことだよ」
「それと関係があるのね」
「うん」
二階の一室に案内された。
「この部屋さ」
「おお~」
コズエが声を出す。いろんなものが置いてあった。武器に壺、不思議な置き物、そして、あの担架が大きな木の机に置かれていた。さっきの男性がクライムを呼びに来た。
「ちょっとよろしいですか?」
「ああ。じゃあ、ゆっくり鑑賞してくれたまえ」
クライムは俺たちにそう言うと、あっさり出て行った。コズエが聞いた。
「大丈夫なのかな。お宝でしょ?」
「信用してくれてるんだよ」
タクトは前向きに答えた。何でもいいや。俺は担架の布をめくった。




