32、裏切者の名
コズエとユナは再会を喜んだ。別れてから1週間しか経っていなかった。
「また会えるなんてね!」
「本当! ユナさん、またきれいになったね」
「そう?」
ユナは見た目が20代後半ぐらいになっていた。俺も同意した。
「本当だ」
「聖女は20代ぐらいで力がなくなるらしいけど、なんでユナは使えるのかな?」
「私がサボってたとでも言うの?」
ユナがタクトに言った。それを聞いてニンスとマリーが笑う。タクトはたじたじだった。
「そんなこと言ってないよ」
「まあ、確かにあいつらだけに力を使ってたから、温存されていたかもね」
「やっぱり」
ユナはタクトを睨む。ニンスは困ったように言う。
「聖女というだけで誘拐されるなんて、どうしたらいいんでしょう」
「戻っても心配です」
二人は俺たちと同じ年で、まだ子供だ。ユナもぽつりと言った。
「本当にそうね」
「しばらくは、用心した方がいいな」
俺が言うと、ユナが思い出したことを話した。
「そういえば、あいつら、バスタにいる異世界人の男性を連れて行くつもりだったの。異世界人も珍しいし、幸運を呼び込むからとか。それで町に寄ったけどいなかったって」
「何だって!?」
俺は驚いて大きな声を出した。コズエとタクトも驚いた。
「その異世界人はカズヤだ。矢が当たって、俺たちの目の前で元の世界に戻ったんだ。そいつらが行ったのは、その後だな」
「そうだったの!」
「そうなると、コズエをアイサムの神殿に預けるのはやめたほうがいいな」
「そうだね!」
タクトも強く同意した。俺はコズエに言う。
「俺たちとこのまま旅を続けよう」
「うん、分かった。またよろしく」
「うん。よろしく」
「了解」
タクトも額に手を当てて返事をした。またコズエと旅ができて正直うれしかった。
「俺たちはその後、親方の毒を取ってもらうため、キャンプ地までユリスに会いに行ったんだ」
ユリスは下を向いて黙っていた。ユナが呆れて言った。
「この子ずっと元気がなくて、こんな感じなのよ」
「私、自分から外に出たのよ」
「それ、イグナシオも変に思ってた」
ユリスがぽつりと言ったことを、俺も付け足した。
「あの中に裏切り者がいたの」
『!』
黙って聞いていた、ヘルナンとキーラが驚いた。
「誰だい、そいつは? リーダーも知ってるのかい?」
「私は捕まった時に分かったの。だからイグナシオは知らないわ」
「まずいな」
ヘルナンもキーラと見合わせて言った。ユリスが自分のことを話しだした。
「私も元は神殿にいたのだけど、そこが盗賊に襲われた後にイグナシオたちが来たの。その時に、
『ここにいてもまた盗賊が来るから、俺たちと来ないか?』
って誘われたの。私はイグナシオの誘いに惹かれて付いていった。でもすぐに、イグナシオは途中で会ったレイナを恋人にした」
「あいつは、いつも女を連れているよ」
キーラが呆れて言った。ユリスはキーラに聞いた。
「キーラもイグナシオとはどうだったの?」
「あたしも最初は惹かれたから付いていったのさ。でも、あいつが女好きだと分かったから、あたしにとってはただのリーダーさ」
「そうだったのね。私はなんとなく気持ちがモヤモヤしたままだった。そこに、デナスが私に言ったの
『あいつを試してみなよ。あんたがいなくなって捜しに来なかったら、もうあきらめたほうがいいよ』
って」
「デナスか! 胡散臭い奴だと思った」
キーラが大声で言った。少しは、いつもの調子が戻ったようだな。コズエが聞く。
「どんな人?」
「外国から来た、ターバンを巻いて白くて長い服を着た男だ」
ヘルナンが答えた。その衣装だと同盟国の南の国だな。ユリスが続きを話す。
「自分でも子供っぽいことをしたと思う。キャンプ地の外に出たらすぐに捕まったの。当たり前だけど、イグナシオは安全を取った」
「そうだったのね」(好きな人に裏切られた気持ちだったのか……)
(ユリスさんはイグナシオが好きだったのね。どこがいいのかしら)
ユナが納得した顔で言って、コズエは腕を組み、目をつむって考えていた。
俺たちがいなくても、イグナシオはユリスを追いかけなかっただろう。結局迎えに来たのは俺たちだったから、そりゃあ元気がなくなるよな……。ユリスがふとこちらに聞いてきた。
「誘拐犯が埋めた地雷はどうなったの?」
「地雷!?」
キーラとヘルナンが驚いた。俺が答えた。
「それは、タクトが解除した」
「そうなのね」
「やるじゃん、タクト。フリオン団よりうちに来ないかい?」
キーラがタクトにウィンクした。グリート団にも魔法使いはいないからな。タクトは褒められてうれしそうだったけど、俺にしがみついてきっぱりと断った。
「俺、シュナといたいんだ! 大人はこりごりだ」
「あらら」
「私はグリート団にきて1年だったけど、デナスは2年ぐらいでしょ」
「そうだね。地雷を扱ってるなら、あいつもしかしたら戦争商人か、敵国のスパイかも」
『!』
(怖い!)
コズエが怯えていた。なるほど、グリート団に入ってグロット王国を見ているのか。今回のことでスナープ団ともつながっていそうだな。
「ユリス、盗賊の人数を教えてくれて助かったよ。一応グリート団はマーレイに行ってるけど、俺たちが着く頃には出発しているかもしれない。親方がマーレイにいるから、治してほしいんだけど」
「いいわよ。お礼に治します。まだお礼を言ってなかった。助けてくれてありがとう」
「ありがとう」
「私も感謝します」
「みなさんありがとう! 私が治してもいいけどね」
ニンスとマリー、最後にユナもお礼を言った。ユリスの目は元気を取り戻していた。話してスッキリしたのだろう。
「私はグリート団に戻るわ」
「そうか」
「マーレイにいなかったら、私たちが送っていくよ。ご褒美をもらわないとね」
キーラがヘルナンを見て言った。ニンスはマーレイに行くからいいとして、
「分かった。ユナとマリーはどうする?」
「私もマーレイに残るわ。それからまた好きなところに行く。あんたたちにはついて行けないからね。この子たち歩くの早いのよ」
ユナがマリーに言った。ユナらしいな。マリーもユナに習った。
「私もマーレイに残ります。ロスリンは小さな町なので、戻るのは不安です」
「分かった」
コズエがタクトに聞いた。
「そういえばタクト。ヘルナンさんの鞘が壊れているけど直せる?」
「見せて」
ヘルナンが剣を渡す。鞘は割れていた。キーラがヘルナンに聞く。
「なんでお前はさん付けなんだい?」
「それは、俺と同じで同性同士は呼び捨てしやすいからじゃないですか?」(キーラさんが雑に扱ったからですよ、とは言えない……)
「そうかい」
ヘルナンが焦って答えるが、キーラは納得した。タクトが鞘を見て言った。
「これなら、木を取ってこれば直せるよ。ない部分を同じ物で補うんだ」
「それは助かる」
馬車を途中で止めてもらい、ヘルナンが枝を取ってきた。タクトが鞘の上に枝を置いて、両手で魔法をかけると、黄緑色の魔法陣が出て鞘と枝が光に包まれた。光が消えると鞘はきれいに修復されていた。傷の部分は色が違う。
「すごいな。ありがとう!」
ヘルナンがお礼を言った。タクトは照れてニッコリした。
その後コズエはユナに、別れた後のグロット・オーの地図の話をした。エイリアスの花についてはみんな興味津々で、感嘆していた。ユナがタクトにお願いした。
「ねえタクト、私もお礼に光魔法の玉を作るから、魔法玉の元を作ってくれる?」
「いいよ」
「わあ、ありがとう!」
コズエも喜んでいた。光魔法の玉ならモンスターに効きそうだな。モンスターは瘴気でできているから光魔法で浄化できる。ジャインアトベアーにも使えるかも。ふむ。
「私も作ります」
「私も」
ニンスとマリーも言った。ユナはユリスにも聞いてみる。
「じゃあみんなで作ろうよ。ユリスはどうする?」
「私も作ります」
「じゃあ四個作ってね」
「分かった」
宿場町に着いた。今度は食堂に間に合った。十人の大所帯で食事をする。二人部屋が五個空いていて良かった。キーラとユリス、コズエとユナ、ニンスとマリー、ダッジとヘルナン、俺とタクトでいい感じにペアになった。コズエとユナはまた一緒になって盛り上がっていた。タクトが作った魔法玉に聖女たちが光魔法を付与して、コズエに渡していた。




