30、突然の再会
「行き先は、港町のポリントだな?」
「そうです」
「どうしてそう思うんだ?」
「ポリントまでは半日弱です。人買いが素早く人を運ぶのに船を使うからです」
「そうか」
ダッジの問いに答えた。俺は海を思い浮かべて身震いする。コズエが心配そうに聞いた。
「シュナ、大丈夫?」
「大丈夫。フリオン村も海には近かったんだ。ポリントからはもう少し北にある。何度も帰ってるから平気さ」
「うん」
(フリオン村は、人が消えた村だったな……)「すまない」
「いえ。必要な事ですから」
ダッジが気遣って謝った。復興グループの人たちはいい人ばかりだな。
宿場町まで辿り着き、宿屋に泊まることにした。食事はもう終わっていたので、部屋で取ることにする。翌朝は、宿の食堂が始まってから出かけることにした。その時間でも午前中にはポリントに着く。
コズエを一人で泊まらせるのは不安だったから、俺と同室にしようとしたら、
「なんで? 俺もコズエと一緒がいい」
「狼の川渡りクイズと同じで、お前とコズエを一緒にするのは不安だ」
俺は目を眇めて言う。
「知ってる。キツネバージョンがあるよね」
「コズエも知ってるんだ。条件に当てはめれば何でもいいんだよな」
「何それ?」
タクトが聞いてきた。もう夜も遅いからクイズはどうでもいい。ダッジが提案する。
「お前ら三人で泊まったらどうだ?」
「そうしよう!」
「そうだな、仕方ない」
ダッジが一番疲れているだろうから、一人にしたほうがいいかも。俺たちは三人で二人部屋を使うことにした。ダッジの部屋から毛布だけを持ってくる。俺とタクトが同じベッドに寝ることになった。監視するにはちょうどいいか……。コズエは申し訳なさそうに言った。
「ごめんね」
「狭いけど楽しいよ」
「お前のせいでな」
俺たちは疲れていたのですぐ眠った。
翌朝、食堂で朝食を取った。ダッジが聞いてきた。
「よく眠れたか?」
「うん」
「タクトは思ったより寝相がいい」
「良かった」
「お前ら本当に仲がいいな」
「うん。旅がとても楽しいよ。シュナと会えて本当に良かった!」
タクトは自分が捕まっていたパーティのことをダッジに話した。
「そうか、とんでもない奴がいたんだな!」
そう言ってもらえてタクトはほっとしていた。朝食を済ませると出発した。
2時間ほどでポリントの町に着いた。俺たちは荷台から降りた。
「ダッジさんは馬車にいてください。俺たちで港を調べてきます」
「分かった」
埠頭の方に歩いて行く。コズエが聞いてくる。
「どうやって調べるの?」
「どんな荷を運ぶかとか、船の様子を外から見るんだ」
「へえ~、すごい」
タクトが感心する。すると、声がした。
「あ~ら、シュナ坊じゃないの? 子供だけでお使いかい?」
この声はキーラ。嫌な奴に会ったな。まてよ……。コズエが驚いて名前を言う。
「キーラ!」
振り返ると、キーラとヘルナン、ポルクがいた。キーラは悪びれもせずに言う。
「久しぶりだね、コズエ。キーラさんだろ? あら、また新しい子がいるじゃないか。フリオン団は子供しかいないのかい?」
「ああ、前言ってたグリート団の人?」
タクトが、思い当たって聞いた。
「そうだよ。かわいい子だね」
キーラが近づいてタクトの顎を指で上げる。タクトはキーラの胸の谷間を見て赤くなった。
「こいつは、魔法使いのタクトで新しいメンバーだ。ちょうどいいところで会ったな。借りを返してもらおう」
「あーやだやだ。擦れた子だね」
キーラはタクトから指を話して横を向いた。
「お前たちのところのユリスが誘拐された。グリート団のせいで毒の攻撃を受けた人がいて、治してほしいから探してるんだ」
ユリスは見捨てられたが、こいつらのところには情報は来てないだろう。団のせいにして、ちょっと誇張しておいた。
「何だって⁉ ……ところで、ユリスって誰だい?」
キーラは肘を曲げて両手を上げ、ヘルナンとポルクを見た。ヘルナンは頭をかいて答える。ポルクは無表情。
「イグナシオが拾った聖女だよ」
「あ~、居たね。辛気臭い顔をしてリーダーに引っ付いている女が」
「助け出すとご褒美がもらえるかもしれないぞ。協力してくれ」
「それは悪くないかも。経費を上乗せしてもらおうっと」
俺の進言に、キーラはご機嫌になって了承した。
「どうするんだい?」
「探索石で捜してくれ」
「そうだね」
キーラが探索石を出すと、赤い点が付いた。
「出たね……。あっちの倉庫街にいるようだ」
キーラはユリスが登録してあったのが意外で少し驚いていた。捜す手間が省けて助かった! 俺たちは様子を見ながら倉庫が並ぶところまで行った。隠れて見ると見張りが一人立っている。怪しい。仲間が来て話をしていた。
「今日、出向だ」
「分かった」
おそらく暗くなってから連れ出すだろう。俺はキーラに聞いた。
「中に何人いる?」
「あの中は、四人だ」
「四人!? 他にもいるのか。俺が中の様子を見てくるから、一旦ここを離れよう」
離れると魔法袋から水差しとお椀を出して、井戸で水を汲んでくる。マントのフードをかぶり、俺だけその倉庫に近づいた。見張りの男が俺に注意を向ける。俺はおとなしい、細い声で言った。
「水を持って行くように頼まれました」
「そうか、入れ」
男はあっさりドアを開けた。俺が子供だから油断したな。中は上に通気用の窓があるだけなので暗い。
「水を持ってきました」
「良かった! ありがとう」
聞き覚えのある声がした。受け取りに来たのはユナさんだった。小声で言う。
「ユナさん!」
「シュナ!? 良かった! 助けに来てくれたのね」
「うん。話は後だ。全部で四人いるんだよね?」
「そうよ」
「分かった。また来る」
俺は水差しを渡すと、すぐに出た。そのままみんなのもとに戻る。
「ユナさんがいた」
『え!?』
コズエとタクトが驚いた。誘拐犯は聖女を集めたようだ。それなら、マーレイの聖女も有名だったから、いるかもしれない。全員に言う。
「今日の夜に船は出るから、昼過ぎに助け出す。警備署にも連絡してくる」
「分かったよ」
キーラが返事をした。手順を説明する。俺とタクトで連れ出して、キーラたちとコズエが馬車まで四人を連れて行く。その後から俺たちがついて行く。馬車を通路から出た道に停めておく。兵士は、誘拐犯に気づかれないように、後から来てもらうことにした。
俺たちはキーラと別れて警備署に行った。ここは港町なので警備署があり、兵士が常駐している。フリオン団は人身売買の摘発で国に協力しているから、名前が知られていることが多い。ここでもそうだった。
「フリオン団だね。知ってるよ」
「グリート団の聖女のユリスが誘拐されたので、代わりに探しています。どこにいるか分かったので、助け出すつもりです。この時間に倉庫まで来てもらえないでしょうか」
「分かった。行こう」
「了解した」
待機している二人が協力してくれることになった。俺たちは三人で顔を見合わせて微笑む。ダッジと合流して昼食を取りながら、作戦を伝えた。昼食時が済んで、また港が賑やかになったら実行だ。




